反撃開始
狂助は逃げた男を無視して、片目の狼一味を見た。
それに反応して、リーダー格の男以外は仰け反った。
狂助は着ていたアロハシャツをリーダー格の男に見せた。
まだ分からない事は沢山あるが、狂助はとりあえずこの男たちを追い払うことにした。
「おい、お気に入りのシャツに穴が開いてるんだが?どうしてくれるんだ?」
脅し文句だと思っていたがどうやら少しはショックを受けたようだった。
「そうかそうか。なら、俺の革ジャンやるよ」
そう言ってリーダー格の男がポンと革ジャンを脱ぎ、狂助に投げた。
その一瞬でリーダー格の男は狂助との距離を詰め、首に突きを繰り出した。
見事に狂助の首を捕えた。
だが、リーダー格の男には手応えが無かったことは分かっていた。
狂助は右手で顔に被っている革ジャンをどけた。
すると、リーダー格の男以外にも何が起きたかが分かった。左手で男の突きをいとも簡単に止めていた。
「その程度か?盗賊ちゃん!!」
今度は狂助の蹴りがリーダー格の男の腹に入った。
「おぼえっ!!」
「どうした?革ジャンくれるんだろ?早く渡してくれよ!
片目の狼だなんてダサい組の名前だな。暴走族かってんだよ」
狂助は倒れこんでいるリーダー格の男に蹴りを繰り出した。
何度も短い悲鳴を上げていることなど気にも留めずに狂助は蹴りを入れるのを止めない。
「この・・・・・・!!」
リーダー格の男は右フックで反撃してきた。
だが、狂助はそれを紙一重でかわして、男の顔面に左ストレートを入れた。
「ん?どうした?鼻血ブーの感想でも言ってみたらどうだ?」
怒りから男は遮二無二突進してきた。
狂助は突進を受け止めると、そのまま2発膝蹴りを入れた。
狂助は楽しそうに笑っている。
その様子は異様だったが、少女は何故かホッとした。
「お前・・・・・・片目の狼のリーダー・・・・・・ゲイルをなめるな!!!!!」
そう言うと、ゲイルの体から茶色の毛が生え、爪が尖り、牙が伸び始めた。
それを見て、少女は叫んだ。
「いけない!!その人は能力者です!!早く離れてください!!」
「えっ?能力者?」
狂助がそう言った時にはゲイルは狂助の喉笛に喰らいついていた。
「があっ!!・・・・・・」
普通ならここで狂助の喉から鮮血が噴水の如く噴き出ていただろう。ゲイルの口内には確かに血肉を喰らった感触は残っている。
しかし、狂助の喉からは肉どころか一滴の血さえ流していない。
その現象にはゲイル以上に狂助自身が驚いていた。
「あっ?また?・・・・・・がっ」
だが、何故か狂助の呼吸は苦しかった。
(何だか分からないがこの距離からなら・・・)
彼は既に口から言葉が出ない事を知っていたので、心の中でそう呟いた。
そう思い、狂助は右手を後ろに引いた。空手の突きに似ているが喧嘩殺法のため、全くの別物と化している。それにゲイルも気づいた。
「やっ・・・・・・やめろ・・・・・・やめてくれ!!!!!」
(そりゃ無理だ!!!)
狂助は右拳を一気に前に突きだした。
ゲイルはさっきの狂助を刺した男と同じように宙を舞い、校舎に激突した。
だが、その威力はさっきの狂助を刺した男の時の威力の比じゃない。ゲイルはとっくに気絶している。目、鼻、口、ありとあらゆる穴から血が流れ始めた。目は白目を剥いている。
「ボ・・・・・・ボスが・・・・・・やられた」
「それじゃ・・・・・・俺達が・・・・・・束になっても・・・・・・」
悲鳴を上げ、片目の狼一味が逃げ出したのはそれからすぐの事だった。
その姿を見て、狂助は地面にへたり込んだ。
すると、少女がハンカチを差し出した。
「どうぞ・・・・・・」
「ありがとう」
「・・・・・・とりあえず、説明します」
「それより先に寝させてくれ。えっと、名前は?」
「エレナ・Ⅴ・クリューズ・・・・・・です。・・・・・・向こうの宿屋に予約を入れておきます」
「頼む、エレナ」
狂助はどうやら宿屋に行く前に寝るようである。
狂助は青い空に一瞥をくれ、静かに目を閉じた。




