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深淵狩りの花  作者: 三日月 帆立


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7話 異常事態

 ようやく14階にたどり着く二人……そこまでにこじ開けたシャッターの先は悲惨だった。

ここも同じなのか…

 14階へ上がるまでに、何回も別の階に入ろうと試みた。しかしすべてシャッターが閉まっており、こじ開けた階に生存者は存在せず、四足、または二足の異形が徘徊し、核の前には巣の様な物を生成していた。嫌な予感を感じつつも14階へ到着する。階段のシャッターは当然閉まっているが、向こう側から何か聞こえる。


「行くよ?」

「! 音が聞こえる…誰か生きてるかも!」

「行こう!」

 大槻がシャッターを切り刻み、フロアに足を踏み入れようとして目の前に異形の死骸があるのを目撃する。首が付いていたであろう部分からは血のように黒い液体が勢いよく吹き出ていた。


 試験会場にたどり着くまでに、複数の死傷者を見た。生き残った子達は口をそろえ、

「異形が警報もなく大量に乱入した」

 と、この施設で扱う異形のホログラムは本物を模して作られているものの、本物の()()を使っているわけではないので出現するとしたら深淵が開くしか可能性はない。



 試験会場には戦闘音が響く。巨大な二足異形と聖が戦闘をしている。

「くっ…短刀じゃ危険すぎる…」

 すんでのところで巨大な拳を回避した、がそれをブラフにもう一方の腕が向かってくる。

「しまっ…!」

 短刀が意とも容易くへし折れ、頬を掠め折れた刃が飛んでいく。殴られた聖は、ゴムまりのように撥ねて壁にぶつかる。幸いなことに、装備のおかげで重篤な事態にはならなかったが…装備を失った。


「武器が…ワダチがあれば…」

「教官!」

 装備あれど素手の教導士官のところに受験番号8番と12番が駆け付ける。

「立夏、教官連れて離れて!」

「真綾はどうするの!?」

「決まってるでしょ…殿よ。はやく!」


 怒号に押され、教官を連れて階段まで撤退する。そしてできる限り生存者を階段まで引きずって回収する。一息ついたところで教官に質問する。

「聖さん…今回の事は一体…」

「ワダチの継承を譲ったんだからそれくらいは察せないものか…いや、何でもない。突然試験会場にあのデカブツが現れ、生徒は逃がしたんだが…まさかこんなことになっているなんてな…」

「それって…」


「救護班です! 無事ですか!?」

 程なくして階段上から救護班と戦力上位のシンガリが到着し、聖の証言を基に試験会場へ急行した。

「私の友人が戦っているんです! 行かせてください!」

「だめ、私と下がりなさい。そのワダチが失われれば責任は誰がとるの?」

「……はい」


 シンガリ上位部隊が突入後、激しい戦闘が繰り広げられ、2時間の激闘を制した。しかし、その戦闘で一人の太刀使いの少女の死亡が確認された。



 立夏は授業中、外の青空を見ていた。隣の席には花瓶と、一輪の花が刺してあった。クラスの空気も、どこかどんよりと重たく、いつもは厳しい石塚先生も授業がやりづらそうだ。5限の終わりが近づく頃、けたたましい警報が鳴り響く。

『深淵出現地域です。直ちに避難してください』

 自動音声がスピーカーからリピートされる。立夏は非難を促す先生の声でようやく我に返る。


「先生、シンガリ行きます」

「おぉ! そうだったな! 頼む!」

 石塚先生もどんなに授業が上手くても、異形達には手も足も出ない。装備をつけながら階段を下りる。校庭に出るころには、全て装着し終わっていた。警報は繰り返し鳴っている…場所は学校から少し離れた市街地の一角に出現していた。


 深淵からは、異形が次々に出てくる。空を飛ぶ、初めて見られる異形もいた。そいつらは、黒い吐しゃ物をかけ、攻撃してくる。酸性なのか、盾持ちの子の盾が融解している様子が見えた。

 そして市街地の地上で戦闘しているのをそっちのけで住宅の扉を破壊し、子どもを攫い、核の中へ帰ってゆく。

「何してるんだこいつら……誘拐を阻止するぞ! 先に核を攻撃しよう!」


 統率を取っているシンガリが指示を飛ばす。応の声と共に、戦闘は激化してゆく。

「ワダチ持ち! あんた道を作るから核を!」

「は、はい!」

 立夏は他の隊員が異形の注意を引いている隙を突き、核へ突進した。靴は最速の深紅に染まり、速度は新幹線を超える勢いで核を真っ二つにした。明らかに動揺したそぶりを見せる異形達は、まとめてシンガリ隊員に処された。

登場人物紹介


冬木ふゆぎ 立夏りっか

アビスハンター1200期の成績最下位者。装備は故教導士官、佐野柳子の形見のワダチという日本刀である。しかし試験を受けてから今まで銃で戦ってきた。彼女にとって使い慣れるまでは確実につらい道のりになるだろう。ブザーが鳴らなかった時、真綾が刀に噛みつかれた時、それぞれ思考が停止してしまった。そのままではいつか仲間に迷惑をかけてしまうかもしれない。階段を上がりながらなんとかしなきゃと考えている。


烈士れつじ ひじり

 新任の教導士官。ランキング6位から繰り上がりで5位になり、士官になった。立夏たちを見送り次の受験生の試験を始める。ブザーは当然機能していないので、彼女と受験生の知らないところで、真綾達の戦闘は繰り広げられていた。

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