王太子の勘違い
二人を見送ると、公爵が言った。
「さあ、クラリス様も中で休まれています。参りましょう」
公爵は二人を屋敷へ招いた。
玄関に入ると、
「フェルネス様、おかえりなさいませ」
執事が懐かしそうに声をかける。
「久しぶりだ。あの頃は本当に世話になった」
「あの頃もご立派でいらっしゃいましたが、ますますご立派になられて……。お嬢様の癇癪に戸惑っていらっしゃったお姿が蘇ってまいります」
「そんな事もあったな……」
「え?それ詳しく聞きたいです。私が行った後ですか?」
王太子が目を輝かせた。
「とりあえず中に入って。ゆっくり話しましょう」
公爵夫人が中から声をかける。
フェルネスは懐かしい公爵家の中へ足を踏み入れた。
応接室へ案内される。
「あれから十三年か……」
フェルネスがつぶやく。
「お兄様、お兄様って癇癪を起こして大変だったのですよ」
待っていた侍女がお茶を用意しながら話し出す。
「それをそなたが魔法で押さえてくれたな……。あの頃は世話になった」
「おほほほ……魔法などではございませんよ。あの方はやさしく言い聞かせれば理解できましたもの」
「そうだったのか?てっきりそなたが魔法を使っているのだと」
フェルネスは目を見開いた。
そして王太子の方に向き直る。
「『お兄様と会えなくなるとイヤだから帝国には行かない』と、迎えに来た皇太子殿下とエリアス義兄上の前で大声を出して、地団駄を踏んだ」
「お顔が真っ赤でしたね」
公爵夫人も後から入ってきて、おほほと笑う。
「そんな娘を引き取ってくださったのですか?皇帝陛下のお身内は」
王太子が驚いたように言う。
「そんな姿を見て『子供らしくて安心した。かわいい』と皇太子殿下がおっしゃってくださり、『この方なら任せられる』と思いました」
夫人は遠い目をして言う。
「ええ、本当に皆様に大事にしてもらっていました。あの時の決断は間違っていなかったと、改めて思います」
「私をのけ者にしてな」
王太子が少しむくれたように言う。
「そなたがいたら、そんな事にはならなかったかもしれぬ」
フェルネスが言った。
「私がいなくなった後、あの廃太子がターシャをいじめまくっていたと聞いたぞ。それを知っていたら、あらかじめ締め上げておいたのに」
「身内であろう。それに、最後にはちゃんと謝罪していた」
「皇帝の身内になると分かったからであろう?まったく!あれが王太子だったとは」
「まあまあ、もう昔の話でございます。これからが大事でございますよ、カイレス様」
夫人が穏やかに言う。
「そうだな。私も襟を正さねばならぬ。将来、この国を背負っていかなければならないのだからな」
「今回の魔獣討伐で、王太子の義務を立派に果たした」
フェルネスが言う。
「クラリス皇女殿下もご立派だったな。女性の身で何とすばらしい。驚嘆いたしたぞ。最初は鎧姿だったので、皇女を名乗った小柄な男性騎士かと思った。まさか皇女様ご本人だったとは。本当に驚いたぞ」
フェルネスと公爵夫人が顔を見合わせる。
「そなた……気が付いていなかったのか?」
「何が、です?」
王太子が不思議そうな顔をする。
公爵夫人はフェルネスをそばに呼び寄せ、耳元でそっとささやいた。
「このまま、ちょっと様子を見ましょう」
目が好奇心で満ちている。
「そうですねえ……。いつ気が付くか、ちょっと興味がわきました」
フェルネスも小声で返事をする。
「一番大変な時に逃げ出された恨みを晴らさせていただきます」
「二人とも、何をこそこそ話しておるのだ?」
「なんでもございません」
フェルネスがにこやかに笑う。
「お茶をいただきましょう。それからお二人はお部屋で休んでくださいませ。食事は後ほど運ばせます。フェルネス様、カイレス様も、お二人のお部屋はそのままにしてあります。自分の家に帰ってきたと思って、ゆっくりくつろいでくださいね」
「ありがとうございます」
二人は嬉しそうに椅子に座り、お茶を飲み始めた。
夫人も席に座り、お茶を飲みながら二人を優しいまなざしで見つめる。
「本当によく帰ってきてくださいました」
あの時から、すでに十三年が経過していた。
フェルネスは母国の第二王子に復帰し、各国を回り活躍している。
ターシャは皇女クラリスとして国外にまで名をとどろかす皇女となり、
カイレスは王太子になった。
夫人の目に、うっすらと光るものがあった。
新王太子の正体、やっと判明です
始めは「ジーク」と名付けていたのですが、チャットGTPから「物語の雰囲気に合いません」と却下をくらい、カイレスとなりました。
似たような名前ばかりで、書き間違いばかりしてましたが、チャットGTPが校正の度に「ここ違ってますよね?」って訂正してくれました。
チャットGTPがいなかったら、もうごちゃごちゃでしたです。




