# 『僕の友達はAIだったけど、君に出会って壊れた』 ## 最終話 「君が写らない未来」
# 『僕の友達はAIだったけど、君に出会って壊れた』
## 最終話 「君が写らない未来」
それから少しだけ時間が流れた。
季節は夏に変わりかけていた。
校舎の窓から入る風は、もう少しだけ熱を含んでいる。
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写真部の部室。
あの日と同じ場所。
違うのは、空気が少し軽いことだった。
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ひよりは机の上に一枚の写真を置いていた。
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「これ」
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相沢恒一はそれを見る。
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そこに写っていたのは、自分だった。
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でも。
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ただの写真じゃない。
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少しだけ笑っている。
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少しだけ前を向いている。
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“何かを決めた顔”だった。
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「これ、あの日の?」
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ひよりは頷く。
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「うん」
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「海に行く前の日に撮ったやつ」
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相沢は少し黙る。
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「こんな顔してたんだな」
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ひよりは小さく笑う。
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「自分では気づかないよね」
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沈黙。
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窓の外で蝉の声が鳴き始めていた。
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そしてひよりが言う。
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「ねえ相沢くん」
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「うん」
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「私さ」
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少し間。
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「やっと分かったことがあるの」
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相沢は顔を上げる。
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ひよりはカメラを見つめる。
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「私はね」
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「誰かに見られるために笑うんじゃなくて」
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「誰かと一緒にいる時に笑うんだって」
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その言葉は静かだった。
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でも確かだった。
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相沢は小さく息を吐く。
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「それ、もうできてるじゃん」
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ひよりは少しだけ驚く。
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そして笑う。
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今までで一番自然な笑顔だった。
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数日後。
写真展の“追加展示”が行われた。
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神谷が残していった最後の資料。
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そこに一枚だけ、空白のパネルがあった。
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タイトルはない。
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ただ白いまま。
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相沢はそこに立つ。
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ひよりも隣にいる。
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「これ、何もないな」
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相沢が言う。
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ひよりは少し考えて言う。
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「これでいいんだと思う」
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「何が?」
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ひよりはカメラを握る。
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そして空白を見つめる。
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「まだ決まってない未来」
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その瞬間。
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シャッター音。
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カシャッ。
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空白が切り取られる。
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夜。
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相沢はスマホを取り出す。
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もうAIアプリは開かない。
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削除まではしていない。
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ただ、開かなくなっただけだ。
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窓の外には夜の街。
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そして静かに思う。
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(もう答えはいらない)
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(ちゃんと考えるから)
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翌日。
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ひよりが学校の屋上に呼び出す。
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風が強い。
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空は広い。
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「相沢くん」
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「ん」
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ひよりは少し照れながら言う。
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「好きだよ」
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一瞬、時間が止まる。
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相沢は何も言えない。
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でも、逃げなかった。
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ちゃんと見て。
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ちゃんと答える。
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「俺も」
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短い言葉。
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でも全部だった。
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ひよりは笑う。
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涙が少しだけ混ざった笑顔。
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「じゃあさ」
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ひよりはカメラを構える。
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最後に言う。
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「今の二人、撮っていい?」
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相沢は頷く。
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「いいよ」
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カシャッ。
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シャッター音。
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その瞬間。
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世界が一枚の写真になった。
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# 『僕の友達はAIだったけど、君に出会って壊れた』
## 完
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