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皇女の帰還 ―約束の耳飾り―  作者: 鶴見 日向子


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エピローグ

フェルネスは祝いの席を抜け出し、飛竜に乗って、シャローヌが破壊した屋敷の跡地へ降り立った。

すでに撤去は終わり、そこはただの更地になっている。


フェルネスはその中心あたりに腰を下ろし、ゆっくりと辺りを見回した。


すると、さまざまな思い出が頭の中に浮かび上がってくる。


姉の嫁入り。

エリアスとの出会い。

そして、エリアスの秘密を知った時の衝撃。


カトリーナの事件。

カイレスの誕生。

姉とエリアスの離婚。

姉とクラウスの結婚。

クラウスの戦死。

ターシャの誕生。

姉の死。


エルドリアを追い出され、孤児院の近くの村人に紛れて働いた半年間。


それを、孤児院にいたターシャと共に救い出してくれたエリアス。


ターシャの帝国への旅立ち。

皇帝一家との出会い、そして別れ。

クラリスの成人。

魔獣討伐。

クラリスの危篤。


そして――今日。


さまざまな思いが、胸の中を静かに巡る。


フェルネスは草の上に仰向けに寝ころび、空を見上げた。


「姉上、クラウス兄上。見てくれていますか? 二人が、とうとう結婚しましたよ」


フェルネスの目から、静かに涙がこぼれ落ちた。


「あーら、フェルネス。泣いているの?」


突然、エリアスが顔を覗き込んできた。


「泣いてなどおらぬ」


フェルネスは慌てて拳で涙をぬぐう。


「祝宴を抜け出したら駄目じゃない。花婿と花嫁の大事な人なのに」


「酒が苦手で……飲まされそうなので逃げた」


「あら、そうなの? すごく飲める口だと思っていたわ」


「勝手な推察はやめてくれ……義兄上だって飲めないではないか」


「おほほ。考えることが同じだったわけね」


エリアスはフェルネスの横に寝ころんだ。


「いろいろなことがあったわ……。あなたはいろいろ頑張ってきた。ロザーリアもきっと感謝していると思うわ。クラウスも」


「私は別に感謝などいらぬ。ターシャが、ただただかわいかっただけだ。私の方が、あの子にどれだけ救われていたかわからない。あの子がいたから生きてこられた」


「そうなのね。だけど、今日でそれはおしまいね」


「そうなのだな……」


二人はそのまま、青い空を見続けていた。


「フェルネス。私について、いろいろ思うところがあるのはわかっているけれど……私は今、とても幸せなの。本当の自分になることができたわ。偽らなくていい、本当の自分。人生でとても大切なことよ」


「あなたにも見つけてほしいわ。本当に自分のための幸せ。もう、自分以外の人のためだけに尽くす人生は卒業してもいいと思うの。あなたは本当によくやってきたわ」


「私に、そのようなものがあるのか……」


「あるわ。絶対ある。必ず見つけなさい。人の幸せを作ってきたあなたが、見つけられないわけがない」


フェルネスは無言で空を見つめたまま、しばらく考えていた。


やがて――


「わかりました。これから、それを見つける努力をしたいと思います」


エリアスは起き上がり、微笑んだ。


「努力なんて必要ないの。自分が進みたいと思う道を進めばいいの。必ずそこにあるわ」


フェルネスもゆっくり起き上がる。


空を見上げながら言った。


「そうなのですね……私も見つけられるといいのですが……」



「すぐに旅立ちなさい。そうじゃないとあなたはいつまでも自由になろうとしない

2人のためにも離れた方がいいわ。

あなたが側にいたら、あの子たちはいつまでも頼ってしまう」


フェルネスは黙り込んだ。


「……姉上は」


「ロザーリアなら笑って送り出すわ」


エリアスはそう言って微笑んだ。


エリアスはフェルネスの背中の汚れを払うと、そっと肩に手を置いた。


フェルネスは立ち上がった。


「かつて、自由に世界を旅したいと願っていた自分を思い出しました」


その目は決意に満ちていた。


「そうなさい。そして、いつでも帰ってきなさい。

あなたには迎えてくれる場所があるのだから。

それは、あなた自身が築いた宝よ」


「はい、義姉上」


フェルネスは腕を上げ、飛行魔獣を呼び寄せた。


「皆の者には、義姉上から適当に伝えてください」


「いってらっしゃい。きっと見つかるわ」


「はい」


フェルネスは大空へ舞い上がった。


やがて、その姿は空の彼方へ消えていった。


「さて……私もそろそろ会場に戻りましょうか。

私も背中の汚れを払ってもらってからにすればよかったわ」


やわらかな風が木々を揺らす。


「またね」


そう言って、エリアスは飛竜に乗り、城へ戻っていった。


ここまで読んでくださりありがとうございました。

「皇女の帰還ー約束の耳飾りー」本編はこれにて完結です。

実は、このエピローグ、一番最初に書いたエピソードです。ここから物語を書き始めました

本当のエピローグになって感無量です。


次は私の「あとがき」を入れさせていただきました


明後日から「番外編」をあげていきたいと思います

本編の補足や裏話を描きます

よろしくお願いいたします

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