表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
皇女の帰還 ―約束の耳飾り―  作者: 鶴見 日向子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/51

帰国の日

帰国の日になりました

一か月ほど経つと、クラリスはほぼ全快し、帝国へ帰ることになった。


「今まで本当にお世話になりました。この御恩は一生忘れません」


クラリスは深く頭を下げた。


「何を言っておる。ここはそなたの家だ。いつ戻ってきてもよいのだよ」


公爵が穏やかに言う。


「ありがたいお言葉でございます」


その間に、亡くなったと聞いていたエリアスお父様が女装して現れたのには、本当にびっくりした。

心臓が止まるかと思ったほどだ。


カイレスが言っていた「もっとすごい驚き」とはこのことか、と納得した。


フェルネスはただ、


「そういう人間もいるのだ。シャローヌ様が詳しそうだった。帰ったら聞くがよい」


と言うだけだった。


帰国の日、そのエリアスが現れ、クラリスに話しかけた。


「ロザーリアの代わりに、私があなたの母親になりたかったの」


その告白に、当時の父であったエリアスの必死さが思い出された。


「お父様が亡くなったと聞いて、何日も泣いたのですよ。フェルネス叔父様も泣いていました。あのフェルネス叔父様が、です。二人で抱き合って泣きました……」


「まさか、あのフェルネスが? 冗談でしょう?」


「私はあんな叔父様を見たのは初めてだったので、驚きました。嘘ではありません」


「まあ……フェルネスが私のために泣いてくれたなんて。うれしいわね。だけど今の私を見て『あの時の私の涙を返せ』とか思っていそう……」


「でも、生きていてくださったなんて……うれしいです。これからは何とお呼びすればいいですか?」


「そうねえ……今はエリスと呼ばれているの。エリスおばさまと呼んでほしいわ」


「わかりました。エリスおばさま。大好きです」


クラリスは抱きついた。


「ありがとう。気持ち悪がられるとばかり思っていたわ」


「そんなことはありません。男か女かである前に、どんな人間であるかの方が大切だと思います。おばさまは素敵な方です」


「ありがとう。あなたと暮らせた二年間、本当に幸せだったわ」


「私も、です」


その様子を、迎えに来た皇太子が少し離れた場所から見ていた。


彼もすでに回復しており、クラリスと二人そろって帰国することになっていた。


「シャローヌから少し聞いていたが……私にはどうも受け入れがたい。挨拶はしたい。だが、あまり近くに行きたくないのだ……」


皇太子は小声で言う。


「それが普通でございます。私も正直、理性では理解できるのですが、生理的には厳しいです」


そばにいたフェルネスが答えた。


「でも、そなたは知っていたのであろう?」


「ええ。皇太子妃殿下があの屋敷を破壊してくださって、私は正直ほっとしました。あそこは姉上とエリアス義兄上の秘密の場所で……。私は見たくもないものを見せられました……」


フェルネスが遠い目をする。


「そなたなら……とにかく、あの体格でのドレス姿は……少々見るに……やめておこう」


皇太子は言葉を濁した。


「なぜか皆さんは私の女装を見たがりますが、まったく似合いません。姉上が亡くなったすぐ後、あまりにクラリス様が母親を恋しがられていたので、侍女に促されて――」


フェルネスは肩を落とした。


「『顔がそっくりだから、女装したら母と思ってくれるのでは?』と言われましてね……」


「それで?」


皇太子が恐る恐る聞く。


「あの子を慰めたい一心で、姉上のドレスを着て、侍女に化粧をしてもらい対面しました」


フェルネスはため息をつく。


「ターシャと、当時まだ国に残っていたカイレスに『気持ち悪い』と号泣されました。さらにターシャはショックで引きつけを起こしてしまいました。幸い、記憶には残っていないようですが」


「そ、それは……そんなことが……」


皇太子は目を見開き、思わず口を押さえた。


「なので、エリアス義兄上には、くれぐれもターシャの前で女装はしないでくれと頼み込みました。そうしたら反動だったのか、血の気の多い父親のようになってしまって……」


フェルネスは少し笑った。


「クラリス様の背が伸びた時、姉上やあの時の私のようになるのではと心配で……。女性らしくなってくれて、本当によかったです」


「クラリスの成人の舞踏会での、そなたとのダンスはとてもよかったぞ」


皇太子が言う。


「まさか、私を指名してくださるとは……正直、とてもうれしかったです」


フェルネスも思い出したように微笑んだ。


「あの者がカイレス殿か?」


エリアスがその場を去ったあと、背の高いたくましい銀髪の若い男がクラリスと話し始めていた。

フェルネスの女装話は番外編にて投稿予定(6月12日0時公開)です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ