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深淵狩りの花  作者: 三日月 帆立


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5話 話定期訓練を幼馴染と共に

 ワダチを自分が柳子と同じくらい振れるようにと、訓練室で適合訓練を行う立夏。幼馴染の太刀使いも呼んで、本格的に訓練を始める。しかし彼女はその間学校に行っておらず、親にしか連絡をしていないし、親も、

「泊るって話は聞いたんですけどどこでかは…」

 新任の教導士官は、本部の仮眠室を探し、彼女の学生鞄を見つける。訓練室の貸し出しカードも置いてあったので、一声かけに向かった。

「そこまで!」

 振り返ると、新任の教導士官がいた。慌てて納刀し挨拶をする。

「教導士官 お疲れ様です!」

「聞いた通り訓練室にこもっているな? 学校はどうした」

「あ…で、でもこの刀が振れないと私は戦闘に…」

「立夏、あなたの言い分は正しい。が、学生シンガリの規則を覚えているか?」

「はい…第3条、学業は優先すべし。です」

「そうだ。あなたが学校に行かなければ、権利を剝奪せざる負えない。今日はまだ朝早いから私は見なかったことにする。仮眠室に行きなさい」

「申し訳ありません」

「柳子が前に言ってたぞ、あなたはきっと折れずに立ち上がる子だって。期待してる」


 教導士官は訓練室を後にする。時計は、4時半を少し回ったところだ。今から仮眠すれば8時には学校へ行けるだろう。欠伸をしながら仮眠室のある階層へエレベーターのボタンを押した。エレベーターを降りて、真正面にあるのがA番仮眠室。時計回りにBCと続きそれぞれ用途が違う。A番は、決まった時間までに体の疲労を回復させるカプセルベッドが並んでおり、外から見えないスモークガラスになっている。Bは、一般的なベッドのある仮眠室。Cは軽症者治療カプセルの仮眠室で、結晶のかすり傷などで出血した場合に、患部から結晶を取り除くことが出来る。


 目を閉じてしばらくすると、優しいアラームの音で目が覚める。先ほどまで訓練していた疲れは一切なく、カプセルを出て学校鞄を手に持つ。刀は背負ったままだ。そういえば、今日は定期試験のある日だ。試験はシンガリ訓練会場で行われ、シンガリ適合者は学校の所謂定期テストの免除代わりにこちらを受けなければならない。


 万が一ここで不可を出すと次の定期テストは免除されず、その次も不可を出すとライセンス剥奪となる。学校でいつものように授業を受け、ノートを取りながら今回の定期試験の内容を確認する。立夏は学校の小テストの成績はまずまずなため、定期テストが来ても恐らく平均点程度は取れるだろう。

…相変わらず大槻は窓際の暖かそうな場所で、寝息を立てているが。


 学校の放課後、本部の地下へ向かう。スマホをかざし、顔認証でゲートをくぐる。

「冬木立夏サン、オハヨウゴザイマス」

 自動で試験会場へのエレベーターが選択され、ドア前のランプが緑色に光る。



「それではこれより定期訓練を行う! ターゲットは四足異形4体、2足異形2体。ツーマンセルで参加してもらう!」

 立夏は当然大槻を誘い、太刀コンビが結成される。今までは定期訓練でスコアに大差をつけられたが、今日はそうはいかない。

「はじめ!」

 ホロダミーが展開され、まずは4体の異形が襲い掛かる。


「左任せるよー!」

 大槻は右の2体を処理しに行く立夏もスケートのように滑りながら距離を縮め、異形が飛びついてきた瞬間。スライディングのように下に潜り込み、胴体を薙ぎ払った。観覧席やライブ配信ではどよめき立っているが、立夏は戦闘に集中して気づいていない。最後1体は飛びついてきたところをサイドに切り返して頭を落とす。2体のホロダミーは撃破判定の赤色に変わり消滅した。


「立夏、大丈夫ー?」

 2体撃破した大槻が寄ってくる。

「うん、教えてくれた通りにできた」

「よっしゃナイス! …じゃあ後は」

 二人が前を見ると、2体の異形がこちらへ向かってきている。

「うちら。太刀の強みは、リーチと競り合いになった時に押し切れる劣勢からの巻き返し。忘れないでね!」

 立夏に説明していると2体のホロダミーが左右に分かれ側面から半包囲の構えを取る。

「…こんな陣形試験内容にあったっけ?」

 大槻は頭を搔くが、まぁいっかと楽観的だ。

「背中は任せても平気?」

「誰に言ってんのサ。まかしてちょ」


 彼女は立夏と互いに背を向けて太刀を構える。大槻が習ったのは”柳子1刀流”の流派で文字通り亡くなった柳子が後輩に教えていた戦闘スタイルである。大槻から習った立夏も当然その流派の構えを取る。異形と激しく刀をぶつけ、斬り伏せる。腕を片方斬り飛ばしても撃破判定にならず、継続的に片腕で攻撃してくる。

「っ!」


 顔を爪が掠めた。痛みは無いが、これが首元に来たらこちら被撃破判定になってしまう。次の一撃を刀でいなすと同時に、腕にそってワダチを滑らせる。肩に、そして首にと滑った刀は2足異形の頭を刎ねて撃破判定をもぎ取った。

登場人物紹介

冬木ふゆぎ 立夏りっか

アビスハンター1200期の成績最下位者。装備は故教導士官、佐野柳子の形見のワダチという日本刀である。しかし試験を受けてから今まで銃で戦ってきた。彼女にとって使い慣れるまでは確実につらい道のりになるだろう。定期訓練までに何とか刀で物を斬れるようにはなった。


大槻おおつき 真綾まあや

 立夏の親友にして太刀使い。親友の頑張る姿を見て応援と、負けないぞという対抗心を見せる。幼いころからドジっ子で、虐められやすい立夏を守るため、ここまで強くなろうと思えた。試験の通過順位は実技8位ペーパー56位

 …頭脳より割と力で解決するかもしれない。授業はたいてい寝ているがテストは平均点を取る彼女の言い訳は、

「いや教科書見ればとれるっしょ」

 それを聞いて学校の何人がうらやましいと思ったかは計り知れない。定期訓練もいつものように敵を斬るだけ、親を殺した生き物の形をした有機物を斬るだけ。ただそれだけだ。

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