8話 新部隊結成
立夏のランキングは50位を超えた。そのため教官である烈士は彼女を特務部隊へ推薦する。数日で認可され、すぐに他の隊員も編成された。
「部隊編成ですか? 私がそこに?」
「そうだ、昨日の防衛での功績を持ってあなたのランキングは50位内に入ったので特殊対策班に編入するの」
「学校は…」
「当面は免除だな。その分シンガリとしてしっかり働いてもらう」
そう烈士に言われ非常施設の3番会議室に案内された。
「オーYouが新しい部隊員デスネー」
「Salut! よろしくね~」
「…フン」
部隊の構成メンバー全員が集まっていた。正式に教導士官から編成が告げられる。
「前衛、冬木とアナスタシア。中衛、ジェニファ。後衛、リー。以上が今回の深淵突入部隊。コードネーム、”カラスの宿り木”だ」
立夏以外もオーダーメイドの武器を背負っている。まずは立夏と同じ立ち位置にいる前衛のアナスタシア。大きな盾に小銃がくっついているような構成で、盾は折りたたんで小銃のみで戦うこともできるようだ。次にジェニファ、重機関銃を背負っている。体格もさることながら、彼女の持つ武器もまた、強力な力を発揮しそうだ。最後にリー、弓矢。どうやらショートボウやアーチェリーの弓のように改造が施されているらしく、威力は貸与品のスナイパーライフルよりも強いらしい。
「私、冬木立夏と言います。教導士官からこの武器を受け継ぎました。よろしくお願いします」
拍手と共に温かく迎えられる。しかし、リーはそっぽを向いていた。
「あの、リーさん。質問していいですか?」
リーがじろりとこちらを見る。一瞬緊張したが、彼女はため息をつき、
「手短に」
あまりに流ちょうな日本語に驚きつつも、純粋な疑問をぶつける。
「その弓矢の威力が見たいです…」
「oh! 私も気になってたネ!」
「…的はその昔使われてた戦車、装甲は40ミリの傾斜装甲。あれの正面に打ち込む」
背中の矢筒から一本取り出し、弓を構える。息を整えて弓を弾き放った。矢は光り輝き、戦車を貫通した。接触した瞬間に轟音がし、砂埃が舞った。確認するまでもなく、戦車には大穴が開いていた。
「これが最大出力。雑魚にはもっと威力を絞る代わりに速度を上げる」
後衛にこれほど心強い人はいないだろう。
次に中衛のジェニファがバイポッドを立てて射撃を開始する。こちらの標的は乗用車だが、数発でエンジンを撃ち抜き燃料タンクも打ち抜き、瞬く間に爆発した。
「これが私の愛銃よ!」
「Hi! 私もミセマース!」
大きな駆動音で盾が展開される。靴の色は黄色から青へ変色する。
「教官、あの色は?」
「あぁ、この国では採用されていない重量級のシステムだな。あの色はトラックをも持ち上げることが出来る。彼女は盾を展開する時と、小銃で突撃する時で使い分けているんだ」
自動射撃ターゲットが発車する弾を盾で受けつつ応射する。ターゲットに命中する率は低いが、ばら撒きの牽制には丁度良さそうだ。次に盾を格納し小銃のみで突撃し、連射する。素早く左右に切り返しながら射撃を除け、超至近距離から小銃の弾を叩き込んだ。
最後にワダチ持ちの立夏の番になった。最初から靴の色はオレンジ、大体普通に走る自動車と同じくらいの速度でターゲットに向かう。今回のターゲットは、乱数回避ターゲット。激しく演習場内を逃げ回る。それに追従し、徐々に靴が赤くなり、速度が増してゆく。
「おい! 危険域!」
オーバーヒートした武装が火を上げる。実は多国籍部隊として編成されたこの部隊の装備は、実験装備でもあるのだ。いつもの感覚で使うと、太刀使いの場合は速度超過で火災になる。
「幸先が悪いデスネ」
「まぁまぁ実験装備ですし」
「…」
慌てる立夏に追いついたリーが消火器を吹きかけ、装備が非常停止する。
「リーさんありがとうございます」
「…次はない」
そういうと観覧席に戻っていった。装備の修理班が来てメンテナンスを行い、靴装備を取り換える。しばらくして、立夏は再び乱数回避ターゲットと対峙する。次は火災を起こさないように気を付け、回避を予測し先回りからの一刀両断で他の隊員から歓声が上がった。
登場人物紹介
:冬木 立夏:
アビスハンター1200期の成績最下位者。装備は故教導士官、佐野柳子の形見のワダチという日本刀である。しかし試験を受けてから今まで銃で戦ってきた。彼女にとって使い慣れるまでは確実につらい道のりになるだろう。
今回の選抜には自分自身驚いているし、力不足だと思っているが、編成されたからには友人の分をやってやると決意を固くしている。
:烈士 聖:
新任の教導士官。ランキング6位から繰り上がりで5位になり、士官になった。立夏たちを見送り次の受験生の試験を始める。立夏のランキングアップは彼女が聖を助けた功績と、次の深淵の破壊によって推薦された。ワダチを譲り、ランキングアップに推薦とかなり目をかけている。
:エレナ アナスタシア:
AABから派遣された部隊員。接近戦も牽制もお手の物。近接武器の補助なら彼女にお任せ。
:ジェニファ クリスチアーヌ:
中衛に位置する重機関銃持ち。フランス出身だが、母国では適性検査を通過できず、アメリカのAABに入って適性検査を受けた。重機関銃は彼女の体格でも立ち撃ちをすると、後ずさりしながら衝撃を受け流すことしかできない。
:リー シャオメイ:
中国の対深淵対策機構より派遣された。弓はアーチェリー用のようにいくつかの構造が重なっている。複雑に作られたそれは、速射、または力強い一撃を放ち、遠距離から敵を仕留める。
適応検査は天才肌であるという理由でスキップし、そのまま隊員となっている。経歴も詳しく明らかにされていない。




