y17.行軍準備
投石器と爆弾の試し撃ちを終えてから、私達は毎日爆弾と投石器の開発、更なる改良に追われていた。
デルセンはほかの町から大工と兵士をかき集め、魔物の森に攻め込む準備を急ピッチで進めている。
増援の大工のおかげで開発、製造の方はかなり順調だ。調達できた資材を使い終える頃には30基の投石器が完成していた。
直属の護衛でいつも一緒にいるフレイと並べられた投石器の最終確認をしているとデルセンが近付いてきた。
「素晴らしい……ミサキさん、これだけあれば充分ですな。
各町の兵士も集まりつつある。1週間後には森へ侵攻しますぞ。」
「……私もついて行きます。現地での整備や実際に戦闘を見ることで何か思い付くかも知れません。」
「な!?いけません!危険過ぎる!貴方は町に残ってください!」
「いえ、そうはいきません。私は…私には、私が作った兵器を見届ける義務がある。」
そう、私は決意していた。生き物を殺す為だけの物を作ったのだ。ならば作った私はそれを見届けなければと。
私は引く気は無いと眼光に意志を込めて真っ直ぐデルセンを見つめる。
しばらく見つめ合い、デルセンは諦めたようにため息をついて言った。
「分かりました…。ですが常に最後方にいてもらいます。これを守って頂けないのならお連れする事は出来ません。」
「ワガママを聞いて頂いてありがとうございます。
データ収集もするつもりですので今後の魔物駆除にも役にたてるでしょう。」
「くれぐれも無理はなさらぬよう。
それでは最終確認の方よろしくお願い致します。」
デルセンはそう言って去っていった。
私は兵器の最終確認を終え、部屋へと戻る。途中の通路で何人かの兵士達とすれ違い、すれ違う度に私に挨拶をしてきた。
「ミサキ様、お疲れ様です!」
様付けだ。まるでお偉いさんになった様だが実際私はお偉いさんになった。
なんでも国が投石器開発の功績を認めてくれて国家直属の研究者として雇ってくれた。
私以外にその地位についてる人は居ないらしく、私が記念すべき第一号って訳だ。だから、それが実際どんぐらい偉いのかもはっきり分かんないし、なんなら役職名すら決まってない。
まあ近いうちに王都に行って謁見したりなんやらしたりって予定が入ってる辺りきっと結構偉い……はず……。
まあそれはいいんだが困ったこともある。妬みだ。
ポッとでの小娘が急に偉そうにしてると反感を買って仕方ない。
嫌味を言われたりなんか結構ザラにある。その度にフレイが上手く切り返して守ってくれるんだけど他のお偉いさん方はそれがさらに気に入らないらしい。
悪目立ちしたのと、投石器の完成で魔物討伐に目処がついたのとで研究予算を大幅に減らされた。
くそう……私の鉄砲への道が……!!
「どうしたんだいミサキ?何か考え事?」
顔に出てしまっていたのか一緒に部屋への廊下を歩いていたフレイが話し掛けてくる。
「な、なんでもないよ!」
しばらくずっと一緒にいたから人見知りの私でもフレイとはかなり打ち解けられた。
まあ兄妹みたいなもんだしね。
「やっぱり魔物討伐の事が気になる?」
「いや、ほんとになんでもないよ!
それは確かに気になるけど向こうが襲ってくるなら仕方ないしね。」
「……そっか。」
フレイは魔物討伐に関してあまりいい感情を持ってないみたいだ。その話になるとたちまち暗い顔をする。
まあ私もいい気はしないけど襲ってくるなら仕方ない。平和な時代もあったみたいだけど向こうがそれを捨てたらしいし。
「ミサキ……話したい事があるんだ。今晩、部屋に行ってもいいかな?」
部屋の扉の前まで来てフレイは真剣な顔でそう告げてくる。
「ぜ、全然大丈夫だよ!待ってるね!」
「ありがとう、また来るよ。」
真剣な眼差しを刺され何故かどもる私にそう言ってフレイは帰って行った。
な、な、なんだ!!超気になる!!告白か!?
まさかこれは告白フラグなのか!?
確かに最近そんな勘違いできる程にはめっちゃ仲良くなったしおかしくは……ない……?
いやいやでもあんなイケメンが私の事なんて……
いやいやいやいや私だって女だ、そこそこ可愛らしくは振舞ってきたつもりだ。ならばワンチャン。
いやーでもやっぱ別件……あーでもやっぱりフ……
私は悶々としながら部屋へと戻り、ただただフレイを待った。




