m12.翼
ウチらはゴブリン、オーク、オーガの三勢力を合併した事で一気に最大級の勢力になったらしい。
まあゴブリンもオークもオーガもまだ幾つか他の部族があるらしいんやけど。
「アヤ様。次は峡谷を目指すのがよろしいかと。
この山の隣ですし、知性があるのはグリフォンとハーピィの二種族のみ。
我等は翼を持たぬので手伝えませんがペル様ならば……」
ウルドが膝をついて進言してくれる。
あっちゃー……。
ウルド……それは言うたらあかんねんって………。
「…………。」
ペルは黙ったままそっぽ向いとる。翼が合っても飛べない話はあんま触れて欲しくないんや。
ほれ見てみい!ペルがヘソまげてもうた!!
なんとか誤魔化そう。
「ま、まあ……あれやな!あのー!とりあえず行ってみよか!」
行ってどうすんねんアホォォォ!!!
ほんまこういう時のウチの機転の効かなさには飽きれるわ……。
「そうだな、向かうとしよう。」
ウチが顔を引き攣らせながらの苦肉の発言にペルがのってくれた。
え?ええの?ほんまに?別に後回しでも……
「私は飛ぶ事は出来ないが奴等もずっと飛んでいる訳ではあるまい。」
ウルドは察したのかペルに向かって片膝をついた。
「せやな!ほんじゃあ決まりや!!」
「アヤ殿、私達は軍を編成して隣の森にいるトレント達に会いに行こうかと思います。
なるべく説得するように心掛けますが万が一の時は戦闘の許可を……」
戦闘か……なるべくして欲しく無いんやけどな……。
せやけど、うちがそんな甘い事言うとったからペルがあんな目にあったんや。
もう仲間を危険にはさらせん。
「分かった!そっちは頼むわ!!
ほなウチらはもう行ってくる!無茶だけはせんとってや!!」
「おう!任しとけ!アヤ様も気を付けろよ!!」
いつ聞いても違和感バリバリやなゴル……。
まあ最初に比べたらウチだけじゃなくてみんなともめっちゃ仲良うしてくれるしええけど……。
そのままウチとペルは峡谷へと向かっていった。
「ここが……峡谷か……。」
乾燥した大地に突出した岩壁、そして大きな深い深いヒビのような谷。
何か寂しい反面、とてつもない自然の雄大さを感じる。
「さて、ハーピィかグリフォンどちらから行く?」
「ウチはよう分からんしどっちでもええよ!
どうせどっちも行くしな!!」
「ならばまず岩壁のグリフォンに挨拶に行くとしよう。」
ペルはそういうと駆け出し、岩壁の凹凸に上手く足をかけながら岩壁を跳び登っていく。
ペルの背中越しに下を覗き込むと背筋が冷たくなる。
……見んかったら良かった。グッとペルの背中に捕まる手の力を強める。
そこからさらに登った所の岩壁に大きなくぼみがあり、そこで少し休む事にした。
「グリフォンっちゅうのはほんまにこんな所におんの?」
「ああ、引っ越しでもしていなければな……。
だがここまで登れば本来ならでてくるはずなんだが………」
辺りには何もいなく、風の音しかしない。
「もう少し登ってみるか。」
そう言ってペルとまた岩壁を登り始め、ついに頂上付近のくぼみまで辿り着いた。
また休憩しようとくぼみに入ると今度は羽音を響かせてそれは現れた。
鷲のような頭に身体は獅子。
背中に生えた大きな翼で飛んでいる。
「ヘルライガーと人間……噂には聞いたが。こんな所まで何用だ?」
「ウチはアヤ!あんたらの族長と話したいねん!」
「族長は今は居ない。
軍を率いてハーピィの領地で戦闘中だ。」
「なんやて!?来る方間違えた!!急いで行かな!!」
「降りるぞ!絶対に落ちるなよ!!」
ウチとペルが急いで来た道を引き返そうとするとグリフォンがそれを引き止めた。
「待て!先程仲間からの伝令が来てる。今日の所は退いて来るらしい。
頂上まで上がってくるがいい。」
そう言うとグリフォンは飛び去ってもうた。
なんや、良かった。どっちも怪我してへんかったらええけど…。
「ほなとりあえず行こか……」
「ああ。」
なんだか思ったより友好的に迎えてくれてちょっと拍子抜けやな。ペルが居るからやろうけど。
そこから少し登り、頂上へとやっとたどり着く。頂上は広い台地のようになっていた。所々に巣の様なものが見える。
ウチらが観察するように辺りを見回しているとそこに先程のグリフォンが飛んできた。
「ここで待て、じきに帰ってくるだろう。」
そう告げて奥へと下がって行った。
言われた通りここでしばらく待っとったらグリフォンが大勢やってきた。
ピリピリとした様子でみんなウチらを観察し、明らかに警戒しとる。その中から毛色の違う個体が前へ出てきて口を開いた。
「話は聞いた、私が族長のホルス!一体何用か!!」
「ウチはアヤ!ハーピィと争ってるんやて?
とりあえずそれを止めに来た!!」
「おいおい違うだろう……。そこも重要だが……」
ペルがため息混じりにつっこんでくる。だってとりあえず話はそれからやろ。
「ハーピィとの争いを……?それは出来ない!
見ての通りここには食べ物が無い、私達もハーピィ共もそれは同じ!
もはや争いは避けられん!!」
なるほど、最初のジキトとゴルみたいな感じか。
「ウチらは隣の山を丸々領地にしとる。これから麓の森の方にも広げる予定や!そないなったら食べ物にも余裕がでてくる。余っとる分やったら食べ物はウチらが分けたる!!
それやったら争わんでええやろ!!」
ウチの発言にグリフォン達がざわつく。グリフォンの族長ホルスはしばらく考え込んだ素振りを見せてから言った。
「お前達が森を傘下に収められる保証は?分けてもらえる食料の量は?そもそも本当に山を領地にしているのか?今この話を受けるには疑問が多過ぎる。」
くっそー、ゴリ押し出来ひんか。確かに森を手に入れられる保証なんかないし現状やとそこまでようさん食料も用意出来ん。山を握っとるんは着いてきてもうたら証明出来るけどこの場では出来んか…。困ったなー。
困り果てるウチにペルが助け船を出してくれた。
「現状3つの勢力を吸収し私達は最大級の戦力を得ている。これはお前達の元へ噂が届いているらしいな。まあ、どうしても信じられなくば見に来るがいい。
そして森へは今、別の部隊が軍を率いて進軍し、傘下に入るよう伝えに行っている最中だ。だが、森の連中がそれに応じない場合私達は戦闘を行う。未だ種族間がバラバラの森の連中に勝ち目は無いだろう。つまりどう転んでも森は私達の物となり戦力も更に増える事だろう。この申し出、受けるなら早い方が良いと思うが?」
ペルが流暢に話すとホルスは顔をしかめた。流石ペルや。ちょっと脅してるみたいやけどこればっかりはしゃーない。戦うより全然マシや。
ホルスはまたしばらく考え込み決断を下した。
「良かろう!それならば文句はない!
私達も争わずに食料が手に入るのならそれに越したことはない。ハーピィ共に話をつけてくれるのならよろこんで受けよう!!」
良かった、魔物って思ったよりみんな話が通じる。ウチが喜んでこれからよろしくなって挨拶しようとした時ペルが割って入った。
「待て。条件を変えさせてもらう。
アヤを王とし、従わなければこの話は無しだ。」
淡々と言い放つ。
グリフォン達がまたざわついた。
「ペル!!せっかく受けてくれよんのに!!」
「目的を見失うな、統一無くして平和は築けない、
なによりタダで食料をやるなど、ジキト達に面目が立たん。」
「それは……そうやけど……」
ペルの言う通りや。誰にでも食料ばらまいとったらウチらが飢えてまう。ウチが落胆している内にグリフォン達のざわめきが収まってホルスが口を開いた。
「確かにおまえ達の噂は聞いている、考える時間が欲しい!
どの道ハーピィも説得せねばなるまい、それまでに結論をだそう!」
「良かろう。ならば先にハーピィの方へ行くとする。」
ウチとペルはそう言ってその場を後にし、岩壁を降り、ハーピィがいると言う谷に向かった。
谷への道中ペルが口を開く。
「あの時ああは言ったがグリフォン、ハーピィ、共に飛行能力を持っていて厄介だ。争えば犠牲は避けられん。
出来れば敵対せずに味方につけたい所だな。」
「まあでもグリフォンの方は結構好感触やったんちゃう?
ハーピィの方もなんとかなるって!」
「ならいいが……
まあ油断はするなよ、相手は飛べる。
殺風景で隠れる場所がないここなら相手の方が有利なのだ。」
なんて話している間に谷へ着き、谷を降っていく。
谷を降り始めてすぐの事、ハーピィ達は現れた。ウチらの上を取り囲むようにハーピィの軍勢が現れる。
人の体に鳥のような足、肩から手の平の先にまで羽が生えて、その羽で飛び回る。
これがハーピィ……めっちゃ綺麗や……。
個体事に羽の色や模様が、違って空を覆うその群れは幻想的だった。
その中心にいる美しく、赤い羽根のハーピィが口を開く。
「見ない顔だね。グリフォンの手の者じゃあ無いみたいだけど。ヘルライガーと人間か。話だけは聞いた事あるね。
さて、大体の予想はつくけどアンタ達は何しにきたんだい?」
その声は妖艶で谷によく響いた。
「ウチはアヤ!ハーピィの族長に会いたいねん!」
ウチはハーピィの質問に大声で答えた。
「族長に?それは今アンタと話してるアタシだよ。
ハーピィの族長、レイラ。
それで、アタシになんの用だい?」
話しながらふわふわと飛ぶレイラはほんまに綺麗で見蕩れそうになる。でもグッと堪えてウチは用件を告げる。
「グリフォンとの争いをやめて欲しいんや!
それとあと、ウチらの仲間に……」
ウチが最後まで言い終わる前にレイラが遮った。
「待った。長くなりそうだね。
あんた達の噂はこっちまで届いてる。谷の奥に来な。歓迎してやるよ。
おまえ達!案内しておやり!」
レイラはそう言って何人かのハーピィを残し、群れを率いて谷底に消えていった。
残った何人かのハーピィに誘導されてウチらも谷底まで降りて行く。
交渉、、上手いこといったらええな……。




