7.光の精霊との最終決戦④
大きな痛みはなくなり、
細かい針でチクチク刺されるような感覚だけになったので、
気持ちが楽になったダイは大きく息を吐いた時、
「うっ……。許さない……、許さない……」
ダイの後ろの方から女性の呻き声が聞こえると共に、
ダイが背中で受けている攻撃が変わったのを感じた。
これまでは光の精霊による光の魔力を使った攻撃だったのに対し、
炎の力の入り混じった力になっていた。
チラッと後ろを振り向いて状況を確認すると、
そこには虚ろな目をしたレイが両手を前に付きだし、
魔法を放っている姿があった。
「どれだけ心に隙のある奴がいるんだよ……。
いつも俺が憎悪の対象だし……、
何か悪いこととかしたかなぁ??」
レイの姿を見たダイがボソッと呟いた。
それを聞いたユイが心配そうな顔をして尋ねた。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫、大丈夫。
この氷の衣は火の魔法に対しては耐性が高いみたいだから、
さっきの光の魔法の方がきつかったよ」
ダイは明るい声で答えたが、ユイは申し訳なさそうな顔をして、
「ごめんなさい……」
と呟いた。自分が考えなしに言った一言で
傷ついた様子のユイをみたダイはバツの悪い表情をして言った。
「悪い……、そういうつもりでいった訳じゃないんだ。
本当に気にすることないから。
それより、絶対にこの魔法に触れるなよ!
俺は耐性があるみたいだからいいけど、二人は多分……」
そんなやり取りをしている最中に突然、ダイは自分の背中に痛みがなくなった事に気がついた。
「あれ?」
そう呟いて、後ろを振り向くとそこには、
両手を大きく広げて仁王立ちをするケイスケの姿があった。
その体勢のまま、摺り足でじわじわとレイに近づきながら叫んだ。
「レイ!もうやめよう、こんなことをしても何も変わらない。
光の精霊に良いように利用されているだけなんだぞ!」
すると、レイの表情は変わらず無表情なままだが左目から一筋の涙が零れた。
そしてボソボソと呟いた。
「許さない……、助けて……、倒す……、嫌だ……」
負の感情とそれに抗う感情が交互に現れ、
心がぐちゃぐちゃになっているようだった。
ケイスケは全身で魔力を受けながらも、
徐々に近づき、ガバッと覆い被さって、
「もう大丈夫だよ。
レイ、これからは君の辛さも悲しさも全て引っくるめて、俺が守るから。
これ以上、自分を苦しめなくていいんだよ」
と言った。すると、これまで全く生気が感じられなかった
レイの表情がぐちゃぐちゃに崩れ、泣きじゃくりだした。
「ごめんなさい。やっぱり心のどこかでダイの事が引っ掛かっていたの……。
彼に受け入れて貰えないのがわかって、寂しい気持ちで一杯になったの…。
その内にいつの間にか許せない気持ちに支配されていて……」
「わかっている。もう、いいんだ。
君にはずっと俺がついているから、もう寂しい気持ちに成らないで欲しい。
俺が君の全てを受け入れるから……」
ケイスケはレイの細い身体を力強く抱き締めながら言った。
それを聞いたレイは目に涙を浮かべ、
何も言わずに力を抜いてケイスケに身を任せた。
すると、レイの頭から光の塊がユイの時と同様に飛び出した。
それを見たダイは光の精霊による次の攻撃に
備えて身構えようと立ち上がろうとした。
しかし、これまでの光の精霊からの攻撃を一人で受けてきた影響で
身体に全く力が入らず、その場に崩れ落ちてしまった。
そして、倒れかかるダイをシズクが肩で受け止めた。
「とう……、ダイさん!大丈夫?」
シズクがダイを支えたまま、心配そうに尋ねた。
ダイはシズクにもたれ掛かった状態で、
「シズク、お前の剣を出せ」
そう言うと、シズクから身体を離してその場に座り込んだ。
「いきなり、何?」
シズクは心配そうな納得のいかない表情で、剣を取り出しながら言った。
ダイは黙ったまま、自分の剣を取り出した。
「ダイさん!一体、どうしたの?」
業を煮やしたシズクは自らの剣で身体を支えて座っている
ダイにイライラしながら尋ねた。対照的にダイは静かに、
「いいから、黙って剣をこっちに出せ……」
そう言うと、自分の剣を元々の魔法具である杖と剣に分けた。
さらにシズクの剣を奪い取り、自分の杖と重合わせた。
すると、杖が剣の中に吸い込まれ、
そこには黒い龍を型どった鞘の剣が完成した。
それをシズクに差し出し、
「俺が出来ることはここまでみたいだ。
ここからはシズク、お前が光の精霊を止めるんだ。
預かっていたお前の魔力を返しておいた……」
自分の体力に限界を感じたダイはそこまで言うと、そのまま横になった。
そして、シズクの手を取って話をさらに続けた。
「くれぐれも光の精霊を倒そうと思うなよ。
お前の力は守る時に強く発揮される。
ユイちゃんや俺を含めた皆とシズク、お前自信を守る事だけを考えるんだ」
それだけを伝えると、握っていた手を離して目を閉じた。
「ダイさん!ダイさん!」
遠のく意識の中で、ジュリアが呼ぶ声と身体全体が
温かい何かに包まれるのを感じた。
すると、身体の痛みは徐々に薄れ、
精神はどんどん意識の深い所に向かって行った。
『そう言えば、ジュリアさんの事を守ってあげられなかった……』
ふと、そう考えたのを最後にダイの意識は途切れた。
次話で最後です。




