叔父の告白
帰宅したエリアスとターシャを待っていたのは、フェルネスだった。
彼は皇帝の護衛を務めており、公爵家で寝起きしている。
いわば半ば居候のような立場である。
薄い金髪。
水色の瞳。
耳の上で切りそろえられた髪。
細身だが非常に長身で、整った顔立ちをしている。
「遅かったな……」
フェルネスは肩をすくめた。
「まあ、場面は見ていた」
その指先には、小さな黒い蝶が止まっていた。
フェルネスは軽く息を吹きかける。
蝶は煙のように消えた。
「まさか皇后陛下が、いきなりターシャを我が子宣言するとは想定外だった」
「いったいどういうことだ、フェルネス」
エリアスが紫の瞳で鋭くにらみつける。
ターシャは不安そうに二人を見上げた。
どちらも長身のため、小柄なターシャには表情までは見えない。
「ターシャは公爵様たちのところへ行っていなさい。私はそなたの父上と話をせねばならぬ」
「おじさまは……私を帝国へ行かせたいの?」
フェルネスの口ぶりから、ターシャはそう感じ取っていた。
フェルネスはターシャを見下ろす。
水色の瞳がまっすぐターシャを射抜いた。
「ああ。そなたは血のつながった身内がいる帝国で育てられた方がよい」
静かな声で言う。
「今まで義兄上や公爵夫妻の好意に甘えて、そなたを任せきりにしてしまった。
血のつながった実の叔父として、申し訳ない限りだ」
――血のつながった。
その言葉が胸に落ちる。
「やはり……そうだったのですね」
ターシャは静かに言った。
「私はエリアスお父様の子ではなかったのですね」
「そうだ。だが不義の子というわけではない」
フェルネスは続けた。
「その時点で義兄上と姉上は離婚していた。そしてそなたの実の父親とは正式な夫婦だった。ただ、そなたの実の父が戦死してしまい、婚姻許可の書類が無効になってしまったのだ」
「では……なぜお父様は私を引き取ったの?」
ターシャの声は震えていた。
「娘じゃないのに」
エリアスが重い口を開く。
「ロザーリアが大好きだった。友人としてな」
少し間を置く。
「そなたにはまだわからぬだろうが、そういう関係もあるのだ。
……だが私は、そなたを本当の娘だと思って育ててきた。それは両親も同じだ」
そしてゆっくり言った。
「本当の父親のことは、まだ聞くな。もっといろいろはっきりしてから話す。想定外のことが起きすぎた」
フェルネスが続ける。
「とにかくこれからは大人の話だ。そなたは祖父母様のところへ行きなさい」
フェルネスは使用人に合図を送り、ターシャを別室へと連れていかせた。
フェルネス、居候なのですが・・・偉そうです
使用人に合図を送ったのはフェルネスで間違いないです
ついでに、フェルネスが髪を短くしているのは女性と間違えられないためです(内緒の補足)




