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整理


時間にしては、5分ほどの自分との葛藤だった。

僕は結果として、この場を逃げ出したいという気持ちを振り払い、過去の母さんへの粘っこい思いに整理をつけることができた。

いままでの僕なら、きっとあのまま逃げ出していただろう。

過去のまま生きる方が、その場しのぎとしては楽だからだ。

でも、その場をしのいだ後は、さらにやっかいなものだ。

僕は母さんとの思い出と好きと言う感情に19年間向き合わず、逃げ出していた。

その場しのぎに母さんを悪者にしていた。

僕は自分が母さんに行為を抱いていたことに気がつきたくなかった。

それは、年を重ねることにつれて、社会一般的にあまり良いとされないものであることを知っていったからだ。

周りの誰一人として僕の内側の件については知らなかったから、そうした数奇な目では見られなかった。

だが、自分の中の世界では母さんへの行為は揺るがない事実で書き換えのない愛だった。

そうして僕は母さんへの好意から目を背けてきた。

そうするうちに溜まりに溜まった負のキャッシュが爆発して、ついに母さんの幻影を見て、苦しんだ。

けれども、もう大丈夫。

僕はちゃんと自分の気持ちに向き合うことができた。

それはやっぱり、いま僕のそばにいる大切なひとを守りたいという強い思いを知ったからである。

ささやかな僕の幸せ。

大切なひとの、大切な幸せを守りたい。

そう気づかせてくれた人々の顔が浮かぶ。

父さん、母さん、可南子。

僕を本当の家族のように育ててくれた。

変わらない愛情を注いでくれた。

タケシもなんだかんだ、僕のことを気にかけて、いざというときは助けてくれた。

荒木さん。

第一印象は最悪だったけど、いまではとても便りになる存在。

兄がいるなら、荒木さんのような人だと楽しいだろうなとも思う。

そして、有美ちゃん。

一目惚れをした。

文字通り、その強い瞳に夢中になった。

遠くから幸せを願えればそれだけで良かった。

でもいまではこんなに近くにいる。

そして彼女の幸せを取り戻すため、協力をさせてくれている。

僕の凍っていた気持ち、止まっていた時間を動かしてくれた恩人でもある。

かなわぬ妄想でも、ひとときの幸せを感じさせてくれた彼女。

僕は、改めて自分自身に誓った。

可南子と、有美ちゃんのお姉さんを取り戻す。

そして大切なひとびとの幸せを元通りにする。

もう逃げない。

僕は進む。

足はゆっくりと前に進んでいた。

軋む床板をしっかりと踏んで、僕は二人を探しに向かった。

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