m9.王の風格
あれから1日経ったけどそのあと狼達が現れることは無かった。
援軍に来てくれたオーガも自分達の一族で話し合いたい事があるって言うて昨日の内に集落に帰って行った。
ウチらはと言うとゴブリンとオークの集落に泊まって見張りを続けとる。
「アヤ殿、狼達の事ですがどうなされるつもりですかな?」
「ああ、ジキトか。ウチも悩んでねや……
えらい嫌われとってな……なんとかしたいんやけど。」
ゴブリンの族長、ジキトが見張りをするうちの元へ話しかけにきた。ええ加減名前ないと不便やからな。遅なったけどちゃんと聞いといた。
「さっさと駆除してしまえばいいのだ。それで解決だろう!アヤは甘い。」
こっちはゴル、オークの方の族長や。相変わらず声がデカくて見た目通りの脳筋や。
「駆除なんか絶対あかん。話せるんやったら話すべきやろ!」
ウチがゴルのデカい声に負けじと声を張り上げて返す。
「しかし向こうに話す気がない。アヤ、本当の目的を達成するには非情さも必要だ。
駆除まではしなくても力で制圧するぐらいにはな。」
荒ぶるウチにペルが諭すように言ってくる。
「わかった………。でももうちょい……もうちょいだけ待って、
なるべく向こうもこっちも被害が出んようにしたいんや。」
あーもー、ほんま頭痛なるわ。ペルの言う事も一理あんのも分かっとる。のんびりしとったらこっちが痛い目に合う。その前に叩くっちゅうことやろ。せやけど心が納得せえへん。それじゃ喧嘩しとった最初のゴルとジキトと変わらん。
それからみんなで話し合いを続けとったらオーガ達がまたやってきた。
「おお、ウルド!どないしたん?」
連絡しに戻るとは聞いとったけど思ったより早い帰りにウチが声を掛けて迎える。
「狼共への対処は決まったか?」
ソレにウルドは手を挙げて答えると早速本題を切り出した。
「今考え中や!ウルドの方は?名案あるか?」
首を左右に振りながらウルドは答えた。
「こちらもない。こっちに来たのは頼みがあって来た。」
「頼みって?」
「ここのゴブリンとオークはアヤの傘下なのだろう?
それに俺達も加えて欲しい。集落のみんなも了承済みだ。」
思いもよらない提案にウチはジキト達と顔を見合わした。
「ウチらは願ってもない事やけど……なんでなん?ええの?」
ウルド達はあっさり停戦受けてくれたりとかなり友好的やったけど傘下に入れてくれって来るとは思わんかった。
「構わない。元々俺達は個体数が少なく、ナワバリを広げる事に余り関心はない。食い物も足りて、広げる必要が無いからな。
ならば、他の魔物共の鬱陶しい干渉を受けるよりお前達の協力を得られるように傘下に入った方が得だろう。なにより……」
ウルドはそこで言葉を区切るとチラッとペルの方を見た。
「いや、なんでもない。悪い話では無いとおもうがどうだろうか?」
なるほど……魔物も色々やな。
「よっしゃ!分かった!!これからよろしくな!!」
ウチがそない言うたらウルド達オーガは一斉に片膝をついて言った。
「ではこれより我等はアヤ様にお仕えさせていただく。
何か不自由があれば何なりと。」
ちょ、そんな急にかしこまんなや!!
「い、いやいや普通に喋ってくれたらええって!!
様なんか付けて呼ばれたら痒なってまうわ!」
「そうはいきません。アヤ様は我等の当主。
恐れながらそれなりの自覚をして頂かねば。」
ウルドがそう言うと立て続けにペルがここぞとばかりに援護射撃をうつ。
「ウルドの言う通りだ。アヤ、お前が皆を守らねばならない。勢力を束ねるとはそういう事だ。
お前の目標は生半可なものでは無い。それなりの風格を身に付け、皆を統制して導かなくてはな。
先ずは狼共からここを守らねばな。」
嫌がるウチに二人してそう告げてくる。
「で、でもゴルは普通に喋ってるし呼び捨てやん。」
ウチが苦し紛れにゴルを指差してそう言うとウルドは片膝を着いたまま首を振り言った。
「それはこの豚が世間を知らぬだけの事。
ペル様以外に馴れ馴れしい口を聞く者は諌めるべきかと。」
「な、なんだと!!喧嘩売ってんのか新入り!!」
そう言ってゴルがウルドの方へグイグイ近づくとウルドは立ち上がって眼光を尖らせる。そして手を出せばすぐ届きそうな距離でウルドとゴルが睨み合った。ヤバいヤバい。止めな。
「わ、分かった!分かった!だからケンカすんなや!
ウルドも言い過ぎや!」
ウチはすぐ二人の間に入って手で無理やり二人を引き離した。
「出過ぎた真似を……失礼致しました。」
ウチが止めるとウルドはすぐにウチの方へ向き、膝をつき直した。
はぁ…全然慣れへんわ……。
堅苦し過ぎる、ゴルぐらいがちょうどええんやけど。
「まあそれで、ア、アヤ様、結局あの狼共はどうするんだ?」
ウルドに言われて思うところがあったのか。精一杯頑張ってんのは分かるけどタメ口で様付けは違和感しかないぞ……ゴル……。
「そうやな。とりあえず探し回る。
接触せんと話にもならんからな!見つけたらもっかい喋ってみる。あかんかったら……
その時は、、ここらには近付けんようにする。」
ウチは覚悟を決めた。しゃあない。ペルの言う通りや。ウチがみんなを守らなあかん。みんなが傷付くぐらいなら傷付ける方を選ぶ。
「それで良いだろう。早速出るとしよう。
ウルド、ジキト、ゴル。こっちは任せる。」
そう言ってウチとペルは狼達を探しに集落をでた。
あいつらはウチらを狙ってる。ナワバリの近くにはおるはずや。
それからしばらく辺りを散策してみたが一向に姿はなかった。
「なかなか見つからんなー……。」
「そうだな、もうじき日が暮れる。一度戻るか。」
そう言って戻ろうとした時。白狼は現れた。
木の上に隠れとったらしく。上からウチに飛びかかってくる。
いきなりの事に反応出来んとそのままペルから落とされてもうた。
ペルが助けに来ようとする頃にはもう遅い。
ウチは白狼に仰向けに抑え込まれて、首に牙を突き付けられとった。
「近付くな。近付けばこの人間の喉を噛みちぎる。」
「狼如きが。その子をやれば皆殺しだと言ったはずだが。」
二匹の獣が眼光だけで睨み殺す勢いで喉を鳴らす。
ウチらの周りは最初みたいに狼達に囲まれとった。




