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第34話 四十五歳の元補給長
北荷役場の片隅で、荷縄を編み直していた男がいた。
肩幅が広く、指が太い。四十五歳。革前掛けの胸元には、名札代わりにただ『ロム』とだけ打ってある。
通行片を見せると、男の手が止まった。
「それをどこで」
「ケイドから」
それだけで十分だったらしい。
ロムは俺たちを倉庫の奥へ通し、閉まった扉の前で背を向けたまま言う。
「遅かったな」
「拾うのに時間がかかった」
俺が答えると、ロムは苦く笑った。
「回収屋らしい返事だ」
第二封鎖室の記録、アルマへ返した指輪、ギドの手紙。
それらを見せると、ロムはようやく椅子へ座った。
「アークは最後まで、生きて帰るつもりだった。だから補給班にも、絶対に“次の便”を残せと言った」
第七荷はそのための荷だった。
英雄本人の戦利品ではない。深層搬送路の実測図と、補給班用の荷重具。誰かに独占されたら、次に潜る人間が死ぬ。
「だから隠した」
ロムは拳を握る。
「でも全部は守れなかった」
彼が最後に教えてくれたのは、墓標番号七番の場所だった。
「あそこに残した。受け取る資格がある奴だけが、開けられるように」
ロムの目は、ずっと補給長のままだった。




