4話 ワダチ適合訓練
戦死したシンガリから専用武器”ワダチ”を託された立夏。
葬式で陰口をたたかれるのも無理はない。なぜなら適合試験最下位だから。でもそんなの塗り替えてやる。私の大好きな教導士官を殺したあの異形を殺すまで、絶対に折れない、と決めた。
葬式が終わり、人々が散り散りに帰ってゆく中、立夏は最期の別れを告げに棺まで来た。耳をペタンと棺に当て、目を閉じる。
「柳子士官…貴方の仇は私が取って見せます」
そう言って棺にキスをする。葬式の会場を後に、適合試験の会場に向かった。
適合試験の会場にはランニングマシン、ダミー人形。実際に動くホログラムダミーなど、様々な試験用設備が整っている。立夏はワダチを抜刀し、ダミーを斬りつける…が、当然太刀筋がしっかりしていないため、剣が斬ったというより、刺さって途中で止まった感じになっている。やはり今のままではだめ…彼女は携帯を慣れた手つきで操作し、電話を掛けた。
「もしもし? 久しぶり。あのさ、まだ本部の近くにいるならなんだけど、適合検査訓練場に来てくれない?」
「おっけー。今行くわ」
数分後扉が開き、褐色高身長で、ミニスカ金髪の女子が現れる。彼女も刀を背負っており、立夏の同期である。また、彼女とは幼稚園からの付き合いで親友と胸を張って言える。故に呼び出された理由も聞くこともなく装備を付け始めた。
「で、刀の振り方はこう」
二人とも訓練場の模造刀で稽古を始める。最初こそ太刀筋がふらふらしていた立夏だが、30分もするうちにしっかりと真っすぐ振れるようになる。
「いいよ立夏。その調子、じゃあダミーに戻って」
ダミーを再び切る。今度は模造刀なので切り裂かれないが、赤い線が袈裟に一本付いた。
「うし、とりあえずは振れるようになったから、次はホロダミーを倒す訓練だけどメンゴ! 今日塾なの」
「あ、呼び出しちゃまずかった…?」
「ぜんぜん!いつでも呼んでいいけどたまたまだから!」
装備を解除しつつ訓練場を後にする親友を見送り、ホロダミーを起動する。まずは四足異形。真正面で構え、突進する。ダミー異形は再度ステップで躱し、そのまま立夏に嚙みついた。ブザーと赤いランプが光り、ホロダミーが消える。死亡判定を下された。
「もう一回…」
再び四足が出現する。さっきとは違っていきなり突進してきたが、冷静にそれを躱し、振り向きながら模造刀を振り下ろす。ホロダミーが断末魔とともに消え、緑のランプが点灯し、撃破判定を貰う。その後何度も模造刀で四足のあらゆるパターンデータを漁り、ホロダミーにして斬りまくった。気が付けば夜の0時を回っている。親に今日は止まると連絡し、AI受付担当に仮眠室の予約を取る。
「仮眠室ハ4階ノAデス」
電話を切りホロダミーを出す。最近で一番の脅威、あの巨大異形の3分の1スケールの物だ。
「…おっきい」
自分のと見比べて思わず口からこぼれる。周りを見渡すが、当然訓練室には立夏一人だ。恥ずかしさのあまり、勢いよくダミーを斬る。モーションが実装されていないので四足異形と同じ断末魔と緑色のランプが点滅する。
仮眠を取り、次の日はワダチを握ってダミーに斬りかかる。ワダチは軽量ながらもその強靭で粘り気のある金属と深淵から発生する結晶を使っているので人形は綺麗に二つに斬れている。次にホロダミーで、四足異形を出す。モーションをつけずにまずは切れ味を確かめる。模造刀と違い、ダミーの装甲を容易くに突き破った。
二足異形とのホロダミー戦闘に入る。こいつらもまずは突進して爪で攻撃をしてくる。対する立夏は爪をワダチで受け止め押し返し、一突きで頭を貫く。もう何度聞いたかもわからないファンファーレが響く。
「次…」
「そこまで!」
文字通り飛び上がり後ろを振り返る。そこには新任の教導士官がいた。
登場人物紹介
:冬木 立夏:
アビスハンター1200期の成績最下位者。装備は教導士官、佐野柳子の形見のワダチという日本刀である。しかし試験を受けてから今まで銃で戦ってきた。彼女にとって使い慣れるまでは確実につらい道のりになるだろう。
:大槻 真綾:
立夏の親友にして太刀使い。親友の頑張る姿を見て応援と、負けないぞという対抗心を見せる。幼いころからドジっ子で、虐められやすい立夏を守るため、ここまで強くなろうと思えた。試験の通過順位は実技8位ペーパー56位
…頭脳より割と力で解決するかもしれない。授業はたいてい寝ているがテストは平均点を取る彼女の言い訳は、
「いや教科書見ればとれるっしょ」
それを聞いて学校の何人がうらやましいと思ったかは計り知れない。




