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異世界ALIVE  作者: 路地裏
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m1.無罪


 いつも通りの帰り道、いつも通りのバス停から、いつも通りの寄り道をして家に帰る。



 ウチの名前は高見(タカミ) (アヤ)

 おりそうでおらん苗字に、結構おるような名前。

 ウチは結構気に入っとる。語呂もええしな。



 ほんでウチの日課がこの寄り道。






 大昔、大雨の時に拾うた捨て猫を家に持って帰った。

 オカンは、飼われへんから戻してきって言うたけどどうしても戻せんかった。


 せやから雨の中、猫を抱きながら他人の家の前で

 雨宿りしながら棒立ちしとった。


 ほんならその家からおばあちゃんが出て来て、この子の面倒見てくれるって言うてくれた。



 ウチはめっちゃ喜んでそれ以来ほぼ毎日、

 学校の帰りにおばあちゃん家寄って猫に会わせてもらっとる。


 もちろん今日もその猫、『ペル』に会いに行こうっちゅう訳や。


 楽しみなあまり浮き足立つ歩調がウチのショートカットとセーラー服のスカートを少し揺らす。

 そしてもう見慣れた結構大きめの家前に着いた。インターホンに指を運び、鳴らす。

 そしたら、いっつもおばあちゃんが笑顔で迎えてくれんねんけど


 今日はちゃうかった。




 出てきたおばあちゃんの目は赤くなって、

 今にも雫が落ちそうな…そんな顔で


 「彩ちゃん、よう来たなあ。実は………」








 その先は聞かんでもなんとなく分かった。

 拾ったんも大分昔やし、最近は元気も無かった。


 もうそろそろ……なんとなく……ほんまになんとなく……

 ペルがもうお別れやって言うてきとる様な気がしとった。




 「まあ上がり!

 明日には葬式してくれる人が迎えに来てくれるでな、

 彩ちゃんもペルにお別れ言うたってや。」





 ウチは家に上がらしてもうて、ペルが気に入っとる畳の部屋に向かった。


 部屋の(ふすま)開けたらまるで寝てるみたいな、

 ペル って呼んだらすぐ返事が聞こえてきそうな。

 そんないつも通りの姿で、窓からさす夕陽を浴びながら横になっとるペルがおった。

 ウチは横たわってるペルの隣りに座って頭を撫でながら話しかける。



 「ペル、、、ウチ今日もきたで!

 今日は学校でなあ……」




 出来るだけいつも通り……


 いや、いつも通りよりちょっとだけ明るく、今日あった事をペルの頭を撫でながら話す。



 いつもと違うんは、ペルが返事してくれへんのと



 ウチとおばあちゃんの表情だけ



 おかしいな、明るく喋ろう思うてんのに…

 ペルに最後におもろい話、聞かしたろう思うてんのに……

 勝手に涙が……


 上手いこと喋られへん……

 こんな話、泣きながらやったら ちっともおもろい事ないよな……




 もう堪えきれんかった。



 ペルに抱きつきながら声を上げてひたすら泣いた。



 ウチがそうしている間、後ろからはおばあちゃんの涙の音がした。








 どんぐらいそうしとったか。

 ちょっと落ち着いたウチは、もうすっかり暗なった窓の外を見て帰り支度をする。


 「ペルは明日で居れへんくなってまうけど、いつでも遊びにおいでや。」


 おばあちゃんが微笑みながら優しい声をかけてくれる。


 「うん、ありがとう!

 明日はウチも学校サボって来るわ!」



 おばあちゃんは手を振りながらウチを見送ってくれた。

 ウチも手を振り返しながら家へと向かって歩いた、けど


 はぁー、なんか全然家帰る気なれへんな。



 ウチは憂鬱な気持ちで家まで下向いてボーっと歩いとった。



 その時それは突然きた。

 どこ見ても真っ暗でなんも見えん。家とか人も車も全部なくなってもうた。


 そして……目の前には……えらい怪しい扉がたっとった。



 なんやこれ……何が起きてんねん……。

 ここ入ったらええんか?


 ウチは扉へと真っ直ぐ進み、そのドアを開け中に入った。

 するとすぐにドアは勝手に閉まってどっか行ってもうた。


 中は外と(ちご)うて真っ白や。

 なんなんやろ、ここ。


 見たことの無い景色に辺りをキョロキョロと見回していると



 「やあ、初めまして、アヤちゃん。

 普通はもっと警戒してこんなに早く僕の所まで来ないと思うんだけどな。」



 後ろから声が聞こえた。

 振り返ったら膝ぐらいの高さの、なんかようわからん生き物がそこにおった。


 でっかい三角の耳に、クリクリの瞳、体はフワフワの毛で覆われとる二足歩行の………


 なんやこの生き物!めっっちゃ可愛いやん!!

 この色がええ!モスグリーン!!


 「あんたが喋ったんか?めっっちゃ可愛いやん!

 せや!名前!名前は?なんて言うの?」


 ウチはモスグリーンの子に駆け寄って抱き上げながら話す。


 「い、いやもっと聞くべき事が他にあると思うんだけどな…。

 まあいいや、名前は悪いけど教えられないんだ。

 とりあえず降ろしてくれないかな?」



 ウチは可愛さのあまりに抱き上げてしもうたモスグリーンの子をゆっくり下ろす。


 「あー、ごめんごめん!可愛いからついな!

 堪忍やで!でも、今日めっっちゃ悲しい事があってなー、昔拾った猫が、あ!拾った言うてもウチが育てとったんやなくて………」


 モスグリーンの子の前で膝を折り、目線を合わせて撫でながらたたみかけるように話を続けていると


 「待った待った!ストップ!ストーップ!!

 ほんと調子狂うな……。ここはどこーとか、何が起きてるのーとか聞かないの?」


 矢継ぎ早に喋り始めるウチの言葉を遮って言った。


 「そう言えばそうやな……。ここどこなん?一体何が起きてんの?ほかのみんなはどこ行ったん?」


 言われてみれば不思議や。ウチはさっきまで家までの見慣れた道を歩いとったはずやのに。

 そう思って思いついた質問をぶつけてみると待ってましたと言わんばかりに嬉しそうに答えてくれた。


 「そうそう、それそれ。その反応だよ。

まずここは僕が作った仮想空か…「ええ!凄いやん!!

どうやってんの!?ウチにも出来る!?」


 予想もしない出来事にテンションが上がって思わず食い気味に言葉をかぶしてしまう。

 そんなウチを呆れるような目で見つめながらその子はまた喋り始めた。


 「………本題に入ろうか。

 これから君には異世界で生きて行ってもらうんだ。


 ってああもう!無駄話が多くて時間が無くなっちゃったじゃないか!!

 とにかく君はこれから異世界で生きていくんだ!

 そして君には『動物や魔物と心を通わせる』力をあげといたから頑張って生き延びてね!

 じゃあ、いってらっしゃーい!」



 「え?ちょ、待ってや!異世界ってなんなん!?

 魔物!?ほんまに言うてん…




 ウチは唐突に異世界に行く事になった。

 『動物や魔物と心を通わせる力』か……


 もうちょい、はよ欲しかったな………




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