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## 第12話 「選択」

# 『僕の友達はAIだったけど、君に出会って壊れた』


## 第12話 「選択」


放課後の光は、少しだけ冷たくなっていた。


写真部の部室には、いつもの静けさが戻っている。


でも、さっきまでとは違う静けさだった。


---


ひよりはアルバムを机に置いたまま、黙っている。


神谷 恒一も、珍しく言葉を探していた。


相沢恒一は、その間に立っていた。


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誰も動かない。


---


最初に口を開いたのは神谷だった。


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「白石」


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ひよりが顔を上げる。


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神谷は少しだけ息を吐く。


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「お前は、どうしたい?」


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その言葉は、優しかった。


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でも同時に、逃げ道を塞ぐ言葉でもあった。


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ひよりはすぐに答えられない。


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アルバムを見る。


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そして相沢を見る。


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少しだけ迷って。


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「私は……」


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声が震える。


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「ちゃんと知りたい」


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「知りたい?」


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神谷が聞き返す。


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ひよりは頷く。


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「お父さんのことも」


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「自分のことも」


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少し間。


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「ちゃんと向き合いたい」


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その言葉は、弱いのに強かった。


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相沢は気づく。


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これはもう“過去の話”じゃない。


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ひよりの“これから”の話だ。


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神谷は小さく頷く。


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「分かった」


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そして視線を相沢へ向ける。


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「お前は?」


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相沢は固まる。


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「え?」


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神谷は静かに言う。


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「お前はどうする」


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その一言で、空気が変わる。


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ひよりも相沢を見る。


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まっすぐに。


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相沢の胸が苦しくなる。


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(どうするって……)


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何を?


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何を選ぶ?


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頭の中で、AIの声がよぎる。


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“最適な選択を提示します”


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でも、その声はもう遠かった。


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相沢はゆっくり口を開く。


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「俺は……」


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言葉が詰まる。


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逃げたくなる。


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でも逃げなかった。


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一歩だけ前に出る。


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「白石のそばにいたい」


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それだけだった。


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でも。


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それが全部だった。


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ひよりの目が揺れる。


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神谷は少しだけ目を伏せる。


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そして小さく笑う。


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「そうか」


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その一言で、すべてが決まった気がした。


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沈黙。


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ひよりがぽつりと言う。


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「ねえ」


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二人が見る。


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「私さ」


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少し間。


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「初めて、選んだ気がする」


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相沢は息を飲む。


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ひよりは続ける。


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「ちゃんと向き合うって決めたの」


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そして。


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相沢を見る。


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「だから」


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その声は震えていたけど、逃げていなかった。


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「一緒にいてほしい」


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その瞬間。


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相沢の中で何かが音を立てて変わる。


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初めてだった。


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言葉じゃなくて。


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気持ちが先に決まる感覚。


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「うん」


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短い返事。


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でもそれで十分だった。


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ひよりは少しだけ笑う。


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その笑顔は、もう迷っていなかった。


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神谷はゆっくり立ち上がる。


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「じゃあな」


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ひよりが振り向く。


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「神谷くん」


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神谷は少しだけ手を上げる。


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「俺は俺でやることやる」


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そして扉に向かう。


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その背中は、少しだけ小さく見えた。


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でも弱くはなかった。


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扉が閉まる。


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静けさ。


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ひよりがぽつりと言う。


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「ねえ相沢くん」


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「うん」


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「AIってさ」


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相沢は少し笑う。


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「もう、あんまり使ってない」


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ひよりも笑う。


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「そっか」


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少し間。


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「じゃあさ」


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ひよりはカメラを持つ。


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そして言う。


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「今度は本当に残そうよ」


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「何を?」


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ひよりは相沢を見る。


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少しだけ照れて。


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でもはっきり言った。


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「今の私たち」


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その言葉に。


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相沢は静かに頷いた。


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窓の外は夕暮れ。


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世界が少しだけ柔らかく見えた。


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そして二人はまだ知らない。


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この“選択”の先に。


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最後の試練が待っていることを。


---


## 第12話 終わり


---


ここからいよいよ終盤。


次は


### 第13話(クライマックス前編)


*

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