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## 第2話 「写真部の窓と、近づく距離」



# 『僕の友達はAIだったけど、君に出会って壊れた』


## 第2話 「写真部の窓と、近づく距離」


翌日の放課後。


相沢 恒一は、少しだけ迷っていた。


(……行く意味、あるのか?)


写真部の部室は、昨日と同じ場所にある。


ただの偶然で話しただけの相手。


それなのに、なぜか頭から離れなかった。


---


スマホを取り出す。


画面にはいつものAIチャット。


相沢は少しだけ打ち込む。


> 「人と話したあと、変な感じがするのは普通?」


すぐに返答が来る。


“それは新しい経験への適応反応です。安心してください”


(安心、か)


便利な言葉だ。


でも、昨日感じた“ざわつき”は消えなかった。


---


気づけば、足は教室棟の端に向かっていた。


写真部の部室の前。


扉は少し開いている。


中から声がする。


「相沢くん?」


---


振り返ると、白石ひよりがカメラを首から下げたまま立っていた。


「……なんで名前覚えてるんだ」


思わず出た言葉に、ひよりは笑う。


「昨日ちゃんと自己紹介してくれたでしょ?」


「そうだけど……」


「そういうの、ちゃんと覚えるタイプなの」


軽く言って、扉を開ける。


---


「入る?」


断る理由も、特に見つからなかった。


相沢は静かに中へ入る。


部室の中は、思っていたより“生活感”があった。


写真、機材、プリントされた風景。


その中に、ひよりの世界がある。


---


「写真、見る?」


彼女はアルバムを取り出す。


相沢は少し迷ってから頷いた。


ページをめくる音だけが響く。


---


そこには、誰かの“日常”があった。


教室の窓際、廊下の光、誰かの笑いかける瞬間。


でも不思議だった。


どの写真にも“寂しさ”が少しだけ混ざっている。


---


「これ、全部学校の中?」


「うん」


ひよりは軽く答える。


「外じゃなくて、ここが好きなの」


「どうして」


彼女は少しだけ間を置いてから言った。


「外ってさ、ちゃんと“誰かと比べられる場所”だから」


---


相沢は言葉を失う。


ひよりは続ける。


「でもここは違うでしょ。誰も完璧じゃないし、誰もちゃんと見てない」


それは、少しだけ救いのような言葉だった。


---


その時、廊下から足音がした。


「白石、まだいたのか」


神谷 恒一だった。


---


ひよりは顔を上げる。


「うん、片付けしてる」


神谷は部室の中を一瞬見て、相沢に視線を向ける。


「また来てるんだな」


その言い方は、責めているわけではない。


でも、距離がある。


---


「別にいいでしょ?」


ひよりが軽く返す。


神谷は少しだけ黙ってから言う。


「……まあ、いいけど」


そしてすぐに話題を変えた。


「来週の写真展、準備進んでる?」


---


その瞬間、ひよりの表情が少しだけ変わった。


ほんのわずか。


でも相沢は気づいた。


---


「大丈夫だよ」


そう言いながらも、声は少しだけ軽くなかった。


神谷はそれ以上追及せず、去っていく。


---


静けさが戻る。


相沢は小さく聞いた。


「今の、何かあったのか?」


ひよりは少し笑って答える。


「なんでもないよ」


でも、その“なんでもない”は、少しだけ嘘っぽかった。


---


帰り際。


ひよりがふと思い出したように言う。


「ねえ相沢くん」


「ん?」


「明日も来る?」


---


相沢は一瞬止まる。


昨日と同じ質問。


でも、意味が少し違って聞こえた。


---


「……わからない」


そう答えたあと、少しだけ付け足す。


「でも、多分……来ると思う」


ひよりは満足そうに笑った。


「じゃあ、またね」


---


その笑顔が、昨日より少しだけ近く感じた。


---


夜。


相沢はまたAIを開く。


でも今日は、すぐには打てなかった。


(今日も行った)


それだけのことなのに、説明できない気持ちが残っている。


---


そして初めて思う。


「これ、相談しても、たぶん分からないやつだ」


---


スマホを閉じる。


窓の外は静かだった。


でも胸の奥だけ、少しだけ騒がしい。


---


## 第2話 終わり


---



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