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役立たずの文字食い王女と蔑まれた私は、冷酷皇帝にその価値を見出され溺愛される  作者: プラナリアになりたい
第一章 役立たずの文字食い王女と蔑まれた私は、冷酷皇帝にその価値を見出され溺愛される
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忍び寄る破綻、干上がる王都運河

 ガルディニア帝国の帝都オイレンベルクに広がる朝の光は、冬の澄み切った大気を透かして、黒曜宮の壮麗な回廊を白銀色に染め上げていた。

 宮殿の東翼に位置する『円卓大議場』。

 重厚な黒檀の扉をくぐり抜けたフィリアは、室内に漂う厳粛な緊張感に身を引き締めながら、静かに歩を進めた。

 今日の彼女が纏っているのは、帝室から支給された特別顧問官の正装であった。

 深い濃紺の上質なウール地に、袖口と襟元に細やかな銀糸のステッチが施された、簡素でありながら気品に満ちた仕立てである。

 かつてルベル王宮で着古していた、綻びを自分で繕った薄っぺらな麻のワンピースとはまるで違っていた。

 肩のあたりで綺麗に梳き揃えられた亜麻色の髪には、控えめな銀のピンが留められている。

 その姿には、もはや地下室の埃にまみれていた「日陰者」の影はなかった。


「フィリア顧問官、こちらへ」


 円卓の脇で書類を整理していた助手のベルンハルトが、敬礼とともに椅子を引いた。

 帝国の最高政務会議。

 居並ぶのは、軍務尚書、内務卿、法制局長官、そして各方面軍を統括する歴戦の将軍たちである。

 いずれも大陸にその名を轟かせる帝国の重鎮たちであった。

 かつてのルベル王宮であれば、側室の娘など一歩足を踏み入れることすら許されず、もし入り込もうものなら「不浄な日陰者が」と罵声を浴びせられて衛兵に引きずり出されていた場である。


 だが、この円卓に座る帝国高官たちの誰一人として、フィリアを侮るような目を向ける者はいなかった。

 それどころか先日のアウグスタ大水門で、フィリアの読解をもとに工務局が復旧へ成功したことを知る彼らは、彼女が席に着くと同時に、一人ひとりが威厳を保ちながらも礼儀正しく会釈を返してきたのである。


「皇帝陛下、御入御」


 近衛兵の鋭い号令とともに、室内の全員が一斉に起立した。

 大股で議場へと入ってきたレオンハルトは、黒の軍服姿に佩刀を帯び、冷徹な灰銀の髪をなびかせている。

 その歩みには一切の迷いがなく、若き覇王たる絶対的な存在感が議場全体を支配する。

 レオンハルトは玉座の前に立つと、冷ややかに黄金の双眸を巡らせた。


「座れ」


 全員が一糸乱れぬ動作で着席する。

 レオンハルトは肘掛けに軽く腕を置き、淡々と口を開いた。


「本日の第一議題は帝国西方国境における古来の領有権確認、ならびに各属領との、古い誓約文書の再精査についてだ。フィリア顧問官」


「はい、陛下」


 指名を受け、フィリアは滑らかな動作で立ち上がった。かつての自分であれば、大勢の視線を向けられただけで恐怖に喉を詰まらせていたはず。

 だが今、彼女の背筋はすっきりと伸びていた。

 帝都へ来てからの日々、自分の読解が専門家たちの判断材料となり、実務の助けになることを実感してきた。

 それは彼女の中に己の職責に対する静かな誇りと、自信を育んでいたのだ。


「西方国境、特に旧ヴェルナー峡谷周辺の境界線について、建国初期の神聖文書を解読いたしました」


 フィリアは手元の羊皮紙を広げ、澄んだ、よく通る声で報告を始めた。


「これまで帝国法制局では、第三代皇帝期の条約碑文にある『境界の標石』を、峡谷の中央を流れる河川であると解釈してまいりました。しかし、該当する古代神聖語の単語は、河川そのものではなく『太古の伏流水路の基部』を指す名詞であることが判明いたしました。これにより、先方が主張する領有権の境界は、帝国側が保持する正当な防御壁の内側に完全に含まれることが、古代法の文理解釈上、明白となります」


 淀みのない説明、そして根拠となる原典の構文解析の提示。法制局長官が眼鏡を押し上げながら、感嘆のため息を漏らした。


「なるほど……。四十年近く、近隣諸侯との間で燻り続けていた境界紛争の文言の曖昧さが、わずか数行の正しい翻訳によって完全に解消されたというわけか。これならば、法理の面で我が帝国に一点の瑕疵もない」


「素晴らしい知見だ。軍を動かすまでもなく、書類一枚で国境の正当性を証明できるとはな」


 軍務尚書も満足げに頷く。議場の全員が、フィリアの明晰な頭脳と分析力に惜しみない敬意の視線を送っていた。

 レオンハルトは無表情のまま、しかし、その黄金の瞳の奥に確かな満足の色を宿して頷いた。


「これより西方諸侯との境界確定交渉は、フィリア顧問官の解釈に基づいて進める。大義名分はこちらにある。反論は許さん」

「御意に」


 皇帝の即断に異論を挟む者は誰もいなかった。

 フィリアが席に戻ると、レオンハルトの視線がわずかに彼女へと注がれた。声には出さずとも、その瞳の微かな揺らぎがフィリアには不思議と理解できた。

 胸の奥に、ほんのりと柔らかな温かさが広がる。自分を信じ、その知性に全幅の信頼を寄せてくれる主君がいる。

 それだけで、かつて暗い地下で味わった孤独の痛みが、静かに洗い流されていくようだった。


  ◇


 同じ頃、西方の大陸を隔てたルベル王国の王都ルベルハイムは、かつてない異様な悪臭と混沌に覆い尽くされていた。

 王都の中央を貫き、市民の生活用水と水上交易のすべてを支えていた『大ルベル運河』。

 かつては白亜の街並みを映し出し、無数の物資を満載した平底船が優雅に行き交っていたその清冽な水面は、今や見る影もなくなっていた。


「ひどい匂いだ。鼻が曲がりそうだよ」

「水が……水が完全に干上がっているぞ! 見ろ、船が泥に突き刺さって動けなくなっている!」


 石造りの太鼓橋の上に集まった市民たちが、ハンカチで鼻口を押さえながら、眼下に広がる惨状を指差して騒ぎ立てていた。

 運河の水位は、わずか数日の間に数メートルも急降下していた。

 水流が途絶えた川底には、黒ずんだ汚泥と腐敗した水草が剥き出しになり、強い日差しに照らされて耐え難い腐敗臭を放っている。

 近隣諸国から穀物や木材を運んできた数十隻の大型商船は、泥濘に足を取られて傾き、積み荷を降ろすことすらできずに座礁していた。


「おい、王宮は何をやっているんだ!」

「食料の船が入ってこないせいで、小麦の値段が昨日の三倍に跳ね上がったぞ!」

「水門はどうなってるんだよ! 王宮の魔導士どもは何をしているんだ!」


 怒号は瞬く間に街全体へと伝播していった。

 運河の物流停止は、王都の経済を根底から麻痺させつつあった。

 飲料水用の井戸の水位までもが連動して低下し、下町の広場では水を求める市民の怒号と混乱が渦巻いていく。

 そして、その元凶を生み出した現場である、王都地下の『水神の回廊』――。

 カビと湿気に満ちた地下空間で、外務卿代理ユリシーズは、泥に汚れた礼服の裾を気にしながら、怒り狂って叫んでいた。


「なぜ動かん! ただの鉄の弁だろうが! 力づくで引き上げろと言ったはずだ!」


 ユリシーズの目の前には、ルベル王国建国期から地下水路を統括してきた、巨大な古代水門の制御盤があった。

 だが、その青銅の操作クランクには、太い鉄のバールが何本も無理やりに噛み合わされ、無残にひしゃげて折れ曲がっている。

 周囲の石壁には、近衛兵たちが力任せに振るった槌の打痕が無数に刻まれ、古代の魔導回路を物理的に叩き壊した跡が痛々しく残されていた。


「も、申し訳ございません、ユリシーズ閣下……!」


 王室直属の土木技師が、泥まみれの顔を青ざめさせて平伏した。


「閣下の『力づくで開けろ』とのご命令に従い、兵士たちにクランクを無理やり回させようとしたのですが……内蔵されていた古代の防護安全機構が『破壊工作』と誤認したらしく、緊急遮断弁が完全に落下してしまいました! 物理的なロックがかかり、もはや人力や通常の打撃ではビクともいたしません……!」


「貴様らの工夫が足りんのだ! 爆破魔導を使ってでも吹き飛ばせば済む話だろう!」


「滅相もございません! そんな真似をすれば水路の基部が崩落し、王都の地下全体が水没するか、あるいは二度と水が通らなくなって王都が永久に干上がってしまいます!」


「役立たずどもが! 言い訳ばかり並べおって!」


 ユリシーズは激昂して技師を蹴り飛ばした。だがいくら怒鳴り散らそうと、頑として青銅の水門は動かず、開きはしない。

 壁面に刻まれた古代神聖文字は、過剰な負荷によって不気味な鈍色の燐光を明滅させている。

 そこには、緊急解除のための正規呪文と手順が刻まれているはずだった。

 しかしその文字を読める者は、このルベル王国のどこを探しても、もう一人もいなかった。


(なぜだ……! なぜこんなことになっている!)


 ユリシーズは自らの額に滲む冷たい汗を手の甲で拭った。

 かつて、王都の運河の水位が乱れることなど一度もなかった。

 どんな日照りの年でも、どんな豪雨の季節でも、水門は常に最適な開度を保ち、王都には清らかな水が巡り続けていたはずだった。


 ――まさか、あの日陰者がやっていたのか?


 脳裏をよぎった疑念を、ユリシーズは即座に激しい怒りで打ち消した。


(あり得ん! あんな、地下室で埃にまみれて古紙を眺めていただけの女に、王都の動脈を管理できるはずがない! 何かの偶然だ…… たまたま水門の老朽化が、この時期に重なっただけに決まっている!)


 自分の無能と失策を認めることなど、名門アルスター公爵家の誇りが許さなかった。

 ユリシーズは舌打ちを響かせ、地下の悪臭から逃れるように階段を駆け上がっていった。


  ◇


 しかし、地上へ戻ったユリシーズを待ち受けていたのは、さらなる破綻の連鎖であった。

 白亜の王宮、豪奢な装飾で飾られた『薔薇のサロン』。

 そこでは、第一王女エレオノーラが、狂乱した様子で磁器のティーカップを床へ投げつけていた。甲高い破砕音が響き、高価な紅茶の染みがペルシャ絨毯を汚す。


「どういうことですの!? 説明なさい、ユリシーズ!」


 金糸の髪を振り乱し、エレオノーラは部屋に入ってきたユリシーズに詰め寄った。

 その手には、周辺諸国や王国内の有力貴族たちから届いたばかりの、山のような書簡が握りしめられていた。


「わたくしたちの婚約披露の祝宴まで、もう半月もありませんのよ!? だというのに、届いた手紙はすべて『出席辞退』ばかり! それどころか、北方諸侯連合からは『正式な神聖語による関税条約の更新がなされぬ以上、婚姻の儀への参列など言語道断』とまで書かれていますわ! このわたくしに恥をかかせる気ですの!?」


「エレオノーラ殿下、落ち着いてください……!」


「落ち着いていられますものですか! 王都の運河が干上がったせいで、わたくしが隣国に特注していた婚礼用の最高級シルクも、宝石の飾り針も、船が止まって届かないのですのよ!? 街からはドブのような悪臭が漂ってきて、サロンの窓すら開けられませんわ! これのどこが『完璧な婚礼』ですの!」


 エレオノーラは金切り声を上げて地団駄を踏んだ。

 彼女にとって重要なのは、自分が世界の中心として称賛され、美貌と富を誇示することだけであった。

 王都の民の苦しみや経済の麻痺など、自分のドレスや祝宴の遅れに比べればどうでもよい些事に過ぎなかった。


「殿下、これには不可抗力の事情が……」

「言い訳など聞きたくありませんわ! 貴方は外務卿代理でしょう!? 諸侯への書簡など、昔のようにさっさと片付ければよろしいではありませんの!」

「それが、できないのです!」


 追い詰められたユリシーズが、思わず声を荒らげた。


「諸侯連合が突きつけてきた過去の約定条項……あれはすべて、古代神聖文字の厳格な書式で記されております。過去数十年間、我が国が諸侯へ送っていた外交親書の下書きは……すべて、あの旧離宮にあったのです! あそこの書類が読めない以上、正式な返答状の作成すら不可能です!」


「な……なんですって?」


 エレオノーラは目を見張り、信じられないものを見る顔でユリシーズを凝視した。


「旧離宮……? あんなゴミ捨て場のような場所に、なぜそのような重要書類が?」

「歴代の王室が、誰も読めない古い書類を、すべてあそこに押し込めていたからだ!」

「……では、今まではどうしていたのですの? 去年も、その前も、外交親書は滞りなく作成されていたはずでしょう?」

「それは……」


 ユリシーズの喉が、引きつったように詰まった。

 言えるはずがなかった。

 今までは、外務省の役人たちが「これの意味を書き写しておけ」と旧離宮の地下へ放り投げておけば、翌朝には完璧な現代語の対訳と、寸分の狂いもない神聖語の返答文の草案が、机の上に整然と揃えられていたなどとは。

 自分たちが見向きもせず、雑用と見下して押し付けていたその作業こそが、王国の外交と条約のすべてを裏で支えていたのだとは。


「――ええい! 騒々しいぞ、お前たち!」


 重々しい怒声とともに、サロンの扉が押し開かれた。

 姿を現したのは、豪奢な王冠を傾かせ、顔を怒りと焦燥で真っ赤に染めた現国王であった。背後には、正妃と王室の財務卿が青ざめた顔で付き従っている。


「お、お父様!」

「陛下……!」

「ユリシーズ卿! 街の惨状をどう説明するつもりだ!」


 国王は手にした金の杖を床に激しく叩きつけた。


「商業ギルドから抗議が続いておる! 運河の通行量はこの数週間で落ち込み、食料の搬入も遅れ、物価はじわじわと上がっている。北方諸侯との関税交渉まで停滞し、国庫への圧迫も無視できぬ! 水門はどうなったのだ!」


「へ、陛下。水門は……古代の機構に予期せぬ不具合が生じておりまして、現在技師たちに原因を調査させております……!」


 ユリシーズが必死に弁解するが、財務卿が震える声で遮った。


「工務局の古い業務日誌と保守記録を照合したところ、原因が分かりました。水門そのものの定期保守は歴代の工務技師が行っております。ただし、安全弁を解除する際の条件と操作順だけが古代帝国文字で記され、近年は意味を正確に読める者がいなかったのです」


「何だと!? では、誰が今までその手入れを行っていたのだ!?」


 国王の問いに、財務卿は唾を呑み込み、恐る恐る口を開いた。


「……第三王女フィリア殿下が、旧離宮でその手順書を読んでおられました」


 サロンの中に水を打ったような静寂が落ちた。


 国王は目を丸くし、エレオノーラは扇を取り落としそうになりながら硬直した。


「……フィリア……? あの日陰者の娘が……?」


「先代技師の死後も現場は経験則で運用していましたが、担当交代の際に引継ぎが途切れました。フィリア殿下は以前、旧離宮に残されていた原本を読み、危険時の手順を数度説明した記録があります。ですが、その知識を工務局が正式な手順書として残さなかった。そこへユリシーズ閣下が『読めぬなら力づくで開けろ』と命じ、鉄棒を噛ませたため、安全装置が破損・停止したというのが真相でございます」


「ば……馬鹿な……!」


 国王はその場によろめき、近くの長椅子に倒れ込むように腰を下ろした。


「そんな話、わしは一度も聞いておらんぞ! なぜ誰も報告しなかったのだ!」

「ほ、報告も何も……」


 財務卿は視線を泳がせながら、蚊の鳴くような声で言った。


「王宮の皆様が、フィリア殿下を公の場から遠ざけ、古文書の知識を正式な職務として認めようとなさらなかったからです。現場も、彼女の助言を一時しのぎとして受け取るだけで、制度として引き継がなかったのです」


 自分たちが積み重ねてきた冷遇。

 儀礼の場から外し、成果を正式な記録に残さず、必要な知識を個人任せにしたこと。

 それらの傲慢な仕打ちのすべてが、今、巨大なブーメランとなって王国の喉首へと突き刺さっていた。


「おのれ……! おのれ、フィリアめが……!」


 エレオノーラが唇を血が滲むほどに噛み締め、怒りで肩を震わせた。


「あの忌々しい小娘……! 自分が水門を管理していると知っていながら、一言も言わずに帝国へ行きおったのですわ! これは王家に対する反逆です! 悪意に満ちた嫌がらせに違いありませんわ!」


「そうだ、その通りだ!」


 ユリシーズもここぞとばかりに便乗し、声を張り上げた。


「あの女は、最初から王国を困窮させるために黙って出て行ったのです! 国境要塞で我が国の使節団を陥れたことといい、すべてはあの女の底意地の悪い復讐に違いありません!」

「ええい、責任の擦り合いなど後だ!」


 国王が蒼白な顔で叫び、机を叩いた。


「運河を直さねば王都が死ぬ! 諸侯との条約を結び直さねば国が破産する! ユリシーズ卿、お前が全権特使として直ちに帝都へ向かえ!」

「わ、私が帝都へ……ですか?」

「当たり前だ! フィリアを連れ戻してくるのだ!」


 国王は血走った目でユリシーズを睨みつけた。


「あの女は我がルベル王家の娘だ! 『第三王女として正式に名誉を戻し、王立古文書院長の地位を与える。水門の原記録を読み直し、古い協定文の解釈を手伝うなら、これまでの不敬は不問にする』と伝えろ! これほど寛大な条件なら、泣いて喜んで帰ってくるに決まっておる!」


「ははっ! 仰せの通りにございます、陛下!」


 ユリシーズは安堵の表情を浮かべ、深く頭を垂れた。

 そうだ。フィリアなど所詮は自分の一言に怯え、地下で縮こまっていた無力な女に過ぎない。


 冷酷皇帝のもとで肩身の狭い人質生活を送っているに違いない。

 第三王女としての名と、王立古文書院長という肩書をちらつかせれば、感謝して戻ってくるに決まっている。


「任せてください。エレオノーラ殿下、陛下」


 ユリシーズは整った顔に、傲慢で浅ましい笑みを取り戻した。


「私が直ちに帝都へ赴き、あの紙食い虫の首根っこを掴んで連れ戻してまいりましょう。我がルベル王国の繁栄は、このユリシーズ・アルスターが守って見せます」


 王宮の外では、干上がった運河から立ち上る悪臭が白亜の尖塔を覆い隠すように濃く、深く立ち込めていた。

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