m2.翼の獅子
眩い光に包まれ、その光が消えたと思ったら気付いた時には今度は霧に包まれとった。
周りを見渡しても霧でなんにも見えん。
霧がかかっとるっちゅうのに地面はカラカラでヒビがようさん入っとる。
所々に小さい緑の雑草が生えてるぐらいで、
それ以外は霧までずっと地面の褐色が続いとった。
「ここが……異世界……。」
じっと立ってる訳にもいかんし結構歩いてみたけど目に映るもんは変わり映えせんかった。
相変わらずの荒野と霧。
かなわんなぁ……。腹も減ったしええ加減疲れた。
せめてジャングルにでも飛ばしてくれたら食べ物とかもどないかなったやろうに。
そんなん考えながら歩いとったら、急にザーッと雨が降ってきよった。
たまらん、たまらん、雨宿りなんかする場所あれへんぞ。
そう思いながらもとりあえず走った。
でも雨は止む気配もなく、むしろさっきより勢い良く降ってきよる。
セーラー服もびしょびしょや、着替えもあれへんのに。
とりあえず雨宿りできる場所探さな風邪引いてまう!
そない思って走って、歩いて、走って、歩いてを繰り返した。
結局雨は一日中止まんかった。
雨宿りできる様な場所も、食べ物もあらへん。
雨に濡れるっちゅうんは思ったより体力持っていかれる。
水は雨を飲んどるけど腹がどうにもならん。
じわじわと体が衰弱していくんが分かる。
嘘やろ……こんな来てすぐ死ぬんか……。
異世界って天国は向こうと一緒なんかな……。
一緒やったらええな……またペルと遊んで………
そんな縁起の悪い事を考えながら遂に倒れ込んだ。
もう疲れた。眠うてしゃあない。いっそこのまま寝てまうか……。
そんな時、バカでかい爪が付いた黒い毛むくじゃらの足がドンっとウチの視界に現れた。
倒れたまま足の上を見上げてみたら、四足歩行のままでもウチの倍ぐらいでかい黒い毛並みのライオンがおった。
体毛は真っ黒、でも目は真っ赤。額から首に向かって、でっかい角が2本。
極めつけに背中には悪魔みたいなごっつい羽がついとる。
これが魔物っちゅう奴か……。
もう喰われてまうんやろな………。
ウチはなかば諦めとった。
ペルが死んだのもあるし、雨と荒野にやられてもう心はズタズタや。
喰われんでも寒さにやられてどうせ死ぬ。
そのでっかいライオンはウチに向けて口を開き、噛む様な姿勢をとる。
ウチは目をつぶって静かにそん時がくんのを待った。
最後に思い浮かぶんは、家族でも、クラスメートでもなくペルやった。
待っとってな、ウチ今からいつもみたいに会いに行くから。
覚悟を決めて目を閉じてからしばらくの時が経つ。
……あれ?なんでまだ喰われへんの?
ビビりながら目開けてみたらライオンはウチの制服を咥えて、首を上に大きく振った。
その勢いでウチの体は空中に放り出される、着地した先はライオンの背中やった。
ライオンはウチを背中に乗っけたまま走り出した。
「ちょ、ちょっと待ってや!落ちてまうって!!」
そんなウチの抗議にも耳を貸さんと猛スピードで荒野を駆ける。
ウチはもうしがみつくんで必死やった。
これがウチにとっての運命の出会い。
そっから五分もせんぐらいやろか?
ライオンはでっかい洞窟に入って行って乱暴にウチを振り落とす。
「痛っ!!」
ウチは転がり倒れた。
勘弁してや……こちとら雨の寒さと空腹でおかしなりそうやったんやから……。
ん?あれ?ここあんま寒ないな。むしろ暖かいぐらいや。
なんやもしかしてあのごっついライオン助けてくれたんか!
お礼言わんと!!
ライオンの方を見たらもうおらんくなっとった。
礼ぐらい言わしてくれてもええのに……せっかちやな……。
横になりながらそんな事考えとったらめっちゃ眠なってきた。
この洞窟なんかぬくいから余計や。
ウチは眠気に身をゆだねてゆっくり眠りに落ちていった。
洞窟の外はまだ、ウチが初めてペルに出会ったあの日の様な大雨だった。




