Interlude II - 不思議に思う -
中間考査最終日の夜。ようやく試験勉強から解放された私は、自室にあるベッドの上に腰を下ろしていた。
机の上には、今日まで散々お世話になった教科書や参考書が積み重なっている。昨日までなら、今頃もあの山と睨めっこしていたはずだ。でも、それも今日でおしまいだ。
「終わったー」
そのまま後ろへ倒れ込み、ベッドに身体を預ける。
結果が返ってくるまでは安心できないけれど、手応えは悪くなかった。未萌も昨日まで散々勉強を教えたのだから、きっと赤点なんてことにはならないだろうと思いたい。
しばらく天井を眺めながら試験から解放された余韻に浸っていると、ふと明日の予定を思い出した。
明日は日曜日。そして、愛葉くんに手伝ってもらうことになってから、初めて一緒に恋愛相談を受ける日でもある。
相談者は、中学時代に同じ学校へ通っていた女の子。未萌から聞いた話によると、幼馴染にずっと想いを寄せているらしく、そのことで相談した
私は身体を起こすと、なんとなく部屋の隅にあるクローゼットへ視線を向けた。
明日は休日だから、当然制服ではない。私服だ。私服で――愛葉くんに会う。
「……服、決めておこうかな」
別に、深い意味はない。明日の朝になってから慌てて決めるのも面倒だし、今のうちに用意しておけば楽だから。うん、ただそれだけ。
ベッドから立ち上がり、クローゼットを開け放つ。
「明日は……これでいいかな」
まず手に取ったのは、白いブラウス。姿見の前に立って身体に合わせてみる。悪くはないと思うのだけど、なんだか少し真面目すぎる気がする。
「こっち?」
次に手に取ったのは、淡い色のトップス。さっきよりは柔らかい印象になる。
「うーん……ちょっと可愛すぎる?」
私は無言で服をクローゼットへ戻した。代わりに別の服を取り出す。
今度はスカートも合わせて、姿見の前に立ってみる。
「これは……」
なんだかデートに行くみたいに見える。
「違う違う」
誰に言い訳しているのかも分からないまま、首を横に振る。
明日は恋愛相談。相談者の話を聞くためにカフェへ行くだけ。
そこに愛葉くんも来るというだけで、二人きりで出かけるわけでもない。だから、服なんていつも通りでいい。
「じゃあ……これかな」
普段からよく着ている服を取り出す。これなら間違いない。
鏡の前で合わせてみて、しばらく自分の姿を見つめる。
「……ラフすぎ?」
やっぱり、違う気がした。
「なんで?」
自分でも分からない。いつも着ている服なのだから、これでいいはずなのに、明日これを着て愛葉くんに会う自分を想像すると、なんとなく別の服の方がいいような気がしてしまう。
「じゃあ……こっち?」
また別の服を取り出す。鏡に合わせる。
違う。戻す。別の服を取り出す。合わせる。
「うーん……」
また戻す。気が付けばベッドの上には、クローゼットから引っ張り出した服が、何着も並んでいた。
「私……なにしてるんだろ」
ただ友達の恋愛相談に乗りに行くだけなのに。しかも、愛葉くんはその手伝いとして一緒に来るだけ。
学校では毎日のように隣の席に座っているし、昨日だって今日だって顔を合わせている。
「なんでこんなに真剣に、服選んでるんだろ……」
自分のことなのに、理由が分からない。私はベッドの上に広がった服を眺めながら、不思議に思うのだった。




