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ヤクザと召喚師  作者: 緑一色
ガラム武術大会編
36/38

頭を冷やせ

久し振りの更新です

ライアックは自分を見下ろす狂助にナイフを放った。

しかし無理な体勢から放ったナイフは狂助の肩を掠めただけだった。


狂助がライアックの顔面に拳を放つ。



ライアックは再び鼻血を出し、地面に叩きつけられた。


しかし、今度はライアックにもアドバンテージあった。

狂助の右肘にカウンターの要領でナイフを突き刺したからである。



先刻までの狂助にならば痛みで隙が出来ていただろう。


体中から放出しているアドレナリンが痛みすらも超える興奮作用となっていたからか、狂助は右腕をだらりと下げただけだった。



そして追撃の左フックをライアックの右頬へと打ち込む。


ライアックはそのままわざと左へ転がり、そのまま起き上がる事に成功した。

そこから更に距離を取り、オークを2匹召喚した。




このオークという召喚獣、奇襲の際には目立った戦果こそ上げなかったがエレナ程度の実力では1匹召喚するのですら苦労する程の複雑な魔方陣を持つかなり強力なものである。


そんな難解な魔方陣を自動書記で正確に、しかも素早く描くことが出来るライアックの召喚師としての腕前は本物であることが良く分かる。


人間の体に似てはいるが遥かに大きく、どちらのオークにも頭に角の様なものが生えている。

右腕の木で出来た棍棒には生物の血がこびり付いており、目で分かる程汚れていた。




狂助はまだ状況を理解していないオークに走り寄る。


手始めに右のオークの顔面に思いっきり助走をつけたドロップキックを喰らわせた。



オークは吠えながら狂助と共に地面に倒れ込む。

オークの顔面は狂助の全身ほどもあり、ガリバー旅行記を髣髴させた。



狂助はまだ目を瞬かせているオークの鼻っ面を思いきり蹴り上げた。


狂助の全身がオークの体液で濡れた。




その狂助の姿はまるで血の池地獄を泳ぎ切った罪人のような鬼気迫る姿だった。



その地獄を泳ぎ切った悪人に天誅を下すのはやはり鬼であった。


左にいたオークはいつの間にか狂助の背後、すなわち右のオークの足元に立っていた。



左のオークは右のオークの頭ごと狂助を振り下ろした棍棒で押し潰した。

右のオークは動きを止めた。

しかし狂助の細胞は棍棒がどかされた時には生き返っていた。



狂助がライアックを睨めつけるが、それと同時に再び彼の細胞は死に絶える。

オークが不思議そうにもう一度棍棒を振り下ろしたからである。


完全回復を知らないオークからしてみれば狂助は畏怖の対象でしかない。


狂助が生き返るたびにオークは何度も壊れる事のない玩具を叩き潰す。




狂助は何度も殺されながらライアックへと一歩一歩近づいて行った。


ライアックはふとパラパラ漫画を思い出した。



狂助が一歩進めば棍棒が振り下ろされる。

また一歩進めば棍棒が。

さらに一歩進めば棍棒。


狂助も初めの内は痛みに耐えながら歩いていたが、徐々に痛みに慣れ、再びライアックへの敵意を剥き出しにし始めてきた。




突如赤い雨が降り注いだ。


狂助とライアックがほぼ同時に空を仰ぐ。

そこには喉に突き刺さった氷の刃を必死に引き抜こうとしているオークの姿があった。


例え刃を引き抜けたとしてもその命は短いだろう。



唖然としているライアックのわき腹を鋭い蹴りが襲った。






















狂助の脳はオークに突き刺さった氷を見てようやく通常運行に戻った。

と、同時にライアックへと振り向く。


ライアックは右わき腹を抑えながら見当違いの方向を凝視していた。


何をしている。相手はこっちだ。

狂助は思わずそう言いそうになった。



ライアックの視線の先には盗賊ジル・ネイロンがいた。


ジルはライアックの方を見たままでエレナに言い放った。



「時間ギリギリかな?

ストーカー退治だけじゃ給料分には程遠いからさ。

ちょっとエクソシストの真似して悪魔祓いでもしてみようかなーって」


ジルが腰に差してあったナイフを抜く。

奇しくもナイフ使い同士の戦いとなりそうである。



「おかえりなさい、そしてありがとう、ジルさん」


エレナの声がひどく近くから聞こえた。


驚いて振り返ってみれば目と鼻の先にエレナはいた。



そこで狂助はふと思い返す。


自分がライアックの相手をしている間、エレナ、それにゼブラスとネイクはどこにいたのか。

その旨を尋ねるとエレナはため息を一つ。


「ずっと狂助さんの後ろをついて行ってましたよ。やっぱり気付いてなかった」



更に言葉を続けようとしたエレナへゼブラスが呼びかける。

エレナはゼブラスとネイクに安全なところで休んでいるように指示して再び狂助に向き直った。


「お前こそ安全地帯にいた方が良いんじゃないか?」


エレナが鼻で笑う。


「リーダーこそ後ろでどっしり構えてるべきでしょう」


「俺は特別だ。

それに直久のかたき討ちをしないといけないしな」


「ようやく頭が冷えたと思ったのに・・・・・・どうやらまだみたいですね」



エレナは思いっきり息を吸う。


「頭を冷やせ!!」





エレナは狂助の右頬を引っ叩いた。

狂助は何とか頬だけで衝撃を受け止めたもののこのまま倒れ込みたいような気分になった。


エレナのビンタは今まで受けたどんな痛み以上に強く長く残りそうだった。


エレナが狂助の倒れる事を許さず、和服の襟を掴む。




「何1人で馬鹿みたいに突っ込んでんだ!?死にたいのか!?

死なないからって調子に乗んな!!

素手で悪魔と、しかもたった1人で戦って勝てる訳ないだろ!!この馬鹿!!

ボスなんだから常に冷静でいろ!!

分かったか!?」



エレナは男言葉で狂助の体を揺らしながら言い切った。

狂助は目をパチクリさせながらも何とか一度だけ頷いた。



途端にエレナは意地悪そうに笑いながら続けた。


「私と狂助さんの立場が逆だったら絶対にこう言いますよね」



言い終えてエレナは何が可笑しいのか大声で笑い始めた。

思えば彼女が狂助の前でこんなに真剣な表情を見せたのも涙が出るくらい大笑いしたのも初めてだ。


エレナは少しずつだが狂助に信を置き始めており、そして心を開きつつある。



そう思うと狂助は自然と顔が綻んだ。

そして未だに笑いつづけているエレナの頭を叩く。



「痛っ。何するんですか」

「お返しだ、ボケ。笑い過ぎだ」


「だって狂助さんに初めて一泡吹かせてやれたのがもう可笑しくて可笑しくて」


そう言ってエレナはまた少し笑った。


再びエレナの頭を叩く。


そして見当違いの方向を向きながらボソボソと話し始めた。



「何と言うか、その・・・・・・今まで我儘で無鉄砲で頼りないボスで悪かったな」

「ようやく自覚してくれました?」



狂助は三度エレナの頭を叩く。

そして、そのまま彼女の金髪を滅茶苦茶にかき回し始めた。



「あっ!ヘアースタイルが乱れるじゃないですか!」


エレナは堪らずに狂助から距離を取った。

そして、小さく

「すぐに調子に乗るんだから」

と、呟いた。



狂助はジルとライアックの戦いへと目を向ける。


どうやらほぼ互角の勝負をしているようだ。

しかしあのままでは決着がつく頃にはあちらもこちらもガードに捕まってしまう。



狂助は決心した。


「エレナ・・・・・・俺が前にお前に言った事を覚えてるか?」


エレナはそれを聞いて不敵に微笑んだ。



「奇遇ですね。

私も同じことを思い出しました。

狂助さんの能力をフルに活用させてもらうあの案、ですよね」



「・・・・・・俺より先に思いついてたのかよ」



狂助は恥ずかしそうに頭を掻いた。

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