第19話 銀翼の牙、崩れる
待っていたのはガルドだけじゃなかった。
第五横穴の出口付近には、銀翼の牙の連中に加え、ギルド倉番の男までいた。
「ご苦労だったな」
倉番は薄い笑みを浮かべる。
「それは本来、都市が管理すべき遺物だ」
「都市じゃないだろ」
俺は言った。
「お前たちが隠したいだけだ」
倉番の顔が冷える。
「無知な回収屋が」
「無知で結構だ。でも、トーマもフィオも、セリアも死んだことにした理由くらいは分かる」
俺はミーナに預けていた複写帳を放り投げた。
出口の先、すでに集まっていた監視員や待機冒険者たちの前に帳面が落ちる。
ミーナが手を回していたのだ。人目がある場所でしか、あいつらは動きにくい。
「死亡記録の改竄。未提出遺品の隠匿。英雄区画の私的占有」
俺が読み上げるたび、周囲がざわつく。
ガルドが舌打ちし、槍を構えた。
「黙れ!」
飛び込んでくる。
だが前とは違う。
索敵で軌道が見え、荷重歩法で一歩先へずれ、断空の構えが次の踏み込みを教えてくれる。
槍の懐に潜り込み、俺は短剣で柄を払った。
セリアの剣が正面から叩き込まれる。
ガルドの槍が弾け飛んだ。
「終わりよ」
セリアの刃先が喉元で止まる。
ガルドはなおも睨みつけてきたが、周囲の空気はもう変わっていた。
倉番が逃げようとしたところを、監視員に取り押さえられる。
ミーナが人垣を割って出てきた。
「上層保管庫の帳簿、全部押さえたわ」
どや顔だった。
よくやった。
銀翼の牙の面々は完全に孤立した。
冒険者たちが向ける視線は、もう嘲笑じゃない。
軽蔑だ。
「……たかが回収屋が」
ガルドが吐き捨てる。
俺は首を振った。
「回収屋だから拾えたんだよ。お前らが捨てたもの全部」




