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不穏な気配 ― 南海から来る巨大魔獣 ―

いきなりここから雰囲気がかわります

さらに三年の月日が流れた。


グランディル帝国はすっかり内乱前の勢力を取り戻し、大陸でも中心的な役割を担う国家となっていた。


クラリスもすっかり成人した女性となり、主に皇太子と共に騎士として魔獣討伐に励んでいた。


三年前の舞踏会の後、クラリスには山のような求婚の手紙が届いた。

しかし皇帝は、そのすべてを断ってしまった。


「嫁には出さぬ。国内で釣り合う男を探し、帝国内に留める」


それが皇帝の下した判断だった。


だが現実には、普通の騎士よりはるかに強い魔力を持ち、剣の腕も優れるクラリスに釣り合う男など、なかなか見つからなかった。


そしてクラリス自身も、フェルネスや皇太子のような人物を見慣れてしまったせいか、普通の男性にはまったく興味を示さなかった。


「このままでは行き遅れてしまいます。真剣に相手を探すおつもりはあるのですか?」


皇后が眉を吊り上げ、皇帝に詰め寄る。


「実際問題、相手がおらぬではないか」


皇帝は肩をすくめた。


皇后は声を潜める。


「実は、アストリアのリラインド公爵に、クラリスに合いそうな孫がいるそうです。亡きエリアスとロザーリア王女の息子だとか」


皇帝も小声で返す。


「ばかな。父親違いの兄ではないか」


「それが……違うらしいのです。何やら事情があるようで……」


「ほう……事情によるな、だが公爵家ではつり合いがなあ・・・養子に来られるのなら・・」

「エリアス亡き後の1人きりの跡取りですから・・それは難しいかと・・・」

「ふむ・・・」


その時だった。


「陛下。皇太子妃殿下のご両親が面会を希望しております。至急とのことです」


エルモンドが門兵からの伝言を持ってきた。


「シャローヌの両親? あの、娘を置いたまま去った者たちか?」


「いかがいたしましょう」


「シャローヌの気持ちを聞け。許すと言うのであれば会おう」


その時、廊下の方で騒ぎが起きた。


「お待ちください。まだ面会の許可は――」


制止する声を振り切るように、慌ただしい足音が近づいてくる。

そして執務室の扉が勢いよく開いた。


「皇帝陛下。突然の訪問、誠に無礼をお許しください。しかし、どうしてもお伝えしなければならない重大な話があるのです」


シャローヌの両親はその場に跪き、深く頭を下げた。


初めて会った時とは、まるで別人のような態度だった。


「頭を上げてください。あなた方は我が国の皇太子妃のご両親です。以前と同じように接してくださって構いません」


「その節は大変失礼いたしました。てっきり娘は皇太子殿下の愛妾として迎えられたのだと思い込んでおりました。正式な皇太子妃にしていただけるとは夢にも思っておりませんでした。本当に感謝しております」


「シャローヌは素晴らしい皇太子妃だ。こちらこそ感謝している。それより、なぜそんなに急いで来たのだ?」


「お話を聞いていただけるのですね?」


「もちろんだ」


「実は――南の海の方から、巨大な生物の気配が大陸に向かって近づいてきているのです」


「南の海……? あの辺りは確かトリアノン王国だったな。エルモンド、地図を」


机の上に大陸全体の地図が広げられた。


「私どもの部族は、現在この辺りに拠点を置いております」


男は南端付近を指さした。


「まだ距離はありますが、非常に巨大な生物の魔力を感じ取ったのです。そして、それが徐々に大陸へ近づいてきております」


「トリアノンの国王には知らせたのか?」


「我々のような定住地を持たぬ部族と面会してくださる王族は限られております。門前払いでした」


「ふむ……。あそこは我が国ともあまり国交がないからな」


皇帝は地図を見つめながらつぶやいた。


「そんな巨大な生物が、陸に上がって移動できるのか?」


「分かりません。しかし過去には似た記録がございます。沖にあった島の村が、丸ごと消えたという話が……」


「それは……用心に越したことはないな」


皇帝は腕を組んだ。


「こちらでも対応を検討する。まずは監視のため飛行兵を派遣しよう。そなたたちの拠点と合流することは可能か?」


「問題ありません。我が一族でも、飛行魔獣で海を監視している者がおります」


「よし。これを持って行け」


皇帝は手のひら大の魔石を取り出した。

金色に淡く輝き、円を半分に切ったような形をしている。


「大陸内であれば通信できる。ただし、かなりの魔力を消費する。そなた達なら扱えるだろう」


「これは……便利な品でございます」


「エルドリアの技術と帝国の高性能魔石で作られた通信具だ。まだ数が少なく貴重なものだ。大切に扱ってくれ」


シャローヌの父は布に丁寧に包み、胸元へしまい込んだ。


「承知いたしました。それでは我々はすぐ戻ります」


「シャローヌには会っていかぬのか? 子供たちも大きくなっているぞ」


男は一瞬だけ目を伏せた。


「……今さら会わせる顔などございません。我々はあの子を置き去りにしました。この件が片付いた後、改めて許しを請いたいと思います」


「わかった。巨大生物の件、頼んだぞ」


「かしこまりました」


二人はすぐに部屋を後にした。


「こちらの階段から屋上へ出られます」


エルモンドが案内する声が廊下の向こうから聞こえる。


皇帝はしばらく黙っていた。


「……あの夫妻の様子、ただ事ではない」


そして小さくつぶやいた。


「嫌な予感がするな」

実はトリアノン国からもクラリスに求婚の申し出があったのを皇帝が回想する文章を入れたのですが、そこはチャットGTPに校正をしてもらったところ「必要なし」と判断されたのかカットされました

まあ、確かに場にそぐわないですよねー

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