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異世界ALIVE  作者: 路地裏
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m4.出会い



 霧の立ち込める、ただ広いだけで何も無い荒野に人間が落ちていた。


 どうやらまだ生きてるらしい。

 こんな所に何故人間がいるのかは疑問だが、雨でかなり衰弱している様だ。

 人間とはあまり深く関わった事は無いが貧弱な種族と聞く。放っておけば死んでしまうだろう。


 私はその人間を背中に乗せてやり、地熱で暖かい洞窟へと運んでやった。

 ここは私のナワバリだ、他の魔物に襲われる事もなかろう。


 腹が減っているだろうし何か食わしてやるか。


 人間を洞窟で降ろしてすぐ、私は食べ物を探しに外へ出た。


 周囲を駆け回るが、この大雨だ、なかなか獲物は見つからない。

 居るには居るが美味そうでは無いのだ。


 どうせなら美味いものを食わしてやるのがいいだろう。


 私の好物を食わそうと、雨の中一晩中駆け回ってようやく見つけた。


 赤と黒のしま模様のトカゲを見つけた瞬間、一気に近付き爪と牙で引き裂く。


 トカゲは反応すら出来ずそれだけで動けなくなった。貧弱な事よ。


  瀕死のトカゲに止めをさし、咥えて洞窟へと持って帰った。


 戻ると人間は余程疲れていたのだろうか、まだ寝ている様だ。

 仕方がない。私はトカゲを洞窟の端へ置いて起きるのを待った。



 そこから程なくして人間は目覚めた。辺りを見渡して私に気付いたようだ。

 通じないだろうが「食え。」と言ってトカゲを指す。

 だが、人間は動かなかった。


 不便なものだ、私は人間の言葉を理解出来るが、人間に私の言葉は通じない。


 まったく世話の焼ける……。私はトカゲを人間の目の前に持って行ってやった。すると


 「い、いやちょっと待って!わざわざ獲って来てくれたとこ悪いけど、ウチこんなん食えへんって!」


 なんだと…。


 「そ、そうか。ならば人間は何を食う?」


 これは驚いた。まさか人間はコイツを食えないとは……。


 やっと見つけて持ってきたというのに………。


 ならば何であれば食えるのだ……。通じないと分かっていても思わず口に出してしまった。


 「せやなー、焼いたりしたらこれも食えるかもしれんけど……」


 ……!!!?

この人間!まさか!!確かめるようにもう一度問う。


 「人間……私の言葉が分かるのか?」


 「分かる何も普通に喋ってるやん。」



 何を言ってるんだこの人間は、私が人間の言葉を話しているとでも思っているのか?



 詳しく尋ねてみると、どうやらこの人間はこの世界の人間ではないらしい。

 そして特殊な能力で私の言葉を理解しているのかもしれない、との事だった。


 馬鹿馬鹿しい話だが、辻褄は合う。

 人間があんな所にいるはずがないからな。


 思考を巡らせていると人間が助けた礼を言ってきた。


 ふん、馬鹿な事を。この私が人間を助けるはずが無いだろう。

 私は単なる暇潰しだったとバッサリ言ってやった。





 それよりも、やはり腹が減っているのだろう。

 人間の腹がなっている。


 「焼けば食えるのか?」


 「あー、多分。毒とか無かったらやけど。」


 ならば造作もない。


 「そうか。」


 私はそう言うとすぐに行動に移る。

 焼けば食えるとは、人間は思ったより貧弱で変わった種族らしい。

 私は人間でも食いやすいサイズに肉を顎でちぎって口から火を吹き、焼いてやった。



 「う、うわあぁぁ……す、凄いやん……!かっこええなあぁ……」


 ……凄い?

 そうか、火を吹けるのが珍しいのか。

 魔物にもあまり火を吹くのはいないのだ、当然か。

 しかし、かっこいいとは……悪い気はせぬな!


 それに私に(おく)する事無く話してくる。この人間はなかなか見所がありそうだ。もう少し助けてやるとしよう。


 「ふふふ、この程度、最強種たる私には造作もない。

 さあ、食え。食い終わったら人間がいる所まで乗せてやる。」


 「あ、ありがとう」


 人間は私がそう言うと、トカゲの肉にかじりついた。


 どうだ?美味いか?美味いだろう?

 そいつの肉は私も大好物なのだ!


 人間は一口かじると、あまりの美味さに驚いたのか少し硬まり、そこから一気に食べ切った。


 ふふふ、そうかそうか。そんなに美味いか。


 人間は一気に食べ切って一息つくと


 「ご馳走様!めっちゃ美味かったわ!!ありがとうな!!」


 と言ってきた。

 余程美味かったのか、目には少し涙が滲んでいる。

 これは一晩中探したかいがあったと言うものだ。


 仕方ない。もう一つ作ってやるか。と思ったが腹がいっぱいだと断られてしまった。


 胃袋の小さい生き物よ。

 ならばこの人間を送った後に私が食うとしよう。


 そうと決まればさっさと出るか。

 この人間も私と一緒では居心地が悪かろう。


 私は人間の着ている妙な布を咥えて、人間を放り上げ、背中に乗せた。


 「ちょっと!この乗せ方なんとかならんの!?」


 ワガママな人間だ。適当に返事をして駆け出した。



 少しすると人間は町までどれぐらいかと尋ねてきた。

 時間がかかると告げると、今度は私の名を尋ねてきた。


 私には名など無い……。いや、もしかしたらあったのかもしれないが、知らないのだ。


 種族名だけ教えてやると今度は家族がいるのかと尋ねてきた。



 家族……か………。


 私は「…………いない。」と だけ答えた。



 すると今度はこの人間は私に名前を付けよう等と言い出した。


 一応私は皆に恐れられる最強種の魔物なのだがな……。

 恐れず喋りかけてくるうえ、この私に名前まで付けようとは……。


 「よし!じゃああんたの名前は今日から『ペル』な!!

 よろしく!ペル!!」


 「はあ……まったく、好きにしろ。」


 反論してもどうせ聞かんだろう。とても頑固でわがままな人間だ。

 だが不思議と悪い気はしなかった。

 変わってるが面白い人間だ。


 ふふふ、どうやら今日から私は『ペル』なんだと。

 私の背中で嬉しそうにはしゃぐ人間は私の長い退屈な時間の最高の暇潰しになっていた。


 「なあペル、なんでウチの事こんな面倒みてくれんの?」


 人間が不思議そうに尋ねてくる。


 「言っただろう、暇潰しだ。」



 「暇なん?最強種やのに?」


 「最強だから暇なのだ。私が他の種族に近づくと皆怖がってしまう。

 だからあの誰もいない荒野を住処にしていた。

 そこに急に現れたのがお前というわけだ。」


 事実、今まで逃げ出すか、逃げもできずその場に呆然と立ち尽くす者しかいなかった。


 私は幼い頃から体が大きかったからな。

 まだ幼い私が話しかけようとしても、近付いただけで皆逃げていったものよ。


 だがこの人間は違った。

 臆する事もなく私に話しかけてくる。

 本当に……本当に変わった人間だ。そんな事を考えていると



 「じゃあウチが一緒におったるわ!!

 町行くんやめよ!どっかちゃうとこ連れてってや!」


 と、まるで当たり前の様に言い放った。


 「バ、バカな事を言うな!お前は人間だろう。

 人間と暮らすのが一番だ。」


 慌ててダメだと言い渡す。


 「でもペル、寂しいんちゃうん?」


 「寂しくなどないわ!そ、そもそもお前は私が怖くないのか?」


 私はずっと気になっていた、そしてなんだか聞き辛い…いや聞くのが怖かったのだろう。また恐れられ、距離をとられてしまうのが。

 だがその質問をついに口に出してしまった。


 「怖ないで?ペルめっちゃ優しいやん!」


 「や、優しくなど……

 まったく……変わった人間を拾ってしまったものだ…」


 生まれて初めてだった。

 怖がられないというのは。会話が出来るというのは。こんな気持ちになるのか。


 この人間といればきっとこの先待っているであろう長い退屈な時を埋めてくれる。このまま連れ去ってしまおうか。

 いや、いくらなんでもそれは出来ない。いやでもちょっと遠回りするぐらいなら……


 そんな考えが出てくる程に私はこの人間を気に入ってしまっていた。




 ……だがダメだ。

 やはり人間は人間同士で暮らすのが一番だろう。


 私はキッパリそう告げたが人間は



 「えー、嫌なん?独りより絶対楽しいで!!」


 等と聞いてくる。


 「い、嫌な訳ではないが…」


 私が少し言葉に詰まると(たた)()けるように


 「じゃあ決まり!はい決定!!もう今更嫌や言うてもついてくからな!」


 こう言ってきた。

 まったくもって強引な人間だ。


 そして、その強引さに私は負けた。


 私もまた、この人間といたいと思ってしまっているのだ。


 「………まったく、好きにしろ。」


 本心を隠して乱暴に言い捨てる。


 「やったああ!!ウチの名前彩って言うねん!

 よろしくな!ペル!!」


 背中で嬉しそうにはしゃぐ人間に向かって

 ああ。よろしくな、アヤ。


 口には出さずに呟いた。




 いつの間にか霧は消え、空は晴れ渡っていた。



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