新しい観測対象2
続いて長め。新しい子の登場か?
カウントは、容赦なく減り続けていた。
00:03:41
数字が減るたびに、呼吸が浅くなる。
何が起きるのか分からない。
どこで起きるのかも分からない。
ただ一つ確かなのは、
これまでとは違う“何か”が始まるということだけだった。
部屋の時計を見る。
スマホの表示と、数秒ずれている。
いや、違う。
時計の方が遅れている。
「……またかよ」
もう珍しくもない。でも、今はそれどころじゃない。
俺はスマホを握ったまま、部屋を飛び出した。
外に出た瞬間、空気の重さが変わった。
夕方のはずなのに、妙に静かだ。
風も弱く、人の声も遠い。
まるで、音が一枚フィルターを通して届いているような。そんな感覚。
00:01:52
残り、二分を切る。
「どこだよ……」
走りながら、周囲を見渡す。
交差点。コンビニ。バス停。
どこも、いつも通りに見える。
――ピコン。
カウントとは別の通知が、突然割り込んだ。
《観測対象:特定》
心臓が、強く鳴る。
同時に、視界の端で何かが引っかかった。
バス停のベンチ。
一人の少年が座っている。
見覚えは、ない。
でも、目が離せなかった。
周囲の景色が、わずかに“にじんで”いる。
まるで、そこだけ解像度が低いみたいに。
(影。)
ただの直感。そうであって欲しくない。ただ、時間は迫っている。
00:00:38
足はここを離れるなとばかりに固まっている。。
あれが、対象?
いや、でも。
ただ座っているだけ。
何も起きていない。
そう、何も――
00:00:12
少年が、ゆっくりと顔を上げた。
視線が、合う。
その瞬間、背筋が凍る。
目が合ったのに、
「見られている感じ」がしない。
ガラス越しに覗いているみたいな、空虚な視線。ゲームのような「ここじゃない」どこか。
――ピコン。
00:00:03
世界が、わずかに歪む。
音が消える。
色が薄れる。
00:00:00
何かが、“始まった”。
次の瞬間、景色が跳ねた。
バス停の前を、トラックが通り過ぎる。
ブレーキ音。叫び声。
そして。
少年の姿が、視界から消えた。
「……は?」
遅れて理解が追いつく。
今のは。事故だ。
でも、違う。
何かが、おかしい。
俺は反射的に駆け出す。
トラックは止まっている。
運転手が慌てて外に出てくる。
周囲の人も集まり始める。
衝撃音はあった。車も凹んでいる。
でも。
「……いない」
どこにもいない。
ぶつかったはずの少年の姿が、
最初から存在しなかったみたいに消えている。
ただ、現実だけが“事故を起こした”形になっている。
スマホが震える。
恐る恐る、画面を見る。
《観測完了》
それだけだった。
喉の奥が、ひりつく。
「……なんだよ、これ」
事故は起きた。
“対象”はいない。ただ、“観測”は完了している。
じゃあ、今見たものは何だ?人か。それとも他の何かか。
人のざわめきが広がる中で、
俺だけが取り残されたように立ち尽くす。
そのとき。
背後から、声がした。
「初めて見たでしょ」
振り返る。
白髪の綺麗な少女が、そこに立っていた。
ヒロインじゃない。観測対象、でもない。
はるなでもない。
でも。
どこか、同じ“側”の気配がした。
「今のはね」
少女は、まるで説明するみたいに言う。
「“回収”だよ」
心臓が、嫌な音を立てる。
「回収……?」
「うん。いらなくなった世界線とか、矛盾した存在とか、そういうの」
軽い口調。
でも、言っていることは、理解したくない内容だった。
「さっきの子はね」
少女は、バス停の方を指差す。
「もう存在しちゃいけない人だった。元々は人だったということね。」
主人公の中で、何かがはっきりと繋がる。
自分も。
同じ側に、いる。
スマホが、再び震えた。
《次の観測準備》
止まらない。
終わらない。
これは、まだ始まりに過ぎない。
続きへどうぞ。
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