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皇女の帰還 ―約束の耳飾り―  作者: 鶴見 日向子


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王太子と皇女

あれから、カイレスとフェルネスは三日間眠り続けた。


「いろいろ安心されたのでしょう」


公爵夫人は二人、特にフェルネスが眠り続けていることに胸が熱くなった。


「あれほど警戒心の強い方が……我が家を安心できる場所だと思ってくださっているのですね」


公爵夫人の目に涙が光る。


三日後、目を覚ました二人はその事実を知り、慌てて起き出してきた。


「いいのですよ。当時に戻られたようにくつろがれたのなら、それでよろしいのです」


侍女も笑いながら言った。


それから一週間ほどが経った。


クラリスはようやく起き上がれるようになっていた。


「フェルネス様と王太子様がお会いしたいそうです。お通ししてもよろしいでしょうか?」


公爵夫人がクラリスのベッドの横に座り、やさしく告げる。


「王太子も、ですか?」


クラリスの顔が曇る。

別れ際に「チビ」と言われたことを思い出したのだ。


「気は進みませんが、落下した時に救い出してくださったのは王太子殿下と伺っております。お会いいたします」


間もなく、普段着の二人が部屋に入ってきた。


「顔色がよくなって本当によかったです。クラリス様」


フェルネスが微笑む。


「ここでクラリス様はやめて。叔父様に戻って!」


「わかりました、クラリス様。……いや、ここではターシャと呼ぼうか?」


フェルネスがカイレスの方をちらりと見て、ふっと笑う。


「えっ?」


カイレスは目を見開き、固まった。


同席していた公爵夫人とフェルネスは、顔を見合わせて微笑む。


「あ、王太子様がご一緒でしたね。今回は私を助けていただいたそうで、ありがとうございます」


そう言いながら、クラリスは不思議そうな顔をする。


「叔父様、王太子殿下ってこのような長身でしたかしら?あの後、背が伸びられたの?お顔立ちも記憶とは違うような……」


クラリスはひそひそとフェルネスにささやく。


「そなたも気が付いていなかったのか!」


フェルネスが驚いた。


公爵夫人も意外そうな顔をする。


カイレスは口をぱくぱくさせながら、クラリスを見つめた。


「ターシャ?そなたがターシャ?確かに髪色と瞳の色は同じだが……あの小さかったターシャなのか?」


「それをおっしゃるのでしたら、私も言わせていただきます。あれから背が伸びましたの。もう『チビ』ではございませんわ。飛行魔獣にも乗れるようになりましたもの。殿下もずいぶん背が伸びましたのね。たくましくなられましたが、瞳の色と髪の色はお変わりありませ――」


言いかけて、クラリスはじっとカイレスの瞳を見つめる。


「瞳の色……濃くなられました?」


「元からこの色だよ」


クラリスとカイレスは、しばらく見つめ合った。


「種明かしだ」


フェルネスが静かに言う。


「クラリス皇女殿下。元の名前はターシャ。皇女になられた時に名前をクラリスと変えられた」


そしてカイレスの方を指す。


「こちらは今の王太子、カイレス殿。前の王太子は魔獣討伐への参加を拒否した。代わりにカイレスが王太子として出撃したのだ」


「無事に帰還できた際には前の王太子は廃太子となり、代わりにカイレスが立太子するという話だった。そしてこうして帰還できた。次期王太子はカイレスだ」


「ま、まさか……ターシャが騎士になっていたなんて。帝国に引き取られたとは聞いていたが、あの体格では騎士になることはないと思い込んでいた」


「奇跡的に背が伸びたのです……。本当にカイレスお兄様なのですか?次期王太子?私は、お父様亡きあと公爵家を継がれたものだと思っていました……」


フェルネスと公爵夫人は目配せをした。


「あとは二人で話しなさい。私はまだ疲れているので退席させてもらう」


フェルネスが言う。


「ターシャも疲れたらすぐ休みなさい」


そう言って、フェルネスと公爵夫人は部屋を出て行った。

長かった~~♪この再会劇を楽しみに書いてきました

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