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5.救世主の帰還①

「どうなっている……」

ブリュレ城の門の前でダイは目を疑うような光景に対し、

茫然とした表情を浮かべながら呟いた。

ダイが知っている活気に満ち溢れていた城内が、

今では門番もいなければ、誰の気配も感じることができなくなっていた。

しかし、まだ誰かが残っているかも知れないという希望を持って、

誰もいなくなり荒れ果てたブリュレ城の中をダイは進んで行った。

注意深く周りの様子を探りながらさらに城の奥へと足を運び、

王座へとたどり着いた。

むろん、そこにブーロウ王がいるはずもなく閑散としていた。

「やはり、誰もいないか……」

そう呟くと王座の周辺をくまなく探索していた。

それはこれだけ大きな城であれば何者かに攻め込まれた時の事を考慮して、

抜け道等を作っているのが当たり前だとダイは考えていたからだ。

そこにはダイの予想通り、王座の後ろに不自然なくぼみがあった。

「ここか……。これをどうにかすると……」

そのくぼみを見てそう呟き、軽く動かしてみた。

すると、ガガガガという音と共に王座がスライドして地下へと続く階段が姿を現した。

ダイはその階段を覗きこんだが暗くて先がよく見えなかったため、

炎の指輪を使って近くにあった木の棒に布を巻き松明を作った。

そして、躊躇なく階段を降りて行った。暗い通路を進んでいくと、

時折松明の揺れが見られるので空気が流れているのがわかった。

間違いなくどこかへと繋がっていると確信したダイは休むことなく足を進めた。

しばらく歩き続けると、通路の先に四角い光が見えてきた。

「やっと、出口か……」

独り言を言うと、これまでと変わらないスピードで進み続けた。

光がどんどん強く大きくなり、光の中に飛び込んだ瞬間に

ダイは何か固いモノにぶつかり、ドンと言う音と共に、松明が通路に落ちた。

ダイの目が慣れた時、首元には2本の槍が突き付けられていた。

「ちょ、ちょっと……」

ダイが言い終わる前に槍を持った男の一人が、

「貴方は救世主様!申し訳ありません!すぐに姫に報告だ!

 救世主様が戻って来られたと!」

そう言うと一人は奥へと駆けて行き、

ダイはもう一人の男にウンディアーナの前に案内された。

ウンディアーナは、何もない狭い部屋で木の椅子に座って、

笑顔を作って迎え入れた。

「ダイ様、よく来てくれました。城があんな状態で驚いたでしょう。

 ここは、ブリュレ国とフロウ国の境界にあるヴィレットビュレという町の地下です。

 それにしても、この場所をよくわかりましたね。

 とにかく、貴方と再会することができてとてもうれしく思います。

 何もない所ですがゆっくりしてください」

ウンディアーナはそう言うと、ふうっとため息をついた。

ダイはその様子が気になり、

「無理をしなくてもいいですよ。

 ウンディアーナさんの立場も分かりますが、

 この国に何があったのかを教えて貰えませんか?」

と、言ってウンディアーナの顔を覗きこんだ。

ウンディアーナはダイにすがる様な思いで、

ブリュレ国に起こった事を話し始めた。


あの光の国からの贈り物の件が解決したのち、この国に平穏な時が訪れました。何度かルミネ国やフロウ国からの使者がやってきましたが、

父は強気な態度で追い返していました。

しかし、そんな日々も長くは続くはずもなく、

突然フロウ国の軍隊が攻め込んできたのです。

ダイ様なら今の状況から結果はお分かりかと思いますが、

手も足も出ずに攻め込まれました。

例の件で、兵士の数が少なくなっていただけでなく、

フロウ国の兵士に対して魔法が全く効かなかったと聞いています。

しかも、打ち消されるわけでなく、

弾き返されほぼ自滅に近い状態だったそうです。

父とブルーノは私を隠し通路から逃がした後、

兵と民の命を守ることと引き換えに投降したようです。

私はこのヴィレットビュレの町でレジスタンスの皆さんに匿って貰っています。


「失礼します」

ここまで話したところで、レジスタンスのリーダー格の男が入ってきた。

そして、ダイを見るなり近付き、握手を求めてきた。

「やはり貴方でしたか…。姫様がここまで信頼なされる方が、

 敵であるはずがない。

 以前に自己紹介ができませんでしたので、名乗っておきます。

 私はこの町をフロウ国の侵略から守るレジスタンスの一員で

 フロードと言います。

 姫様からこの国の現状を聞いているかと思いますが、

 現在このブリュレ国はとてもまずい状況になっています。

 なんとか、ブーロウ王を救出して、国を建て直さないといけません」

「フロード殿、その気持ちはよくわかります。

 しかし、ブーロウ王の無事は確認できているのでしょうか?

 ブーロウ王とブルーノ殿が命をかけて、

 ウンディアーナ姫を残したのですから、彼女の下で一旦、

 国を再建するというのが確実な選択だと思います」

ダイが、そう質問するとウンディアーナが答えた。

「それは大丈夫だと思います。

 フロウ国の狙いは我が国にある宝具、光の兜のようです。

 私自身もそのような物がある事は今回の件で初めて知りましたが、

 歴代のブリュレ国王のみが継承しているとの事です。

 この宝具が見つからない限り、王の命を奪う事はできないでしょう。

 それに今の私では臣下や民はついてこないでしょう」

「わかりました。ブーロウ王の救出を最優先で考えましょう?

 今の段階で何か案はあるのでしょうか?」

ダイはウンディアーナとフロードの顔を交互に見ながら尋ねた。

しばらくの沈黙後、フロードが重い口を開いた。

「色々と検討はしているのですが現状では妙案がなく、困り果てています。

 王の命は大丈夫だろうと思ってはいますが、

 長引くとより分が悪くなる事を懸念しています。

 ダイ殿も何か案がありましたら、ご教示願いませんでしょうか?」

「私からもお願いします。

 今、頼れるのは申し訳ありませんがダイ様しかいません。」

二人は深々と頭を下げて、言った。

「お二方、頭を上げて下さい。

 私も良い案があるわけではないので、二方と同じです。

 3人で考えればいい案が出てくるかもしれませんので、

 今分かっている事を整理しませんか?」

3人はさまざまな角度から、検討を続けた。

ブリュレ城が壊滅しているため、状況把握ができておらず、

少ない情報から分かっている事は、

ブーロウ王とブルーノがフロウ国のフレイル城に監禁されている可能性が

高いことだった。

分かっているが、攻め込むには兵の数が足りず、

士気も低い状態ではどうにもならず不可能であった。

その中でダイが一つの提案をした。

その案とは、ダイが独りでフレイル城に潜入し、

ブーロウ王とブルーノを救出するという内容だった。

それを聞いたウンディアーナは、

「ダイ様の気持ちはとても分かりますし、

 ありがたいのですがダイ様に何かあったら

 本当にどうにもならない状況となるでしょう。

 もっと、安全かつ確実な方法を考えた方がいいと思います。」

と、反対したが、それに対してフロードは、

「その案しかないと思います。

 魔法が通用しない可能性が高い今では、

 ダイ殿より腕の立つモノはおりません。

 人数を増やしても邪魔になる可能性の方が高く、

 単独潜入が一番、成功する可能性が高いと思います」

賛成意見を言った。ダイとフロードによる説得により、

ウンディアーナもしぶしぶ納得した。

本日、3話目です。かなりペースを上げていますがいかがでしょうか?

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