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深淵狩りの花  作者: 三日月 帆立


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10/11

10話 深淵歩き

登場人物紹介


冬木ふゆぎ 立夏りっか

アビスハンター1200期の成績最下位者。装備は故教導士官、佐野柳子の形見のワダチという日本刀である。しかし試験を受けてから今まで銃で戦ってきた。彼女にとって使い慣れるまでは確実につらい道のりになるだろう。

現在本部では行方不明として全力の捜査が行われている。本人と言うよりはワダチを失うことが本部にとっては痛手なのだ。


烈士れつじ ひじり

 新任の教導士官。ランキング6位から繰り上がりで5位になり、士官になった。立夏たちを見送り次の受験生の試験を始める。立夏のランキングアップは彼女が聖を助けた功績と、次の深淵の破壊によって推薦された。ワダチを譲り、ランキングアップに推薦とかなり目をかけている。

 歩いて歩いて、時折いる4足歩行の異形から隠れつつ岩が乱立している地点へ向かった。そこは大きなクレーターになっており、半球状のそれから石柱がそびえたっていた。石柱は10メートルはあるクレーターから突き出してなお高く、全体で30メートルはあるだろう。


「…よし」

 石柱に近づき、アンカーを取り出す。標準装備で崖や高所からの落下対策で咄嗟に射出できるように小さな発射口が腰についている。カシャン!と射出音と共にアンカーが飛び出し、3メートルほど上部で固定される。ラぺリングの要領で壁を上ってゆき、アンカー付近に来たら、新しいアンカーを射出する。刺さったらまた登るを繰り返し、1時間で頂上に到達した。


「教官、聞こえますか?」

「こちら本部、烈士だ。立夏、今の状況を教えてくれ」

「大きなクレーターに着きました。今は石柱の頂上から通信しています」

 聖は安堵のため息をつく。


「とにかく無事でよかった。残念ながら深淵の情報は本部にも無くそこがどこか見当がつかないんだ。空はどうだ?」

「一面雲で覆われています。あ…」

 遠くで赤黒い雲が渦巻いている。稲妻が光り、如何にも何かありそうだ。

「教官、聞こえますか? 赤黒い空の下に何かあります。あそこに向かいます」

「……よし、わかった。何かあったらまた報告してくれ」

「はい!」


 通信が切断される。頂上にアンカーを強めに打ち込み、地面まで素早く降下する。地に足をつけるとポツポツと、雨が降り始めた。徐々に強くなっているのでこのままでは大雨になるだろう。

「どこかで雨宿りを…」

 動き出しの一歩目で気配を察知し、素早く横に避ける。先ほどまでいた地点の背後にあった石柱に弾痕が残る。


 遠くを見ると腕が真っすぐに伸び、まるでライフルのようになっている二足異形がいた。その両サイドには4足異形が1体ずついる。指示をするかのように反対の腕で二足が立夏を指さす。4足は雄たけびを上げながら一気に距離を詰めてくる。


 抜刀し立夏も正面から距離を詰める。時折弾丸が飛んできて回避を余儀なくされるため、タンカーだけではなく二足にも注意を向けなければならない。一切の気が抜けない戦闘、斬りかかろうとすると弾丸が飛んできて回避、タンカーの飛び掛かりタイミングでカウンターで斬るしかないのだが、刀を狙って飛び掛かってくる。


 口を正面から斬ろうとすると、タンカーの牙と硬度の関係で上手いこと振りぬくことができない。チカチカと遠くで閃光が光る。咄嗟に回避したが腕と頬を掠め少し出血する。発射音さえ聞こえない距離から回避方向を計算して撃ってきていることになるが、以前から元の世界に来ていた異形達はそんな高度な戦法は取らなかったはずだ。


「ジリ貧になる前に…!」

 靴が赤く光る。速度が上がり一瞬で立夏の姿が異形の目の前から消え、明らかな混乱が彼らから見て取れる。と、一閃。タンカーが胴体を真っ二つに切り裂かれる。残るのは赤い閃光、2足異形ですら立夏を捉えられない。人間のように焦る異形をまたしても切り捨て、2足異形に急接近する。


 金属音が鳴り響き、立夏のワダチと異形の腕が鍔迫り合いをする。ギリギリと気味の悪い金属音がし、お互いの体幹勝負と言ったところか。赤く光っていた靴は雨に打たれ、当たった水分の蒸発する音が聞こえる。一瞬力を抜いた立夏が半歩下がる。力いっぱい押していた異形は前のめりにバランスを崩した。


「今!」

 足払いで異形を地面に蹴り落とす。そして、顔面にワダチを突き立てた。断末魔と共に生命活動を停止する異形。深淵内では風化しないのか、死骸は残ったままだ。周りをよく観察すると、石柱のいくつかにはタンカーの巣の様な物が見える。


「ここは危ないよね…」

 クレーターを登るために靴は再び赤く染まる。北道と逆方向の坂を駆け上がった。雨は強く、気が付けばちょっと先が見えないレベル。授業で習ったスコールよりも強いだろうか。幸い装備は撥水加工なので濡れることはない。全身を包んでいるし、何より深淵で降る雨が安全なわけがない。早く雨宿りできるところが無いか探すために駆け出した。


「深淵に落とした奴はどうか」

 誰かが問う。

「こちらに来ている」

「では迎え撃つべきだろう…貴様の力を見せろ」

「わかりました。必ず奴の刀を折って見せます」

 何者かは静かに下がり闇に消えていく。玉座に座ったそいつは、不敵な笑みを浮かべていた。

登場人物紹介


冬木ふゆぎ 立夏りっか

アビスハンター1200期の成績最下位者。装備は故教導士官、佐野柳子の形見のワダチという日本刀である。しかし試験を受けてから今まで銃で戦ってきた。

現在本部では行方不明として全力の捜査が行われている。本人と言うよりはワダチを失うことが本部にとっては痛手なのだ。

深淵に落ちてからというもの、かなりの戦闘をこなしている。


烈士れつじ ひじり

 新任の教導士官。ランキング6位から繰り上がりで5位になり、士官になった。立夏たちを見送り次の受験生の試験を始める。立夏のランキングアップは彼女が聖を助けた功績と、次の深淵の破壊によって推薦された。ワダチを譲り、ランキングアップに推薦とかなり目をかけている。


:本部:

本部第襲撃から回復し、施設の復旧も進んでいる。2名のハンターが行方不明になっているため、総力を挙げて探している。

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