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異世界ALIVE  作者: 路地裏
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m19.過去の遺恨


 「ん………あ、あれ?なんでウチ……痛っ!」


 さっきまでおった裂け目と違って、明るい外の日差しとこっちに来てからすっかり慣れたペルの背中から伝わる振動で目が覚めた時体を痛みが貫く。


 「気が付いたか、良くやった。今はゆっくり休むといい。」


 「キアナ!キアナは!?」


そうや、ウチあの後寝てしもうたんや。それを思い出して体を起こし、キアナの姿を探すとすぐ隣から声が聞こえた。


 「ここにいる。そう喚くな、みっともないぞ。」


少しだけ微笑んでそう言ってくれる姿に仲間になってくれたっていう実感と達成感が込み上げる。


 「おお!キアナ!これからよろしくな!!良かったー!

 あ!みんなは!?なんか連絡あった!?」


 「何も無い。見ての通り今地上に出た所だ。

 連絡が来るにももう少し時間がかかるだろう。」


 ペルがそう言った直後キアナの尖った耳がピクピクと動いた。


 「いや、何か飛んできてるな。羽音が複数、仲間か?」


 「飛んできてるんやったら多分そうや!

 みんなハーピィ連れて行っとるからな!上手いこといったかなー!」


 キアナが指を指した方の空を見上げるとレイラとホルス、そのグリフォンとハーピィの軍の中にワイバーンが数匹混ざっていた。


 「ワイバーン!!連れてきてるっちゅう事は上手くいったんやな!!」


 「………そうだといいがな。」


明るく言うウチにキアナは警戒と不安が混ざった表情で暗く答えた。


そうこう話してる間にレイラ達はどんどんウチらに近付いてくる。ウチらの近くで少し減速し、止まったけどレイラはウチの正面に一気に近付いて来て心配の声を荒らげた。


 「アヤ様!ボロボロじゃないか!

 大丈夫かい!?何があったんだ!?」


 「大丈夫や!ドラゴノイド、キアナも仲間に入ってくれるって!!」


心配してくれるレイラにウチは手でガッツポーズを作り得意気に言った。


 「おお、上手くいったか。流石だな。」


 「ホルスとレイラの方も上手くいったんやろ?」


 「それが……」


ウチらが話しているとそれに割り込むように大きな羽音を立てて他のやつより大きめのワイバーンがウチの正面に来た。


 「ふむ、貴様が人間か。言っておくが儂はお前の傘下になど入っておらぬ。

 人間との和平が望みらしいがどう実行する気だ?」


どうやらワイバーンはまだ仲間になってないらしいな。でもここまで連れて来てくれた。ここでの交渉次第って事か。


 「ウチが人間と話つけに行く!もう魔物を襲わんように!

 魔物が人間を襲わんかったら出来るはずや!」


 「ふはははは!!話にならん!やめておけ。

 お前は人間だからいいだろうが共の者はすぐ殺されるぞ。」


 ワイバーンは笑いながらそう言う。


 「私が共に行く。人間に簡単に殺される事も無い。」


 ワイバーンの笑い声を遮るようにペルが口にした。


 「……正気か?そもそも何故貴様が人間に手を貸す?

 レイラ、キアナ、儂、そして貴様もあの時代を生きた。人間を信用した結果がどうだったか幼過ぎて覚えていないか?

 貴様も人間を信用し、親と同じ事を繰り返すのか?」


 「繰り返しなどしない。こっちの王は今は人間なのだ。魔物とも話せ、人間とも話せる。どちらとも話せれば今度はこちらの意志もむこうに伝えられる。大きな違いであろう。」


 「………そこの人間が裏切ればどうする?そやつは人間。そやつが魔物を捨て、人間と共に暮らしたいと思うた時、そやつを信じていれば儂等は簡単に一網打尽にされるぞ。」


 「そんなことはありえない。約束したのだ。」


ワイバーンにキッパリと言い放ったペルの言葉を受けワイバーンは怒りを露にした。


 「人間との約束事など、なんの価値も無かろうが。

 儂等の怨みを、怒りを!忘れて仲良く手を取れと?


 儂等を裏切った人間が言うのだ!そんな都合のいい話があるか!」


ウチを睨みつけながら声に怒りを乗せて咆哮する。その姿、瞳、声は人間への長年の憎悪、憤怒を充分にウチに感じさせた。それを直接向けられたウチは声を出せなかった。ただ、純粋に恐怖を感じて固まってしまった。そんなウチを庇うようにキアナが前へ出て口を開く。


 「ジル、アヤが裏切った訳じゃない。あんただって本当は分かってるはずだ。あの時だって全ての人間がアタイらに敵意を向けた訳じゃない。あんたの怨みは痛い程分かる。だが、時代は変わったんだ。

 アタイらの古い考えを今の時代に押し付けるな。」


 「キアナ、貴様もそっちについたのか。

 忘れたというのか……あの屈辱を……我等の王を…。」


ジルと呼ばれたワイバーンはかつての友、キアナを見つめ小さな声でそう呟いた。


 「……忘れられるはず無いだろう。

 だが今も胸に燃え盛る憎悪を飲み込み、アタイはこの人間、アヤに賭けた。


 ジル、あんたこそ忘れたんじゃないのか?

 アタイらの王がかつて何を望んでいたのかを。王が最後にアタイらに残した言葉を。」




 「…………。」



 「アヤとヘルライガー、いや名はペルだったか。この二人は身を持ってアタイに夢を見せてくれた。実際に人間と魔物が支え合い、助け合う姿をこの目で見た。

アタイは…一瞬、ほんの一瞬だけ。あの優しい王の姿が重なって見えたよ。アタイはこの二人ならもう一度、やってくれると思ってる。


なあジル、あんたももう充分怒り、怨み、呪ったろう?それでも人間に復讐せずに縄張りで大人しくしてたのはアタイらの心の何処かで王の姿が、言葉が、生きてたからじゃないか。

そして今、その王の夢を継ぐ者が現れた。ならばそれを手助けしてやる事がアタイらが守れなかった王へのせめてもの償いだと、供養だと、そして恩返しだとは思わないか?」



 ジルと呼ばれたワイバーンはキアナの言葉を聞き、少しの間うつむいて目を閉じていた。

 まるで過去を思い返すように。いつもその瞼の裏には人間の手によって無惨な姿にされた王とその妃が映る。だが、今は違った。人間にリンゴを貰ったと満面の笑みで語る二人の姿。たかがリンゴ、一体何がそんなに嬉しいのか。まるで子供のように喜ぶ二人の笑顔が見える。


ジルはゆっくり目を開き、アヤを見つめる。アヤもまたジルから目を離さなかった。




 「………良かろう。これが最後だ。

 もう一度、もう一度だけ人間を信じてやる。


 だが、少しでも不穏な動きを感じれば儂が後ろからその首にくらいつく。覚えておけ。


 これより…儂等ワイバーンもお前達の傘下となろう。」



 ジルがそう言い終わると同時、仲間達から歓声が上がる。

かつての古き魔物は再びかつての理想の元に揃った。ペルとキアナは笑顔を浮かべ、レイラは少しだけ泣いていた。


鳴り止まない歓声の中、アヤはジルに近付き、静かに声を掛ける。


 「ジル、よろしくな。昔の事はウチ詳しく知らんけど絶対後悔させへん。ゆっくりでええ、ウチがあんたにウチの事信用さしたる。人間の事好きにさしたる。

 誰も争わんでええほんまに平和な世界をみんなで作るんや。」


ウチはそう言ってジルに笑った。


 「やってみろ。儂が主と認めたのだ。

 不様な姿は晒してくれるなよ。」


ジルもほんの少し、笑みを浮かべたような気がした。








 ジル、キアナが加わり、残す魔物達の勢力は小さなものばかり。

 これで実質魔物の統一は成った。




 だが、喜ぶアヤ達の元にウルドの隊からアヤの元へ伝令のハーピィが放たれる。



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