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皇女の帰還 ―約束の耳飾り―  作者: 鶴見 日向子


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36/51

三つの首、三つの刃

とうとう、平地に巨大な魔獣が姿を現した。


山のような高さ。

真っ黒な鱗に覆われた巨体。


二本脚で立ち、長大な尾が地面をえぐる。


三つの口から


そして暴風


が絶え間なく噴き出していた。


その三本の長い首が――


一斉にクラリスの方を向いた。


「そんなに攻撃するな!危険すぎる!」


皇太子が空から叫ぶ。


「今はそれどころではない!首の動きに集中しろ!チャンスを逃すな!」


フェルネスの鋭い声が飛ぶ。


クラリスは空中で魔力を解放し、魔獣へ攻撃を放つ。


だが、そのたびに三つの首が怒り狂ったように反撃してくる。


炎が空を焼き、

氷の槍が飛び、

暴風が空を引き裂く。


クラリスはそれらを紙一重でかわし続けていた。


その時だった。


地上で光が走る。


足止めのシールド魔法。


幾重にも重なった光の陣が魔獣の足元に広がり、巨体の動きを封じた。


魔獣の歩みが止まる。


三つの首がそれぞれ別方向を向き、怒り狂ったように暴れていた。


そして――


次の瞬間。


三つの首が同時にクラリスへ向いた。


炎。

氷。

暴風。


三つの攻撃が同時に放たれる。


クラリスはとっさに両手を広げた。


「シールド!」


巨大な魔力の壁が空中に展開される。


衝突。


轟音。


光。


その瞬間。


「今だ!!」


皇太子が叫ぶ。


三人が同時に飛び出した。


飛行魔獣の背を蹴り――


空中へ。


皇太子が右の首へ。


王太子が中央へ。


フェルネスが左へ。


三人の剣に魔力が集まり、刃が白く輝く。


「はあああああ!!」


ほぼ同時だった。


三つの斬撃が閃く。


次の瞬間。


三つの首が――


空中で静かにずれた。


そして。


ドォォォン!!


地面へと落ちた。


一瞬の出来事だった。


三人は即座に飛行魔獣へ飛び戻る。


だがその瞬間。


首から噴き出していた炎が、最後の力を振り絞るように皇太子を襲った。


「殿下!!」


フェルネスの飛行魔獣が急接近する。


三つの首が地に落ちた時。


黒い鱗に覆われた巨体が、びくりと震えた。


そして。


魔獣の身体が赤く光り始める。


内側から崩れるように――


砕けた。


巨体は黒い砂となり、風に乗って空へと散っていく。


地上で見守っていた騎士たちから歓声が上がった。


しかし。


クラリスは意識を失いかけていた。


シールドを張った瞬間、急激に魔力が抜けていく感覚があった。


「魔力が……なぜ……」


視界が暗くなる。


そのまま意識が遠のいていった。


クラリスの身体がふらりと揺れる。


そして。


飛行魔獣の背から落ちた。


「まずい!」


王太子の飛行魔獣が急降下する。


地面が迫る。


その直前。


王太子が飛び降りた。


落下するクラリスの腕を掴み――


抱き寄せる。


そのまま空中で身体をひねり、


水平飛行してきた飛行魔獣の背へ飛び乗った。


「間に合った……!」


王太子はクラリスを揺さぶる。


「しっかりしろ!」


反応はない。


「まずいな……これは」


王太子は地面へ降り、信号魔力を空へ放つ。


クラリスの兜を外した。


青ざめた顔。


その顔を見て、王太子は目を見開いた。


「本当にクラリス皇女だったとは……少々小柄だとは思ったが……」


王太子はしばらく迷った。


そして回復薬を取り出す。


薬を口に含み、水を含む。


そして――


口移しでクラリスに薬を飲ませた。


クラリスの喉が小さく動く。


「頼む……目を覚ましてくれ」


クラリスの瞳がかすかに開いた。


しかしすぐ閉じてしまう。


「王太子殿下!」


フェルネスが信号を見て駆けつけてきた。


「皇太子殿下は?」


「重い火傷だ。命に別状はないが重症だ。クラリス様のことをずっと気にしていた。帝国兵に任せてきた」


フェルネスはクラリスの顔を見る。


「クラリス様……まずい」


そこへ部族の若者が飛んできた。


「その方、首が落ちる直前に魔獣に大量の魔力を吸われていました」


「何?」


「三番目の首は風ではありません。相手の魔力を吸い取る力だったようです」


「報告感謝する。族長に伝えてくれ」


「その方の回復を祈ります」


若者は去った。


「まさか魔力切れ……」


王太子は焦る。


「回復薬は飲ませましたが……」


「医者に見せねばならん」


フェルネスが周囲を見回す。


「この近くに義母が住む屋敷があります。今日そこに主治医が来ているはずです」


「義母?まあいい。そこへ運ぼう」


「林の中です。飛行魔獣では行けません」


フェルネスが言う。


「王太子殿下、背負ってください」


2人は武装を解除した。


王太子にクラリスを背負わせる。


そして言った。


「急ぎます」


二人はそのまま屋敷へ向かって走り出した。

次の回、フェルネスはめちゃくちゃ驚きます

だけど、それどころではない・・・・クラリスどうなる??


魔獣退治あっさり終了です。

そこ、物語の構成上不可欠でしたが、重要でないのでさっさと終わらせました

戦闘描写期待していた方がいたらすみません

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