表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/35

旅立ち ―呼び戻された第二王子―

月日が経ち、クラリスは十三歳になった。

時折、近くの魔獣討伐にも皇太子と共に参加するようになっていた。


「お二人が加われば、我々は必要ありませんね。フェルネス殿もおられれば最強です。どんな大型魔獣でも討伐できます」


騎士団長が笑う。


「そうだな……だが、クラリスもそろそろ年頃だからな……」


皇太子がつぶやいた。


母である皇后から、


「クラリスに異変があったら、すぐ知らせるように」


と念を押されていた。


さらに、


「必ず女性騎士を傍につけるように」


とも言われていた。


「背も充分お伸びになりました。飛行魔獣にも乗られるほどになられました。あの小さかったお方がここまで成長されるとは……まだ伸びますでしょうか?」


「そこだよ。我々男はクラリスくらいの年頃から成長し始めるが、女性は違うそうだ」


シャローヌからも、


「クラリスちゃん、そろそろ初潮がくるかもしれない。充分注意して」


と言われていた。


「女性騎士としては、あれだけ伸びれば充分だ。あまり背が伸びすぎると釣り合う男がいなくなる」


「そうですね……今くらいが女性としては良いのかもしれません。騎士としては、もう少し体格がある方が理想でしたが」


「クラリスは女性だ。それを忘れないでほしいな」


「失礼いたしました」


そんな会話が交わされてしばらく後、皇后とシャローヌの予想通り、クラリスは初潮を迎えた。


「なんだか……嫌な感じ……」


クラリスは腹部の鈍い痛みに耐えながら、ベッドに横になっていた。


「女性の宿命でございます。しばらくは安定しません。不定期だったり、痛みが強かったり、いろいろございます。月経と申しますが、それがないと子供を産めませんから」


「ふう……なんだか女って損な気がする」


「今の言い方、シャローヌ様にそっくりでございます」


マリアは温かい飲み物を差し出した。


「冷えが一番よくありません。お体を温めてください」


――その頃。


皇帝の執務室には、見慣れぬ軍服の男が立っていた。


フェルネスが呼ばれ、部屋に入る。


軍服姿の男を見て、フェルネスはわずかに目を見開いた。


「エルドリアの王太子からの使者だ」


「我が帝国とエルドリアに国交はありませんが……」


エルドリア国王――フェルネスの実父は、アストリア以外の国と直接国交を結ぶことを頑なに拒んでいた。


「フェルネスに話をしなさい」


皇帝が使者に告げた。


軍服の男はフェルネスに敬礼した。


「フェルネス第二王子殿下。国王危篤につき、至急帰国していただきたい。兄である王太子殿下からの要請でございます。お迎えにあがりました」


「待て。私はもうあの国を追放された身だ。今さら戻ることなどない。父のことなど考えたこともない。会ったことすらないのだ。そなたも存じておろう」


「兄である王太子殿下のこともお忘れですか?」


使者が静かに尋ねた。


「兄上は……違う。兄上のことは忘れてなどおらぬ」


姉と自分を陰で庇護してくれていたこと。

国を追放された自分を助けるため、父の目を盗んで手を回してくれていたこと。

そして――当時のターシャを孤児院から救い出すために動いてくれたこと。


それらはすべて、亡きエリアスから聞いていた。


「その王太子殿下の『フェルネス様に戻ってきてほしい』という願い、聞き届けていただけませんか。盟友だったエリアス公子が数年前に亡くなり、頼れる弟に帰ってきてほしい。自分を助けてほしいという王太子殿下のお気持ち、どうかご理解ください」


「フェルネス、とりあえず兄上殿のところへ行くがよい。話だけでも聞くべきではないか?血のつながった兄ではないか」


皇帝が言った。


「私が兄だったら、弟に会いたい。生きているのだから。私はもう、二度と弟に会うことはできない……私からも頼む」


皇帝が頭を下げた。


「皇帝陛下、おやめください」


フェルネスは深く息をついた。


「……わかりました。行くだけ行きます。しかし、すぐに帰ってまいります。私はずっとこの国で過ごしたいと願っております」


「そう言ってもらえるのはありがたい。私もそなたにはこの国にいてほしい。だが、そなたの兄上の気持ちも痛いほどわかる。そなたを帰さぬとなれば、私の面子も立たぬ。こうして迎えまでよこしているのだ。これは命令だ。帰りなさい」


フェルネスはしばらく無言だった。


「フェルネス第二王子殿下。ご決断ください」


使者が懇願するように言った。


「……わかった。一時的に帰国する。第二王子と呼ぶのはやめてくれ」


フェルネスは皇帝に向き直る。


「ご命令により、これよりエルドリアに出向いたします」


「王太子殿下によろしく伝えてくれ。早く発つがよい」


「はっ」

なんか皇帝陛下の気持ちが切ないです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ