第17話 墓守巨兵
祭室の奥から現れたそれは、人型だった。
だが人ではない。
石と金属で組まれた三メートル近い巨兵。胸にはアークの紋章、両腕には封印鎖。目の部分だけが青白く光っている。
墓守。
英雄の遺品を守るための番兵だろう。
「来る!」
セリアが叫ぶ。
巨兵の剣が振り下ろされ、床が砕けた。
正面から受ければ終わりだ。
俺は索敵で動線を読み、荷重歩法で横へ流れる。セリアが側面から切りつけるが、外装が固い。火花だけが散った。
「関節だ!」
俺が叫ぶと、彼女はすぐに狙いを変える。
だが巨兵は予想以上に速い。片腕の鎖を振るい、祭室の柱を薙ぎ払った。
崩れる石片の中、俺の魔力視が巨兵の内部を走る一本の光を捉える。
胸から右脚へ流れる主線。
「あそこだ」
「どこ!」
「右膝の内側!」
セリアが踏み込む。
だが一歩届かない。
その瞬間、俺の足が勝手に前へ出ていた。
前衛ってね、後ろに立たせたくないものがあるから立つの。
セリアの言葉が頭をよぎる。
俺は巨兵の鎖をかいくぐり、短剣を右膝の継ぎ目へ突き立てた。
硬い。
それでも刃先が少しだけ食い込む。
「セリア!」
次の一撃は彼女が決めた。
剣閃が継ぎ目を深く裂き、巨兵の体勢が崩れる。
なおも立ち上がろうとする胸部へ、俺は祭室の壁から外した封印杭を叩き込んだ。
青白い光が弾ける。
巨兵は大きく揺れ、それからようやく沈黙した。
荒い息の中、セリアがこちらを見る。
「今の、完全に前に出たわね」
「出るしかなかった」
「うん。ちゃんと前衛だった」
その言葉に、疲労の中でも少しだけ笑ってしまった。
巨兵の胸部が開き、中から拳大の光石が転がり出る。
英雄の剣へ嵌めるための核だ。
これで、アークの遺品は目を覚ます。




