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第33話 北壁の生還者

逃げ込んだのは、北壁外周の古い石倉だった。


 そこで俺たちは、意外な人間と出会う。


 四十二歳の元搬送警備員ケイドだ。左脚を引きずる男で、こちらの持つ荷札を見た瞬間に顔色を変えた。


「その札、どこで拾った」


「第二封鎖室だ」


 俺が答えると、男は長く黙った。


「……まだ残ってたのか」


 ケイドはアーク最後の遠征から戻った数少ない生還者だった。ただし英雄扱いされた側ではない。荷を運ぶ護衛だったから、帰還後すぐ記録から外されたらしい。


「アークは気づいてたよ。評議会側に、遺品目当ての連中がいるって」


 だから荷を分けた。


 剣も、記録も、補給具も、一か所へ集めないように。


「ロムが一番動いた。あいつは四十五になっても頑固な補給長だった」


「生きてるのか」


 ケイドは頷く。


「港の北荷役場にいる。名前を変えてな」


 そして、小さな真鍮片を差し出した。


 北壁搬送路の通行片だ。


「これがあれば、あいつは会う。多分な」


 生還者は、まだ残っていた。


 消された側にも、ちゃんと続きがある。


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