第15話 ギルドが隠した死亡記録
地上へ戻った俺たちを待っていたのは、ミーナの青ざめた顔だった。
「やっと来た」
彼女は俺たちを見るなり、小部屋へ引き込んだ。
机の上には古い帳簿が何冊も広げられている。
「何があった」
「倉番の部屋に入れたの」
とんでもないことをさらっと言う。
「……どうやって」
「鍵は記録係の友達」
そんな友達はやめた方がいい。
だが成果は大きかった。
帳簿には三十年前の死亡記録が残っていた。ところが公開版と保管版で、記述が丸ごと違う。
公開版では、英雄アークの最終遠征は魔物の大暴走による全滅扱い。
保管版では、同行者の一部が帰還している。
しかも、その帰還者の家名に見覚えがあった。
「バレスタ」
セリアが険しい顔になる。
「今の迷宮都市ギルド長の家よ」
つまり、英雄の最終遠征には今の上層部の家が関わっていた。
「帰還者の証言欄が消されてる」
俺が指さすと、ミーナが頷く。
「削った跡がある。たぶんあとから」
さらに帳簿の末尾には、第三封鎖区画、第四封鎖区画、第五封鎖予備区画の三つが記されていた。
第五横穴の先にあるのは、たまたまじゃない。
英雄に関する記録も遺品も、層を分けて隠されている。
「全部回収するつもりなの?」
ミーナが俺を見る。
俺は少しだけ考えた。
最初は、トーマの手紙を届けただけだった。
でも今は違う。
拾った遺品が一本の線で繋がり、その先に英雄の死の真相がぶら下がっている。
「ああ」
俺は答える。
「俺は回収屋だ。捨てられたものを拾うのが仕事だ」
セリアが口元だけ笑った。
「じゃあ決まりね。今度は、英雄本人の未練を拾いに行く」




