片桐組勢揃い
「えー、グリフォンにオークに・・・・・・あの向こうに居るのは」
「リトルドラゴン。性質の悪い化け物ばかりであるな」
「2人とも一番大事な事忘れてます。私たちの周囲に大量のトカゲは?」
ネイクとゼブラスは声を揃えてサンドリザードの名を出した。
エレナの言うサンドリザードとは狂助たちを襲ったトカゲのことを指す。
このサンドリザードという生物、動くものに過剰に反応する。
その為、エレナ達は大量のサンドリザードに囲まれた状態で動けずにいるのだ。
ライアックという男が先程唱えていたのは大量の召喚獣を一斉に召喚する呪文だった。
たまたまそれを覚えていたエレナが呪文の詠唱の意味に気付き、止めようとしたが時すでに遅し。
闘技場、観客席の両方から大量の召喚獣が召喚された。
そのどれもが下界に生息する、或いは中界で危険生物に認定されているものばかりだった。
そして、そんな化け物が大量に出てきたのだから場内は地獄絵図と化している。
召喚からかなり時間が経っているが、未だ人々の悲鳴は絶えず聞こえる。
辺りに漂う血の匂いを嗅ぎ、人々の断末魔を聞いてもエレナはまだ希望を捨てていなかった。
「ゼブラスさん、ネイクさん。何秒足止めできますか?」
「エレナ殿?」
「私に考えがあります。20秒・・・・・・いや、15秒でいいので時間をください」
自分たちの話声でサンドリザードが襲い掛かってくるのではと、エレナは心配したがその心配は杞憂だったようだ。
サンドリザードはお行儀よくその場に立ち尽くしたままだ。
ゼブラスとネイクはしばらく顔を見合わせ、同時に動いた。
まずはゼブラスが今ではお馴染みとなった炎の魔法、炎球で先頭のサンドリザードの集団を焼き殺す。
今日の炎球はいつも以上に大きい。
直径3mはあるだろうか。
先頭集団は炎球に飲み込まれていった。
それを合図に残りのサンドリザード達も動き出した。
動き出したサンドリザード達には特大の氷刃をぶつけた。
ゼブラスの取りこぼしはネイクが愛用のサーベルで切り殺した。
サーベルはすぐに真っ赤に染まったが、ネイクは無表情でサンドリザード達を切り続ける。
とにかくエレナにサンドリザードを近づけさせてはいけない。
2人とも必死にそう考えながら、サンドリザードの大群を迎撃した。
「15秒ってこんなに長かったか?」
ゼブラスはふと思い出したかのように軽口を叩く。
「それは私も考えていたことであった!」
ネイクも同じように軽口で返した。
ネイクとゼブラスがサンドリザードの相手をしている間にエレナはサンドリザードの大群の中に自動書記で2.5m四方の魔方陣を描いていた。
そして、魔方陣はエレナの宣言した通りきっかり15秒後に出来上がった。
「出来ました!」
エレナの感動を含んだ声と同時に魔方陣が淡い紫色に輝き始めた。
すると、突如そこから巨大なカラスが現れた。
カラスが羽を広げると風圧でサンドリザード達は四散し、少しの空間が出来た。
エレナは素早くカラスの背中に飛び乗り、ゼブラスとネイクに呼びかける。
「2人も早く乗ってください」
ネイクはキリの良いところで、サンドリザードに背を向け、走り出した。
その背中を追ってサンドリザードも走り出す。
だが、ネイクを追っていたサンドリザード達はゼブラスの炎球によってかき消された。
その隙にネイクはカラスの背に乗り、ゼブラスもカラスの元へと走り出す。
ゼブラスは自分もカラスの背に乗ると、再び魔法を発動した。
「土壁」
ゼブラスのすぐ目の前の地面が隆起し、高さ5mはある土の壁となった。
壁が邪魔して一時的にサンドリザード達の歩みは止まった。
カラスは羽を広げ空へと飛び立った。
「なるほど・・・・・・確かに空中ならサンドリザードの襲撃は受けぬな」
ネイクは感心して頷いた。
「でも、この召喚獣、ヤタガラスって言うんですが実はまだ子供なのであまり長い時間飛んではいられないんです」
「これで子供かよ」
ゼブラスは驚き、ヤタガラスの身体を見やる。
ヤタガラスは羽を閉じていた状態でも優に2mはあった。
大人は更に大きいと言うのだろうか。
「何分が限度なのだ?」
「多分、5分が限界かと思われます」
そう言われてみるとヤタガラスは苦しそうに飛んでいるようにも見えないこともない。
「大人のヤタガラスを召喚するわけにはいかなかったのか?」
「時間がかかるので・・・・・・ちょっとあの状況では」
「そうか。まあ良い。
とりあえず俺の魔法で出来る限り敵の数を減らしておく」
そう言い終えるとゼブラスはすぐに呪文の詠唱を始めた。
「まあ、単純ですが一番効果ありそうですね」
ライアックは下唇を噛みしめ、怒りを露わにしていた。
召喚獣を大量に召喚し、ここに自分たちテロリスト集団の存在を誇示し、あわよくばこの町を占拠するというのがライアックに与えられた仕事だった。
ジンの任務失敗の事もあり、ライアックは自分の株を上げるチャンスだと野心に燃えていた。
だが、現在予想外の出来事が2件も起きており、ライアックは怒っていた。
まず第一に武術大会にいる警備員の実力を舐めていたことだ。
グリフォンやオークの数はまだ減っていないが、サンドリザードの数は現在では当初の4分の3の勢力もない。
それに誰が呼んだのかどうやら既にガード本部からも支援が行われているようだ。
恐らくこの会場にガードの幹部クラスが1人や2人いたのだろう。
だとすると、この幹部クラスも十分厄介である。
次に突然現れたヤタガラス。
現在はどちらかというとこちらの方が厄介だ。
今分かっているだけでもヤタガラスには2人乗っている。
1人はヤタガラスを召喚したであろう召喚師。
もう1人は恐らく魔法使い。
この魔法使いが先ほどからこちらを攻撃してきている。
両方を使えるのが1人という可能性もあるが、その可能性は極めて低い。
「くそ、くそっ」
ライアックは思わず怒りを口に出していた。
ふと右を見るとついに1匹のオークが犠牲になった。
ヤタガラスからの魔法、恐らく氷刃によってオークの身体は貫かれた。
ついにライアックの堪忍袋の緒が切れた。
ライアックはヤタガラスに向かってナイフを投げた。
だが、怒りにまかせて投げたナイフ等、ヤタガラスにすらかわすことは簡単だった。
「くそっ!!」
「どうしたんですか?そんなに怒ると老けますよ?」
ライアックは素早く声の主の方にナイフを投げた。
だが、それすらもかわされる。
「何で・・・・・・何でこんな・・・・・・」
蜂蜜色の髪の男はサディスティックに笑うと、自慢げに語り始めた。
「こう見えても俺はガードの幹部なんですよ。№6、レイヴン・K・ロッドルです。よろしく~」
「お前がガードを呼んだのか!?」
「半分当たりってとこかな。この前衛部隊は多分ヴェロニカさんの粋な計らいだと思うんだよな。ジンって知ってる?君の仲間の」
「あいつ!!」
「そう、予想通り。
尋問の結果、彼は色々答えてくれたよ。君達テロリストの構成員の数に始まり、今回の作戦、この後1か月の活動予定、構成員の名前まで吐いてくれた」
「あの屑が」
「いや、屑はまだテロなんてしようとまだ考えてる君の方だよ。本当、馬鹿だね」
ライアックは再び何本かのナイフをレイヴンに投げた。
「だから、当たらないって」
レイヴンは今度は全てのナイフの柄を掴んだ。
そのまま得意げにナイフでお手玉をしてみせた。
怒り狂うライアックを見て笑っていたレイヴンは突然、笑みを絶やした。
レイヴンの視線はライアックのすぐ後ろに向いている。
ライアックもすぐにその視線に気づき、後ろを振り返る。
そこには年齢も性別もバラバラの3人組がいた。
その中の1人、片桐狂助が口を開く。
「またお前かよ」
すると、レイヴンも応える。
「ええ、また俺ですよ」
そこへヤタガラスが3人組の傍へと降り立つ。
エレナ達がヤタガラスから降りるとヤタガラスは何処かへと飛び去って行った。
それを確認した狂助が高らかに宣言する。
「片桐組、全員集合!!」
「ん?それって8時に言うもんだってキョースケ言ってなかったっけ?」
「うるせー」
狂助は思いっきりジルの頭を叩いた。




