祝福の光
「本当におきれいでございます」
マーサとマリアは涙を流した。
アストリアから、かつてロザーリアが着たというウェディングドレスが届いた。
クラリスとはサイズが合わなかったが、お針子たちが腕を振るい、見事に仕立て直したのである。
「本当にきれい……ずっと眺めていたい、抱きしめたい」
シャローヌも感激していた。
そのシャローヌも、かつてロザーリアが着ていたというドレスを身につけていた。
「亡きロザーリアのドレスを着て、ロザーリアと共にある気持ちで祝いたい」
そんな思いからだった。
「そのドレス、なぜか胸の辺りに綿が詰まっていました……。それを取り除いたら、ほとんどシャローヌ様とサイズがぴったりでした」
と、ローザが不思議そうに言う。
「それ、絶対にフェルネス様の前で言ったら駄目ですからね」
シャローヌがローザに釘を刺した。
皇帝陛下と皇后陛下が部屋に入ってきた。
「さすがは我が娘。何と美しい。カイレス殿も惚れ直すであろう」
皇帝が目を細める。
皇后陛下の目は赤かった。
「来た時はあんなに小さかった娘が……」
「そなたは嫁いでも、ずっと私の妹だからな。いつでも帰ってくるがいい」
皇太子が言った。
「お父様、お母様、お兄様、お姉様。今日の日までお世話になりました。ありがとうございました」
クラリスの目にも涙が光る。
「これこれ、花嫁が泣いてはなりませぬ」
護衛をしていたジュリアンヌが、そっと涙を拭った。
「お時間でございます。両陛下、両殿下はお席にお付きください。クラリス様はこちらへ」
アストリアの女官が姿を見せ、クラリスの手を引いた。
アストリアの神殿は帝国のものよりやや小ぶりではあったが、造りはほとんど同じだった。
入り口にはカイレスが待っていた。
王太子の正装が実によく似合っている。
カイレスはクラリスを見ると目を細め、微笑んだ。
「さあ、行こう」
二人は手を取り合い、神殿の中央を進んでいく。
両側の席には各国の関係者たちが座り、二人を見守っていた。
その中には、正装をしたエルドリアの王太子夫妻とフェルネスの姿もあった。
「あの小さかった方が……」
王太子妃は涙を止められなかった。
王太子の瞳もうるんでいる。
フェルネスは表情を変えず、静かに二人を見つめていた。
二人は中央まで進み、祭壇の前――あの龍の銅像の前に立つ。
「この度、この国に新しい王太子妃が来た。皆の者、よろしく頼む」
カイレスが声を上げた。
そしてクラリスの手を取り、二人一緒に例の透明な板の上へ手を重ねた。
銅像が光り輝く。
七色の光が放たれ、その光は神殿の中いっぱいに広がり、集う人々の頭上へと降り注いだ。
「何と美しい……」
神殿の中は感動に包まれた。
そして歓声が上がる。
「新しい王太子妃殿下、ばんざい!」
神殿いっぱいに歓喜の渦が巻き起こった。
その後、場所を移し、二人の披露宴と祝宴が催された。
人々は喜びの杯を交わし、その場はとても華やかでにぎやかだった。
クラリスとカイレスは壇上の中央に座り、来賓たちから順に祝福の挨拶を受けていた。
やがてエルドリアの番が来る。
しかし、そこにフェルネスの姿はなかった。
「叔父上は?」
カイレスがこっそりと王太子夫妻にささやく。
「それが、途中でいなくなってしまいまして……。直前までは確かにいらしたのですが……」
「まあ、叔父様はお酒に弱いですから……」
クラリスが微笑む。
「そうなのか。叔父上とはいつでも会えるから、まあよい」
カイレスも笑った。
その様子を見ていた一人の背の高い女性が、こっそりと会場を抜け出したことには、誰も気づかなかった。
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