6.闇の精霊に導かれし者②
ダイが宿屋のベッドで横になり、うとうととしていた所、
突然、隣の部屋から、
「キャァー!!」
ドンドンと低く響く音と共にジュリアの悲鳴が聞こえた。
ダイはすぐに飛び起き、部屋を飛び出した。
「どうした!」
そう言うと、ジュリアの部屋に飛び込んだ。
そこで目にしたのは、紙を丸めて構えているジュリアの姿だった。
「何をしているの?」
「ちょっと!静かにして!」
ジュリアに一喝され、ダイは椅子に座って静かに見守る事にした。
その後、ジュリアは紙の棒を振り回し、部屋の中をグルグル回っていたが、
「あー、もう!」
と、イライラした口調で呟くと、諦めたのかベッドに座りこんだ。
それを見たダイは、
「仕方ないな……。ほれ!」
そう言うと、虫の方を指差した。
すると、ジュリアを苛立たせた生物は氷に閉じ込められ動かなくなった。
その塊を掴んで、窓の外にそっと置いた。
それをみたジュリアは疲れた表情を浮かべ、
「ありがとう……。ホントに私って何もできないよね……。
ずっと、守って貰ってばっかりで…。自分が嫌になる……」
肩を落とし、俯きながら呟いた。それを聞いたダイは、
「隣、座っていい?ちょっと話しようか?」
ジュリアの隣を指差して、優しく問いかけた。
すると、ジュリアは下を向いたまま、頷いた。
それをみたダイはジュリアの隣に座り、独り言を言うように話しかけた。
「まずは、ジュリアさんは何もできないって事はないよ…。
少なくとも俺にはこの世界を旅する中で唯一、信用できる人だと思っている。
今日のシズクの件だって、
俺一人だったらあんなに打ち解けられなかった……。
ジュリアさんにはジュリアさんのできる事を、
できない事は周りの誰かが補ってくれるから……。
今回みたいな事だったら、いくらでも俺を頼ってくれたらいいよ」
「ありがと……。
貴方にそう言って貰えると、ちょっと気持ちが楽になった。
でも、ダイさんって年下なのにしっかりしているね……。
私の方が子供みたい……」
「俺は思っている事を言っただけだから……。
あれ?年齢の話したことあったっけ?」
その言葉を聞いて、ジュリアの表情が一瞬ハッとしたが、
すぐにいつもの柔らかい表情になり、
「何となく、肌の感じとかで年下かな?……ってずっと思っていたんだ。
私は二十三歳だけど……。間違ってないよね?」
「確かに、俺は二十歳だから間違ってはないけど……。
ん?どうした?」
ダイは自分の肩に重みを感じ、驚いた表情で隣を見ると、
ジュリアが凭れかかっていた。
「しばらく、こうさせていて……。
こっちの世界に来て、できるだけ頼らずに頑張ってきたけど……。
やっぱり、寂しい!
あっちの世界ではいつも大切な人が
さっきのダイさんと同じような言葉で励ましてくれていたんだ。
それを思い出したら、すごく寂しくなっちゃって……。
今だけちょっとでいいから、充電させて……」
ダイは大切な人という言葉を聞いて、少し落胆したが、
こちらの世界で少しでも役に立つのであれば力になろうと決心して、
「……いいよ、寂しい時や不安な時はいつでもどうぞ。
大切な人の代わりになれるとは思わないけど……」
「代わりなんて……。
そういうつもりで言った訳じゃなかったけど……。
寂しくなったらお言葉に甘えさせて貰います。
けど、不安に思った事はダイさんに会ってから一度もないよ。
あっちの世界の大切な人とこっちの世界のダイさんが居るから、
私は絶対に元の世界の帰れるって確信しているし……。
ただ、やっぱり一人だと寂しくなる時があるんだよね……」
「そういう時はいつでも言ってくれ!
話くらいいくらでも聞くから。
けど、そういう風に考えられるジュリアさんはやっぱり強いと思うよ。
俺なんてずっと不安ばかり感じている……」
ダイがそう言うと、ジュリアはそのままの体勢で続けた。
「私もあっちの世界であの人に会うまでは、
何に対しても不安でいっぱいだったんだよ。
他人の事を信じることができなくて、
ずっと1人でくよくよしていたの……。
そんな時に彼に出会って、いつも『頼っていいよ、一緒に頑張ろう』って
励ましてくれた。
そのおかげで、私は今のままでいいんだ、信じていいんだって
思えるようになったんだ。
いつかダイさんの前にそういう人が現れた時に、
同じように言って上げてね」
ダイはジュリアの告白に対して、複雑な表情で何も答えられずにいた。
ジュリアは自分の言いたい事を言ってすっきりしたのか、
「自分の事ばかり言ってごめんね……。
多分、今の私以上にダイさんの事を必要としている人が必ずいるから……。
私にとってあの人が居たように……。
けど、言いたい事を言えてよかった。ありがとう。
それにいっぱい充電できた……。
私はもう大丈夫だよ」
そう言って、ダイから身体を離した。




