5.救世主の帰還③
本日、2話目です。
夜が更け始めた頃、ダイは目を覚ました。
横目でベッドを見ると、レイが気持ちよさそうに熟睡しているのを確認した。
『魔法が効きすぎたか…。仕方がない……』
ダイはベッドで寝ているレイに近付き、頭に手をかざした。
すると、急にレイが飛び起き、大きく伸びをした。
「あぁ、何か知らないうちに熟睡していた……。もう、夜更けか…。
そろそろ、作戦を実行するか!」
レイはそう言うと、全裸で立ちあがり、鎧に手をかけた。
ダイは、目のやり場に困りながらも、身支度を整え、レイの準備を待った。
そんなダイの様子を見たレイは、鎧を身につけながら問いかけた。
「何をキョロキョロしている?そんな恥ずかしがる関係でもなかろう?」
「いや、恥ずかしがる関係だから…、
悪いが正直言って俺にその気はないからな!
先に赤い塔に向かうから、白い塔の方はまかせたぞ」
ダイは、そう吐き捨てると部屋を出た。
『全く何を勘違いしているんだか……』
ちょっと、いらいらしながらフレイル城の中を進み始めた。
『しかし、夜中の城はやっぱり気持ち悪いな……。
全く気配がないから、安心して探索できるからいいけど』
などと考えながら一直線に赤い塔へ向かった。
しばらく進むと周りより強い光を発している場所を見つけた。
『ここかな?』
注意深く近付くと、奥に牢屋のような鉄格子があり、
見張りと思われる兵士の姿が見えた。
『ビンゴ!さて、見張りはぱっと見た感じ二人か…。
取りあえず、寝て貰おうか……』
その場で手をかざし、念じると眠気を含んだ水蒸気が発生した。
その水蒸気が兵士たちを包み込んだ。
しばらくの間、兵士の様子を伺い、
完全に落ちた事を確認すると兵士に近付いた。
寝ている兵士たちの身体を弄り、牢屋の鍵を探し出した。
カチャ、ギー、牢屋の扉が開き、
そこには椅子に座って項垂れているブーロウ王の姿があった。
「ブーロウ王、御助けに参りました。
来るのが遅くなり申し訳ありません。
見張りが来る前にここを出ましょう」
と、ブーロウ王に向かって言った。
しかし、ブーロウ王は静かに首を横に振りながら、
「ダイ殿、救出に来て頂いた事は本当に感謝する。
しかし、我が国の民と兵を守るためにはここにいる必要があるのだ。
もしも、ワシがいない事が分かったらフロウ国は間違いなく、
再度攻め込んでくるだろう。
それは避けなければならない。
申し訳ないが、お引き取り願おう」
「取りあえず、二重に予防線を張っておきましょうか?」
ブーロウ王の話しを聞いた、ダイはそう言うと、
牢の外で寝ている兵士の一人を連れて来て
ブーロウ王の座っていた椅子に座らせた。
そして、兵士に手をかざすと、霧が兵士を包み込んだ。
しばらくして、霧が薄くなるとブーロウ王の姿になっていた。
「どういうことだ?」
ブーロウ王は驚きの声を上げた。
ダイは、さらにブーロウ王の姿をした兵士の頭に手をかざし、
「君は今からブリュレ国王、ブーロウⅢ世だ。わかったな」
「はい、ワシはブーロウ、ブリュレ国王だ」
それを聞いたダイは、一息ついてブーロウ王の方を見た。
「まずはこれでしばらくは時間が稼げるでしょう。
貴方の国の兵や国民は貴方を待っています。
貴方が捕らえられているが故に手を出せないでいるようでした。
皆が待っています、行きましょう」
「本当に何から何まで世話になって申し訳ない……。
ワシがもっとしっかりするべきなのだが……」
「いいですよ、戻ったらしっかりしてもらいます。
とにかく、急ぎましょう。」
ダイはそう言いながら、塔を駆けあがった。
その途中に、息を切らしたブーロウ王はダイを問いただした。
「ダイよ!どこへ向かっている!この城を脱出するのではないのか?」
ダイは振り返る事もなく、その問いかけに対して静かに答えた。
「そうですよ。取りあえず塔の天辺まで行きましょう。
確実に誰にも会わずに脱出できますから、信用して下さい」
塔の頂上に着くと、ブーロウ王の方を振り返り、
「ここから脱出しますよ、しっかり掴まってください」
そう言うと、ブーロウ王を抱きかかえて塔から飛び降りた。
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