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次の観測対象

1ヶ月以上空いてしまってすみません!

続き再開するので、時間がある時にどうぞ〜

(今回のは、だいぶ長いですが、一文一文は短いので、飽きないことを祈ります。)

光が消えたあとも、しばらく何も見えなかった。

 さっきまで確かにそこにいたはずの彼女は、跡形もなく消えている。

 風も音も、現実感も、一瞬で薄くなったような気がした。


「……はるな?」


 呼んでも、返事はない。


 自分の声だけが、やけに軽く響いた。


 膝が笑っているのが分かる。

 立とうとしても、力が入らない。


 “触るな”

 あの言葉が、頭の中で何度も繰り返される。


 本当に触れていたら、どうなっていた?

 その「あの人」に会えたかもしれない。


でも、、、

 本当に、消えていたのか?


「……ふざけんなよ」


 やっとのことで絞り出した声は、怒りとも恐怖ともつかないものだった。


 ただやりきれない。何もできない自分が何者になるべきか分からなかった。


 分からないことが、多すぎる。


 通知の理由。

 世界線の仕組み。

 あの人。先生。くじ。


 そして何より――


 自分が、消えかけている理由。


 ゆっくりと立ち上がる。

 足元が、少しだけ軽い気がした。


 気のせいだと、思いたかった。


 ポケットの中で、スマホが震えた。

 反射的に取り出す。


 《観測対象の分離を確認》


「……分離?」


 意味が分からない。


 だが、さっきの会話を思い出す。


 “君が移動しているだけ”

 “影を残していかなければいけない”


 つまり。


 ここにいる自分は、

 どこかに“本来いたはずの自分”を置いてきている。


 それが、影。


 それが、気配。


 それが、消えていく原因。


 喉の奥が乾く。


「……じゃあ、今の俺って何だよ」


 答えは返ってこない。


 そのまま、ふらつく足で家まで帰った。

 玄関のドアを開ける。

 いつもの匂い。いつもの空気。


 なのに。


 “帰ってきた感じ”がしない。


「ただいま」


 声を出す。


 母親の返事が、奥の部屋から聞こえた。


「おかえりー!手洗ってらっしゃい。」


 いつも通りの声。

 安心するはずなのに、どこか遠い。


 靴を脱ぎながら、ふと違和感に気づく。


 玄関に置かれているはずの自分のスニーカーが、

 微妙に違う位置にある。


 いや、それだけじゃない。


 部屋に入ると、机の上の配置も、

 本棚の並びも、

 ほんの少しだけ違っている。


 意識しなければ気付かない。


「……なんだよ、これ」


 昨日までの“自分の部屋”じゃない。


 似ている。

 でも、完全には一致していない。


 ――世界は変わっていない。


 彼女の言葉が蘇る。


 自分が移動しているだけ。


 つまり、ここは。


 “少しだけ違う、自分の世界”。


 机の上にスマホを置く。

 画面は暗いまま。


 通知は来ない。


 来てほしいのか、来てほしくないのか、自分でも分からない。


 しばらくして、ゆっくりと椅子に座る。


 頭の中で、さっきの会話を整理する。


 1つ目。

 → 選ばれた理由は、くじ。


 2つ目。

 → 世界は変わっていない。自分が移動している。


 3つ目。

 → はるなは“何か”。人間ではない可能性。


 4つ目。

 → 元に戻るには「先生」を探すしかない。


 5つ目。

 → あの人。


 そこで思考が止まる。


 最後だけ、答えがない。


 言おうとした瞬間、遮られた。


 咳。

 拒絶。

 強制的な遮断。


 つまり。


 そこが一番重要な情報だ。


 ――ピコン。

 突然、スマホが鳴る。


 心臓が跳ねる。


 画面を見る。


 今までとは違う表示だった。


 《次の観測対象を確認》

 《残り時間:00:09:58》


「……は?」


 意味が分からない。


 “次の”?


 じゃあ、今までは何だったんだ。


 カウントが減っていく。


 9分。

 8分。


 体の奥が、ざわつく。


 嫌な予感しかしない。


 これは、“通知”じゃない。


 何かが始まる予告だ。


 立ち上がる。

 さっきまでの恐怖が、少しだけ変わっていた。


 分からないままでは、終われない。


 消えるのを待つだけなんて、ありえない。


「……先生、か」


 手がかりは一つだけ。


 どこにいるか分からない。

 でも、探すしかない。


 カウントは、まだ続いている。


 00:06:12


 息を吐く。


 スマホを握りしめる。


 そして。


 時はくる。

なんの「時」ですかね。どうしましょ。

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