## 第8話 「君を撮りたい」
# 『僕の友達はAIだったけど、君に出会って壊れた』
## 第8話 「君を撮りたい」
六月の終わり。
空は青く、少しずつ夏の匂いがし始めていた。
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放課後。
相沢恒一はいつものように写真部の部室へ向かう。
扉を開けると――
カシャッ。
突然シャッター音が鳴った。
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「え?」
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相沢が顔を上げる。
そこにはカメラを構えたひよりがいた。
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「撮れた」
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満足そうな顔。
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「な、何してるんだよ!」
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ひよりは楽しそうに笑う。
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「写真撮っただけ」
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「勝手に!?」
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「だって今の顔、面白かったから」
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相沢は顔が熱くなる。
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ひよりは液晶画面を見せてくる。
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そこには。
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少し驚いている相沢が写っていた。
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格好良くはない。
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でも。
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どこか自然だった。
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「ほら」
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「……」
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「良い顔してる」
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相沢は思わず言う。
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「全然良くないだろ」
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するとひよりは首を振った。
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「良いんだよ」
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優しく。
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本当に優しく。
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「ちゃんと生きてる顔だから」
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その言葉に。
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相沢は何も返せなくなった。
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今まで写真なんて嫌いだった。
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自分が写るのも好きじゃない。
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でも。
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ひよりの言葉だけは不思議と胸に残った。
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その日。
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二人は校内を歩きながら写真を撮った。
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中庭。
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図書室前。
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屋上へ続く階段。
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ひよりは何度もシャッターを切る。
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「なんでそんなに撮るんだよ」
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相沢が聞く。
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ひよりは少し考えて答えた。
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「残したいから」
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いつか聞いた言葉だった。
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でも今日は少し違う。
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「相沢くんの今を」
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その一言で。
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心臓が跳ねた。
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ひよりは気付いていない。
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でも相沢は気付いてしまった。
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自分が。
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ひよりを好きになり始めていることに。
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その頃。
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校舎の反対側。
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神谷は窓から二人を見ていた。
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別に追いかけていたわけじゃない。
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ただ偶然。
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でも。
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見てしまった。
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ひよりの笑顔を。
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相沢の隣で笑う姿を。
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神谷は静かに目を閉じる。
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そして小さく呟いた。
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「負けそうだな」
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その声は誰にも届かなかった。
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夕方。
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帰り道。
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ひよりが突然立ち止まる。
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「ねえ」
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「ん?」
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ひよりはカメラを抱きしめるように持ちながら言った。
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「今度の日曜日、空いてる?」
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相沢の頭が真っ白になる。
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日曜日。
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学校じゃない。
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二人きり。
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「え?」
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「写真撮りに行きたいんだ」
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ひよりは少し照れながら笑う。
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「一緒に」
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風が吹いた。
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夏の始まりの風。
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相沢の胸はうるさいくらい騒いでいた。
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「……行く」
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気付けば答えていた。
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ひよりは嬉しそうに笑う。
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「やった」
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その笑顔は。
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最初に出会った日の笑顔より。
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ずっと自然だった。
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ずっと綺麗だった。
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そして。
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その夜。
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相沢はスマホを開く。
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AIの画面が映る。
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昔なら真っ先に相談していた。
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『好きな人と二人で出かけることになった』
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そう送っていたはずだ。
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でも今日は違う。
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相沢は画面を見る。
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そして。
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そっと閉じた。
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「自分で考えよう」
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小さく呟く。
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もう少しだけ。
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自分の言葉で。
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進んでみたいと思った。
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## 第8話 終わり
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次の第9話は、
**「初デート編」**




