## 第13話 「最後に残る言葉」
# 『僕の友達はAIだったけど、君に出会って壊れた』
## 第13話 「最後に残る言葉」
それから数日、学校は何も変わらなかった。
変わったのは、三人の中だけだった。
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ひよりは以前よりよく笑うようになった。
ただし、それは“軽い笑顔”ではない。
ちゃんと一度、呼吸をしてから出す笑顔だった。
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相沢恒一は気づいていた。
ひよりは今、「自分で笑おうとしている」。
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そして神谷 恒一は、少しだけ学校で姿を見かけなくなった。
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誰も気にしていないようで、少しだけ気にしている。
そんな距離だった。
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放課後。
相沢は写真部の部室へ向かう。
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扉の前で、一瞬止まる。
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中から声がした。
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神谷だった。
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相沢は息を止める。
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扉の隙間から見える。
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ひよりと神谷。
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二人だけ。
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相沢は入れなかった。
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そのまま立ち止まる。
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聞こえてくる声。
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神谷は静かに言う。
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「これが最後だと思う」
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ひよりの声。
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「最後?」
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神谷は頷く。
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「俺はもう、お前の“隣”にはいられない」
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沈黙。
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ひよりが小さく息を吸う。
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「どうして?」
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神谷は少し笑う。
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でも、それは悲しい笑顔だった。
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「俺はさ」
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「正しいことを選び続けてきた」
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少し間。
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「でもお前は違う」
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ひよりは黙る。
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神谷は続ける。
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「お前は壊れながら前に進くタイプだ」
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「俺はそれが怖い」
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静かだった。
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でも重かった。
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ひよりは小さく言う。
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「逃げるの?」
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神谷はすぐに否定しなかった。
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少しだけ目を閉じる。
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そして言う。
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「違う」
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「俺は“守り方”を間違えてた」
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その言葉に、ひよりが顔を上げる。
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神谷は続ける。
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「ずっと誰も傷つけないようにしてきた」
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「でも結果的に、誰にも届かなくなった」
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相沢は扉の前で動けない。
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神谷の声は震えていた。
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「だからもういい」
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「俺はお前を“止めない”」
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その言葉は、別れだった。
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でも優しかった。
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ひよりは小さく息を吐く。
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「そっか」
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一言。
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それだけだった。
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神谷は立ち上がる。
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「じゃあな」
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扉に向かう。
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そして一瞬だけ止まる。
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「白石」
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ひよりが振り向く。
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神谷は言う。
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「お前はちゃんと笑え」
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それだけ言って、出て行った。
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扉が閉まる。
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静寂。
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相沢はそこでようやく中に入る。
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「……聞いてた」
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ひよりは驚かない。
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ただ少しだけ笑う。
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でもその笑顔は、少し泣きそうだった。
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「全部じゃないよ」
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相沢は近くに座る。
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「いいのか」
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ひよりは少し考えてから言う。
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「うん」
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「神谷くんは、ちゃんと終わらせたかったんだと思う」
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窓の外。
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夕方の光。
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ひよりはぽつりと言う。
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「ねえ相沢くん」
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「うん」
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「私さ」
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少し間。
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「やっと“ひとりじゃない”って思えるようになったのにね」
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相沢は黙る。
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ひよりは続ける。
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「でもさ」
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少し笑う。
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「それでも人って進むんだよね」
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その言葉は、強かった。
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そして。
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スマホの通知音が鳴る。
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相沢の手元。
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AIからのメッセージ。
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“最近、利用頻度が減っていますね”
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相沢は画面を見る。
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そして。
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ゆっくりと電源を切った。
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完全にではない。
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でももう、頼らない。
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ひよりがそれを見ていた。
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「やめたの?」
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相沢は頷く。
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「もう十分かなって」
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ひよりは少しだけ笑う。
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「そっか」
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そして小さく言う。
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「じゃあさ」
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カメラを持つ。
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シャッターを構える。
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「今の顔」
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相沢は少し驚く。
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「撮るのか?」
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ひよりは頷く。
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「うん」
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そして静かに言う。
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「ちゃんと始まった顔だから」
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カシャッ。
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シャッター音。
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その瞬間。
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相沢は思った。
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これはもう。
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終わりじゃない。
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始まりだ。
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## 第13話 終わり
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次はいよいよ最終章
### 第14話(最終回)




