# 『僕の友達はAIだったけど、君に出会って壊れた』 ## 第11話 「見せてはいけなかったアルバム」
# 『僕の友達はAIだったけど、君に出会って壊れた』
## 第11話 「見せてはいけなかったアルバム」
屋上での夕焼けのあと。
ひよりは少しだけ元気を取り戻したように見えた。
けれど、それは“戻った”というより、“揺れたまま立っている”感じだった。
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数日後の放課後。
写真部の部室。
ひよりはいつも通り机に座っていた。
カメラをいじっている。
相沢恒一は、その隣にいることが当たり前になりつつあった。
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「相沢くん」
ひよりがぽつりと言う。
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「ん?」
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彼女は少しだけ迷ってから、机の下から小さな箱を取り出した。
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「これ、見てほしい」
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相沢は固まる。
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「なにそれ」
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ひよりは軽く笑う。
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「アルバム」
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その言葉だけで、空気が少し変わった。
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「いいのか?」
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ひよりは少しだけ間を置いて頷く。
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「うん」
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「たぶん、誰かに見せるの初めて」
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その言い方が、少しだけ怖かった。
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箱を開ける。
中には分厚いアルバム。
少し古い。
丁寧に扱われているのが分かる。
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ひよりがページを開く。
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そこには。
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写真。
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幼いひよりと、父親。
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笑っている。
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公園。
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海。
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クリスマス。
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どれも普通の家族写真だった。
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でも。
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ページをめくるたびに、空気が変わる。
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最後の方。
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父親が病院のベッドにいる写真。
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それでも笑っている。
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ひよりの手が少し震える。
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「これね」
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「最後の頃」
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相沢は息を止める。
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ページの端に、手書きの文字。
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『ひよりへ』
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それだけで胸が詰まる。
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ひよりは小さく言う。
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「これ見つけた時さ」
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「頭おかしくなりそうだった」
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相沢は何も言えない。
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ひよりは続ける。
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「でもね」
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「怒れなかった」
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少し笑う。
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「だってさ」
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「この人も、笑ってたから」
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その言葉が重い。
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相沢はようやく言う。
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「なんで誰も教えてくれなかったんだろうな」
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ひよりは少しだけ首を振る。
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「お母さんも辛かったんだと思う」
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沈黙。
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アルバムのページを閉じる。
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ひよりは小さく息を吐く。
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「ねえ相沢くん」
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「うん」
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「私さ」
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少し間。
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「本当はずっと怖かった」
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相沢は顔を上げる。
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ひよりはカメラを握りしめている。
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「笑ってないと嫌われる気がして」
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「本音言うと壊れる気がして」
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声が震える。
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「でも」
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彼女は相沢を見る。
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「最近ちょっとだけ違う」
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相沢は息を飲む。
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「君といると」
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「壊れない気がする」
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その一言は。
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まっすぐだった。
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まっすぐすぎて。
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相沢の心に刺さった。
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そのとき。
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扉が開く。
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神谷 恒一。
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一瞬で空気が固まる。
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「悪い」
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神谷は少しだけ気まずそうに言う。
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「忘れ物」
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しかし視線はアルバムに向かっていた。
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そして一瞬。
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ひよりを見る。
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その目が。
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いつもと違っていた。
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神谷はゆっくり言う。
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「それ、見たのか」
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ひよりは頷く。
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「うん」
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沈黙。
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神谷はアルバムを見つめる。
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そして。
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静かに言った。
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「……俺も、知らなかった」
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ひよりが驚く。
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「え?」
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神谷は少し笑う。
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でも悲しい笑顔だった。
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「お前の父親のこと」
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「俺も、ちゃんとは知らなかった」
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空気が止まる。
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相沢は気づく。
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神谷とひよりの間には。
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まだ語られていない過去がある。
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神谷は続ける。
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「俺さ」
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「昔、病院でボランティアしてた」
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ひよりの目が見開かれる。
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「そこに、お前の父親がいた」
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静寂。
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「最後の方、ずっと笑ってたよ」
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神谷の声は優しかった。
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「“娘に心配かけたくない”って」
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ひよりの呼吸が止まる。
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相沢も動けない。
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神谷は少しだけ目を伏せる。
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「俺はただの他人だったけど」
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「それでも覚えてる」
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少し間。
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「いい人だった」
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ひよりの目から涙が落ちる。
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でも今度は。
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さっきとは違う涙だった。
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悲しみと。
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少しの安心が混ざった涙。
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ひよりは小さく言う。
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「そっか」
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「ちゃんと……いたんだ」
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その言葉に。
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相沢は思う。
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人は消えない。
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記憶の中に残る。
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写真の中に残る。
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そして。
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誰かの言葉の中にも残る。
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ひよりはアルバムを抱きしめる。
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そして初めて。
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静かに笑った。
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それはもう。
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“作られた笑顔”じゃなかった。
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## 第11話 終わり
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次はかなり重要回
### 第12話「選択」




