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6.闇の精霊に導かれし者⑤

その時、バーンがおもむろに口を開いた。

「シズクも目を覚ましたし、そろそろ話を続けていいか?」

3人はハッとバーンの方を見て、頷いた。

「シズク、おそらく実感はないと思いますが、

 先ほどこの剣の魔力の一部が貴方の中に取り込まれた。

 後は、この剣が貴方を所有者として認めるかどうか……」

バーンはそう言いながら、チラッと『テネブラスの剣』を見た。

すると、その魔剣が黒髪の美しい男性の姿へと変貌を遂げた。

男性はスッとシズクの前に立ち、問いかけた。

「我が名は『テネブラス』、闇の精霊バーンにより導かれし者よ、汝に問おう。

 汝は我が力を欲するか?」

「はい!」

シズクは臆することなく即答した。さらに男は続けた。

「汝は何の為に力を欲する?」

「僕は僕に関わる全てを守る力が欲しい」

シズクの答えに対して、男は軽く頷き手を差し伸べた。

シズクがそっとその手を取ると男は、少し表情を崩して、

「我が力は守りの力、これまでに我が力を欲したモノは皆、

 攻めるための力を欲していた。

 我はそういうモノ達を拒否するあまり、邪な思いが強くなってしまったのだ。

 しかし、シズクは我がパートナーとして汝が守るべきモノを守るために

 我が力を使ってほしい」

そう言うとスーッと姿が見えなくなり、

剣だけがシズクの目の前に浮かびあがっていた。

頭にテネブラスの声が響く、

「シズクよ、我を手に取るのだ」

シズクは恐る恐る、『テネブラスの剣』に手を伸ばした。

柄にシズクの手が触れようとした瞬間、剣とシズクを中心に紫の光が放たれた。

ダイとジュリアはあまりの光の強さに目を背けた。

しばらくして光が収まりを見せ、

シズクとテネブラスの剣の姿が浮かび上がってきた。

そこには、手の先から髪の毛まで紫色に染まったシズクの姿があった。

それを見た瞬間、ジュリアはあまりの光景に言葉を失い、

ダイの頭にバーンの声が響いた。

『まずい!ダイ、お前の魔法具をテネブラスの剣先に重ねてくれ!

 早く!シズクの身体が闇の魔力に耐えきれないぞ!』

その声を聞いたダイは慌てて、

自分の剣を取り出しシズクの持つ剣先に自らの剣先を重ねた。

すると、接した部分を通して、ダイの剣先に強力な魔力が流れ込み、

紫の光が剣全体を包み込んだ。

その様子を見て、一抹の不安を感じたダイはヴォーレに呼びかけた。

『ヴォーレ!大丈夫か?』

『何とかな……。この剣の許容量ギリギリだったが……』

ヴォーレの無事を確認して、安心したダイはさらに問いかけた。

『この闇の魔力は何とか制御出来そうか?』

『何とか大丈夫だ!我が魔力と闇の魔力は相性が良さそうだ。

 それよりあの小僧の方が問題だろう?』

なんとか闇の魔力を受けた剣を鞘に収め、シズクの方を向いた所で、

バーンがダイに話しかけてきた。

「やはり今のシズクでは全ての魔力を受け入れる事は出来なかったか……。

 取りあえず、シズクが全ての魔力を受け入れる事が出来るまで、

 預かっておいてくれ!」

それだけ言うと、バーンは消え、周りの景色は元の場所に戻っていた。

「ジュリアさん、シズクは大丈夫か?」

茫然としていたジュリアはダイの声でハッと気を取り戻して、

一目散にシズクの元に駆け寄った。

ジュリアに抱きかかえられたシズクは気を失っているものの、

顔色は元の状態に戻っているようだった。

それを見たジュリアとダイはホッと肩を撫でおろした。

ダイはその場に崩れるように座り込み、

無言でシズクが目を覚ますのを待った。


無音の時が永遠に続くように過ぎていく中、

「ダイさん、ジュリアさん、お待たせ!」

シズクがぱっと目を開き、

心配そうな表情で覗きこんでいるジュリアと

遠目から見守っているダイに声をかけた。

「シズク君?大丈夫?身体とか変わった所はない?」

ジュリアが今にも泣きそうな表情でシズクを強く抱きしめながら言った。

「身体は大丈夫だよ、心配かけたみたいでごめんなさい。

 ずっと、心の中でテネブラスと話をしていたんだ。

 まぁ、何とか一緒にやって行けそうかな?

 それより、ダイさんは大丈夫?

 何か、テネブラスの魔力を一部、預かって貰っているみたいだけど……」

シズクは申し訳なさそうな表情を浮かべて言った。

それを聞いたダイは、無表情で立ちあがりシズクに近付いた。

そして、シズクの頭をくしゃくしゃに掻きまわしながら、

「俺の方も問題ない!お前がそんな心配をする必要はないよ。

 それにしても、本当に何もなくてよかった……」

そう言って、シズクの事をギュッと抱きしめ、さらに話を続けた。

「これからは剣と魔力の使い方を俺とジュリアさんで

 みっちり教えていくから覚悟しとけよ。

 とっとと、お前の魔力を引き取って貰わないと俺としても迷惑だし……」

「……お手柔らかに頼みます。」

ダイの軽い脅しに対して、シズクは委縮し深々と頭を下げた。

それをみたジュリアが軽くシズクの肩を揉みながら明るい口調で、

「そんなに堅くならなくても大丈夫だよ。

 彼は口ではあんな風に言っているけど一番、

 君の事を心配していたんだから……。

 根は凄く温かい人だから安心して。」

チラッとダイの方を見て言った。

ダイはふうっとため息をついて、

「まぁ、何とでも言ってくれ。

 そろそろ、剣を持ってオスカーナ王の所に戻るぞ。」

と言いながら、扉の方に足を進め始めた。

3人はオスカーナの元に戻り、『テネブラスの剣』を手に入れた事、

シズクと共に光の国へ向かう事を伝えた。

それを聞いたオスカーナはあまりいい顔をしなかったが、

ダイが光の国を止める方法が他にない旨の説明をすると

渋々、了承した。

その後、オスカーナから光の鎧を受け取り、ブラーグ城を後にした。

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