奇跡の連鎖
ごはんを食べているときは、想像通りに特に盛り上がるわけではなく、淡々と3人とも食事を続けていた。
母さんはまだ本調子ではなく、空元気の具現化のように、僕らのためにそのチャームポイントの笑顔を振り撒いてくれていた。
父さんは捜査が進んでいるとはいえ、まだ可南子に確実に辿り着く証拠がない中で、他に打つ手だてはないかとぐるぐると頭を回転させているようだった。
僕はというと、父さんと同じように、アイリに調査してもらう情報を必死にかき集めていた。
可南子が行きそうなところ、この町で誘拐できそうな場所、匿いやすいところ、どこだ、どこだ?
アイリ曰く、可南子たちが映像として写っていたのは、駅前の通りの監視カメラのみ。
駅構内のカメラには写っていない、つまりは町の外には出ていない。
車での移動も考えられる。
この町から隣町では、車でも最低一時間半はかかる。
さらに、車でも検問所が山にはあるから、必ずそこを通らなければならい。
もし犯人が盗賊とか怪盗でないのであれば、地下道を掘って隣町に行ったり、飛行機やヘリコプターで空からこの町の脱走を企てているのであれば、もう僕レベルでは全く歯が立たない。
もしかしたら、さっき僕らが行った駅前には、まだ犯人がいて、可南子もそばにいたのかもしれない。
キョロキョロする僕を見て、ほくそ笑んでいたのかもしれない。
もしかしたら、駅前には可南子に繋がる大きなヒントが落ちていたのかもしれない。
ただ、いまの僕にはそれを見つけることができなかった。
時間は限られている。
いまのこ瞬間にも、可南子が危険な目に遭っていることもある。
僕がこの目の前のローストビーフを食べ終える頃、もしかすると…
そう思い立つと居ても立ってもいられなくなる。
でも、どうする?なにができる?
どこにいけばいい?何をすればいい?
噛み欠けのローストビーフを一気に飲み込んだ。
「…ごちそうさま」
まだ咀嚼しきれていない肉の塊が僕の喉を広げ上げ、胃に落ちていく。
喉に痛みがじんわりと残る。
「あら、ヨージ、もういいの?」
「またお腹が空いたら、食べるといい。冷蔵庫に入れておいてあげるよ」
母さんはきょとんとしていたが、父さんは僕の気持ちを悟ってくれたらしく、そっとリビングルームから見送ってくれた。
まだだ。
まだ僕にできることはある。
だって、今日は有美ちゃんに、奇跡的に会えた日だから。
きっとまだできることは、奇跡はまだ起きるはすだ。
僕はスマートフォンを右手で握りしめ、二階に向かった。




