表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
10/14

# 『僕の友達はAIだったけど、君に出会って壊れた』 ## 第11話 「見せてはいけなかったアルバム」

# 『僕の友達はAIだったけど、君に出会って壊れた』


## 第11話 「見せてはいけなかったアルバム」


屋上での夕焼けのあと。


ひよりは少しだけ元気を取り戻したように見えた。


けれど、それは“戻った”というより、“揺れたまま立っている”感じだった。


---


数日後の放課後。


写真部の部室。


ひよりはいつも通り机に座っていた。


カメラをいじっている。


相沢恒一は、その隣にいることが当たり前になりつつあった。


---


「相沢くん」


ひよりがぽつりと言う。


---


「ん?」


---


彼女は少しだけ迷ってから、机の下から小さな箱を取り出した。


---


「これ、見てほしい」


---


相沢は固まる。


---


「なにそれ」


---


ひよりは軽く笑う。


---


「アルバム」


---


その言葉だけで、空気が少し変わった。


---


「いいのか?」


---


ひよりは少しだけ間を置いて頷く。


---


「うん」


---


「たぶん、誰かに見せるの初めて」


---


その言い方が、少しだけ怖かった。


---


箱を開ける。


中には分厚いアルバム。


少し古い。


丁寧に扱われているのが分かる。


---


ひよりがページを開く。


---


そこには。


---


写真。


---


幼いひよりと、父親。


---


笑っている。


---


公園。


---


海。


---


クリスマス。


---


どれも普通の家族写真だった。


---


でも。


---


ページをめくるたびに、空気が変わる。


---


最後の方。


---


父親が病院のベッドにいる写真。


---


それでも笑っている。


---


ひよりの手が少し震える。


---


「これね」


---


「最後の頃」


---


相沢は息を止める。


---


ページの端に、手書きの文字。


---


『ひよりへ』


---


それだけで胸が詰まる。


---


ひよりは小さく言う。


---


「これ見つけた時さ」


---


「頭おかしくなりそうだった」


---


相沢は何も言えない。


---


ひよりは続ける。


---


「でもね」


---


「怒れなかった」


---


少し笑う。


---


「だってさ」


---


「この人も、笑ってたから」


---


その言葉が重い。


---


相沢はようやく言う。


---


「なんで誰も教えてくれなかったんだろうな」


---


ひよりは少しだけ首を振る。


---


「お母さんも辛かったんだと思う」


---


沈黙。


---


アルバムのページを閉じる。


---


ひよりは小さく息を吐く。


---


「ねえ相沢くん」


---


「うん」


---


「私さ」


---


少し間。


---


「本当はずっと怖かった」


---


相沢は顔を上げる。


---


ひよりはカメラを握りしめている。


---


「笑ってないと嫌われる気がして」


---


「本音言うと壊れる気がして」


---


声が震える。


---


「でも」


---


彼女は相沢を見る。


---


「最近ちょっとだけ違う」


---


相沢は息を飲む。


---


「君といると」


---


「壊れない気がする」


---


その一言は。


---


まっすぐだった。


---


まっすぐすぎて。


---


相沢の心に刺さった。


---


そのとき。


---


扉が開く。


---


神谷 恒一。


---


一瞬で空気が固まる。


---


「悪い」


---


神谷は少しだけ気まずそうに言う。


---


「忘れ物」


---


しかし視線はアルバムに向かっていた。


---


そして一瞬。


---


ひよりを見る。


---


その目が。


---


いつもと違っていた。


---


神谷はゆっくり言う。


---


「それ、見たのか」


---


ひよりは頷く。


---


「うん」


---


沈黙。


---


神谷はアルバムを見つめる。


---


そして。


---


静かに言った。


---


「……俺も、知らなかった」


---


ひよりが驚く。


---


「え?」


---


神谷は少し笑う。


---


でも悲しい笑顔だった。


---


「お前の父親のこと」


---


「俺も、ちゃんとは知らなかった」


---


空気が止まる。


---


相沢は気づく。


---


神谷とひよりの間には。


---


まだ語られていない過去がある。


---


神谷は続ける。


---


「俺さ」


---


「昔、病院でボランティアしてた」


---


ひよりの目が見開かれる。


---


「そこに、お前の父親がいた」


---


静寂。


---


「最後の方、ずっと笑ってたよ」


---


神谷の声は優しかった。


---


「“娘に心配かけたくない”って」


---


ひよりの呼吸が止まる。


---


相沢も動けない。


---


神谷は少しだけ目を伏せる。


---


「俺はただの他人だったけど」


---


「それでも覚えてる」


---


少し間。


---


「いい人だった」


---


ひよりの目から涙が落ちる。


---


でも今度は。


---


さっきとは違う涙だった。


---


悲しみと。


---


少しの安心が混ざった涙。


---


ひよりは小さく言う。


---


「そっか」


---


「ちゃんと……いたんだ」


---


その言葉に。


---


相沢は思う。


---


人は消えない。


---


記憶の中に残る。


---


写真の中に残る。


---


そして。


---


誰かの言葉の中にも残る。


---


ひよりはアルバムを抱きしめる。


---


そして初めて。


---


静かに笑った。


---


それはもう。


---


“作られた笑顔”じゃなかった。


---


## 第11話 終わり


---


次はかなり重要回


### 第12話「選択」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ