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第35話 墓標番号七番
墓標番号七番は、北壁の外れにある小さな慰霊区画だった。
派手な英雄碑ではない。荷役や測量員、補給兵みたいな、名前が前に出ない大人たちのための石標だ。
七番の前で、俺は木札と通行片、それに地図師の線を合わせた。
石がひとつ沈み、地面の下から細長い箱がせり上がる。
中にあったのは、革と金具でできた古い背負い具だった。
ただの運搬具に見える。けれど触れた瞬間、強い未練が流れ込んできた。
『戦う奴だけが英雄じゃない。運ぶ奴が止まれば、全員死ぬ』
アークの声ではなかった。
多分、補給班の誰かの声だ。
背負い具には荷重を散らす細工がされていた。昇降機で見たあの感覚とつながる。
そして箱の底には、もう一枚の薄い記録板。
『北壁深層搬送路 第三分岐 主荷室』
まだ先がある。
英雄の遺品の本命は、そこだ。
セリアが静かに笑った。
「また深くなるわね」
「ああ」
けれど今度は、闇雲じゃない。
運ぶための道と、返すための荷が見えている。




