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第18話 英雄の剣は誰のものか
光石を剣の根元へ差し込むと、祭室全体に低い振動が走った。
封印鎖が一本ずつ解け、突き立っていた大剣がわずかに浮く。
「まさか抜く気?」
セリアが言う。
俺は柄に手をかけた。
その瞬間、腕の中へ熱が雪崩れ込む。
アークの記憶だ。
斬るための力じゃない。守るために踏み込む角度。重い剣を扱う体の芯。自分だけではなく、後ろにいる誰かの道を切り開くための一太刀。
《断空の構え》。
英雄のスキルの欠片。
剣そのものは重く、今の俺には扱いきれない。だが技だけは、確かに受け取った。
『剣は証だ』
アークの最後の未練が、静かに響く。
『持ち去れ。隠させるな』
剣は武器というより、真実そのものだった。
ここに英雄の記録が残り、なおかつ封じられていたという証拠。
「持って帰るわよ」
セリアが迷いなく言った。
「運べるか」
「回収屋がいるじゃない」
確かにその通りだ。
荷重歩法を使い、重さを分散させて背負い具を組み直す。トーマが残した革紐まで使うと、不思議なくらい剣の重みが収まった。
死んだ荷運びの工夫で、英雄の剣を運ぶ。
変な組み合わせだ。
でも多分、こういうのが俺のやり方なんだろう。
地上へ戻る途中、索敵に複数の気配が引っかかった。
ガルドたちだ。
先回りされている。
「来るわね」
「ああ」
英雄の剣を背負ったまま、俺は短剣を握る。
今度は逃げるだけじゃ終わらない。




