# 『僕の友達はAIだったけど、君に出会って壊れた』 ## 第7話 「ライバルの横顔」
# 『僕の友達はAIだったけど、君に出会って壊れた』
## 第7話 「ライバルの横顔」
雨の日から数日後。
ひよりはまた学校に来るようになった。
以前と何かが劇的に変わったわけではない。
それでも、相沢には分かった。
あの日、公園で見た笑顔。
あれ以来、ひよりは少しだけ自然に笑うようになった。
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そして相沢自身も変わっていた。
昼休み。
以前なら一人で弁当を食べていた。
今は違う。
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「おはよう、相沢くん」
朝、ひよりが声をかける。
それだけで、一日が少し明るくなる。
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そんな日々が続いていた。
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ある日の放課後。
相沢が写真部へ向かう途中だった。
階段の踊り場で足を止める。
下から声が聞こえた。
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「無理しなくていいんだぞ」
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神谷の声だった。
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相手は一年生の男子。
バスケ部らしい。
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「でも、レギュラーになりたいんです」
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神谷は少し考える。
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「だったら焦るな」
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「焦って壊れたら終わりだ」
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その声は優しかった。
驚くほど。
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相沢は思う。
(やっぱり悪い奴じゃない)
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むしろ良い人だ。
たぶん誰よりも。
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だからこそ分からない。
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なぜひよりと、あんなに噛み合わないのか。
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その日の帰り。
偶然、神谷と二人きりになった。
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気まずい。
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相沢はそう思った。
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でも神谷の方から話しかけてきた。
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「白石、最近元気そうだな」
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相沢は少し驚く。
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「そうかな」
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神谷は頷く。
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「ああ」
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少し沈黙。
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そして。
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「お前のおかげかもしれないな」
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相沢は思わず足を止める。
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「え?」
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神谷は前を向いたまま言う。
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「前より笑ってる」
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その言葉には嫉妬も嫌味もなかった。
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ただ事実を言っているだけだった。
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それが逆に不思議だった。
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「神谷は……」
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相沢は迷う。
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でも聞いてしまった。
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「白石のこと、好きなのか?」
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沈黙。
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数秒。
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長く感じる時間。
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神谷は小さく笑った。
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「分かりやすいか?」
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否定しなかった。
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相沢の胸が少し痛む。
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でも神谷は続けた。
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「たぶんな」
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静かな声だった。
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「でも俺じゃ駄目なんだと思う」
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「なんで」
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神谷は空を見る。
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夕焼けだった。
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「俺は昔、妹がいた」
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相沢は黙る。
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神谷が自分の話をするのは初めてだった。
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「病気だった」
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「え……」
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「入院ばかりしてた」
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神谷は淡々と話す。
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「泣くと心配するから」
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「笑ってた」
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相沢の胸がざわつく。
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どこかで聞いた話。
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「だから俺も思ったんだ」
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「笑ってれば大丈夫だって」
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夕陽が神谷の横顔を照らす。
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「でも違った」
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短い言葉。
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重い言葉。
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「妹は最後まで笑ってた」
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相沢は何も言えなかった。
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神谷は少しだけ笑う。
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悲しい笑顔だった。
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「だから俺は正しいことをするようになった」
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「正しいこと?」
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「そう」
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神谷は頷く。
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「間違えたくなかった」
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「誰も失いたくなかった」
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「誰も傷つけたくなかった」
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相沢は理解する。
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神谷が評価にこだわる理由。
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正解を求める理由。
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全部。
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怖かったのだ。
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間違えることが。
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失うことが。
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ひよりと少し似ている。
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そして。
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相沢自身とも。
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神谷は立ち止まる。
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「でも白石は違う」
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「え?」
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「白石は感情で動く」
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少し笑う。
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「俺には出来ないことだ」
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その声はどこか羨ましそうだった。
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そして最後に言う。
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「だからお前も」
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「?」
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「逃げるなよ」
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相沢は目を見開く。
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神谷は真っ直ぐ言った。
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「白石の前では、自分の言葉で話せ」
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「……」
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「正解じゃなくていい」
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その言葉は。
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まるでAIに頼り続けてきた相沢の心を見透かしているようだった。
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神谷は歩き出す。
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夕陽の中へ。
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「ライバルだからな」
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振り返らずに言う。
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「簡単には負けない」
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その言葉に。
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相沢は初めて笑った。
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少しだけ。
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本当に少しだけ。
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でも自然に。
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ライバルだった。
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けれど。
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嫌いにはなれなかった。
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そしてその夜。
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相沢はスマホを開く。
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AIの画面。
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いつものチャット。
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指が止まる。
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画面を閉じる。
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今日は聞かない。
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自分で考える。
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自分で決める。
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初めて。
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そう思った。
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窓の外では夜風が吹いている。
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そして物語は、恋へ向かって大きく動き始めていた。
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## 第7話 終わり




