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6.闇の精霊に導かれし者①

「……でね、ジョヌ国の王様にこの靴を貰ったんだ!」

ジュリアは靴を見せながら、嬉しそうにしゃべり続けていた。

「見て!靴に魔力を集中させるとこんなこともできるんだよ!」

そう言うと、ジュリアの身体がすっと宙に浮いた。

「おー!すげーっ!」

ダイが感嘆の声を上げる。ジュリアは得意そうに、

「なんか、ジョヌ国の宝具で『風の靴』って言うんだって!いいでしょう?」

「でも、これってジュリアさんしか使えないよね?」

「そうなのかな?私の力が一番相性いいみたいだけど……。」

「ケイスケから預かったこの靴も宝具??」

「そう、確か『光の靴』って言うみたいだよ。

 闇の力を持つモノしか身につけられないらしいよ。」

「そうみたいだね、俺も『光の兜』をブリュレ国で貰ったんだ。

 俺が身につけようとしたら吹っ飛ばされた(笑)。」

「大丈夫?」

ジュリアはそう言うと、ダイの額に手を当てた。

その瞬間、ダイの表情が一気に険しくなり、

ジュリアの身体をギュッと引き寄せた。

「えっ!何?」

「しっ!俺の後ろに隠れていて、絶対に前に出るなよ!」

そう言うと、ジュリアを守るように身構えた。

「どうしたの?」

ジュリアが心配そうな表情でダイの陰からひょっこり顔を出した。

「囲まれている……。十五・六くらいかな?

 ジュリアさんは何があっても俺の側を離れるなよ!」

ダイはそう言うと、剣を構えて集中した。

『状況はかなり不利、ここは両側が崖の一本道。

 相手の気配は崖の上に感じる。

 ここで、考えられることは崖の上から魔法や弓矢などの

 遠距離攻撃を集中的に受けるな。

 と、なるとこちらができる作戦は一つしか……』

剣から一気に魔力を解放した瞬間、周りは深い霧に包まれた。

そして、ジュリアを抱きかかえて、一本道を一気に駆け抜けた。

後方で、何かが爆発する音やぶつかる音が響き渡った。

ある程度の距離を保った所でジュリアを下した。

「ジュリアさん、頼みがあるんだけど……」

そっと、耳打ちするとジュリアが頷いた。

ジュリアが目を閉じて集中すると、二人の身体がスッと浮上した。

そのまま、崖の上に降り立つと、

「ありがとう。しばらく目立たない所に隠れていて」

と、言いながら相手のいる方向へ進んで行った。

そして、一気に間合いを詰めた。

すぐさま、剣を突き付け、

「こいつを助けたければ、武器を捨ててこちらへ来い!

 十数える間だけ待ってやる」

そう叫ぶと、カウントダウンを始めた。

しばらくして、一つの影が近付いてくるのが見えた。

その影は、

「ちょっと待ってください!みんなは僕の指示に従っただけです。

 僕が変わります。僕以外のみんなを解放してあげて下さい」

「この状況で、『わかった』とは言えないなぁ。

 まず、第一に君が首謀者という保証がない。

 身代わりの可能性だってある、第二に罠の可能性が高い。

 明らかに数的にこっちの方が不利だ。

 まずは、この霧が晴れるまでにここに全員集まって貰おう。

 話はそれからだ」

ダイは冷たく言い放った。

やがて、霧が晴れダイの目の前には十数人が集まっていた。

「これで、全員か?」

ダイは剣を強く突き付けるようにしながら、尋ねた。

すると、集団の後ろから一人が歩み出て答えた。

「そうです。彼らは全員、僕の指示通りに動いただけです。

 この国を光の国の侵攻から守るために……」

「おまえ……。人間か?」

ダイは前に進み出た男をみて、驚愕の声を上げた。

その視線の先には、十二、三歳くらいの少年が

申し訳なさそうな表情をして立っていた。

「そうか……。分かった。君以外は解放しよう。

 ただし、変な気は起こさない方がいい。

 たとえ全員が束になって掛って来ても、俺には勝てないよ。

 命が惜しい奴は今すぐに立ち去れ!」

捕らえたモノの背中をバッと押し出し、ダイが叫ぶと全員が一目散に逃走した。

しばらくすると、辺りに気配はなくなり二人だけになり、ダイが口を開いた。

「取りあえず、何故俺達に攻撃してきたのか説明して貰おうか?」

冷酷な口調で問いただした。少年が回答に困っていると、

「正直に話して貰おうか……。

 嘘をつくと身の……いたっ!なんだよ!」

ジュリアが背後からダイの頭をはたいていた。

あまりの高圧的な態度が気に入らなかったようだ。

「彼はまだ子供じゃない!何を偉そうに言っているの?

 大人気ない!ごめんね…何かこの人、気が立っているみたい。

 気にしないでね。まずは自己紹介からだよね?

 私はジュリア、この偉そうな人はダイ、君の名前は?」

「シズク……」

「シズク君か……。いい名前だね!シズク君も精霊さんに呼ばれてこの世界に来たの?一人で寂しくない?」

「……」

ジュリアの優しい問いかけにも、シズクは答える気配を見せない。その様子を見ていたダイが口を挟んだ。

「一気に聞かれても困るよな……。さっきはすまなかった。

 戦闘後で気が立っていたんだ。

 攻撃してきた理由が納得できれば、

 君もこの国も攻撃をするつもりはないよ。

 ゆっくりでいいから話してくれないか?」

優しい口調で尋ねると、シズクは重い口を開いた。

「ごめんなさい……。

 僕は闇の精霊にこの世界に連れてこられました。

 僕がここにきてからずっと、

 光の国の兵士達がこの国をずっと攻撃してきていたので…。

 まさか、関係ないダイさんやジュリアさんが通るなんて

 想像もしていなかったんです。

 本当に、ごめんなさい」

深々と頭を下げた。ダイは、シズクの頭をポンと叩き、

「頭を上げろよ。君の気持はよくわかったよ。

 何事もなかったから気にする必要もない」

そう言うと、シズクの頭を優しく撫でた。すると、シズクは

「ごめんなさい、ごめんなさい」

ダイの胸で号泣しながら謝り続けた。

ダイは、シズクの背中をさすりながら、

「分かったから、泣くな!男だろ!

 大切なのはこれからどうするかじゃないのか?」

と、優しい口調で宥めるように言うと、

「……はい」

シズクは泣きやみ、顔を上げて答えた。

「いい子だ。今日はもういいから、一旦帰って休め。送るから……」

頭をポンポンと軽く叩きながら、言った。

その後、ダイとジュリアはまだ幼いシズクにこれ以上の不安や罪悪感を持たせないように、話題を振りながら黒の城まで送り届けた。

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